文部科学省初等中等教育局長 特別支援教育の推進について (通知) 2007/04/012007-04-01

http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm

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特別支援教育の推進について(通知)

                             平成19年4月1日

各都道府県教育委員会教育長 殿
各指定都市教育委員会教育長 殿
各都道府県知事 殿
附属学校を置く各国立大学法人学長 殿

                 文部科学省初等中等教育局長 銭谷 眞美

 文部科学省では、障害のある全ての幼児児童生徒の教育の一層の充実を図るた
め、学校における特別支援教育を推進しています。
 本通知は、本日付けをもって、特別支援教育が法的に位置付けられた改正学校
教育法が施行されるに当たり、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学
校及び特別支援学校(以下「各学校」という。)において行う特別支援教育につ
いて、下記により基本的な考え方、留意事項等をまとめて示すものです。
 都道府県・指定都市教育委員会にあっては、所管の学校及び域内の市区町村教
育委員会に対して、都道府県知事にあっては、所轄の学校及び学校法人に対して、
国立大学法人にあっては、附属学校に対して、この通知の内容について周知を図
るとともに、各学校において特別支援教育の一層の推進がなされるようご指導願
います。
 なお、本通知については、連携先の諸部局・機関への周知にもご配慮願います。

                記

1. 特別支援教育の理念

 特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な
取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握
し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な
指導及び必要な支援を行うものである。
 また、特別支援教育は、これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく、知的な
遅れのない発達障害も含めて、特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する
全ての学校において実施されるものである。
 さらに、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障
害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる
共生社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって
重要な意味を持っている。

2. 校長の責務

 校長(園長を含む。以下同じ。)は、特別支援教育実施の責任者として、自ら
が特別支援教育や障害に関する認識を深めるとともに、リーダーシップを発揮し
つつ、次に述べる体制の整備等を行い、組織として十分に機能するよう教職員を
指導することが重要である。
 また、校長は、特別支援教育に関する学校経営が特別な支援を必要とする幼児
児童生徒の将来に大きな影響を及ぼすことを深く自覚し、常に認識を新たにして
取り組んでいくことが重要である。

3. 特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組

 特別支援教育を実施するため、各学校において次の体制の整備及び取組を行う
必要がある。

(1) 特別支援教育に関する校内委員会の設置
 各学校においては、校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立し、
発達障害を含む障害のある幼児児童生徒の実態把握や支援方策の検討等を行うた
め、校内に特別支援教育に関する委員会を設置すること。
 委員会は、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、教務主任、生徒指導
主事、通級指導教室担当教員、特別支援学級教員、養護教諭、対象の幼児児童生
徒の学級担任、学年主任、その他必要と思われる者などで構成すること。
 なお、特別支援学校においては、他の学校の支援も含めた組織的な対応が可能
な体制づくりを進めること。

(2) 実態把握
 各学校においては、在籍する幼児児童生徒の実態の把握に努め、特別な支援を
必要とする幼児児童生徒の存在や状態を確かめること。
 さらに、特別な支援が必要と考えられる幼児児童生徒については、特別支援教
育コーディネーター等と検討を行った上で、保護者の理解を得ることができるよ
う慎重に説明を行い、学校や家庭で必要な支援や配慮について、保護者と連携し
て検討を進めること。その際、実態によっては、医療的な対応が有効な場合もあ
るので、保護者と十分に話し合うこと。
 特に幼稚園、小学校においては、発達障害等の障害は早期発見・早期支援が重
要であることに留意し、実態把握や必要な支援を着実に行うこと。

(3) 特別支援教育コーディネーターの指名
 各学校の校長は、特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う教員を「特
別支援教育コーディネーター」に指名し、校務分掌に明確に位置付けること。
 特別支援教育コーディネーターは、各学校における特別支援教育の推進のため、
主に、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、
保護者からの相談窓口などの役割を担うこと。
 また、校長は、特別支援教育コーディネーターが、学校において組織的に機能
するよう努めること。

(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用
 特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで
一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を
含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。
 また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策
定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。

(5) 「個別の指導計画」の作成
 特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対
応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実
を進めること。
 また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成す
るなど、一人一人に応じた教育を進めること。

(6) 教員の専門性の向上
 特別支援教育の推進のためには、教員の特別支援教育に関する専門性の向上が
不可欠である。したがって、各学校は、校内での研修を実施したり、教員を校外
での研修に参加させたりすることにより専門性の向上に努めること。
 また、教員は、一定の研修を修了した後でも、より専門性の高い研修を受講し
たり、自ら最新の情報を収集したりするなどして、継続的に専門性の向上に努め
ること。
 さらに、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が実施する各種指導者養成
研修についても、活用されたいこと。
 なお、教育委員会等が主催する研修等の実施に当たっては、国・私立学校関係
者や保育所関係者も受講できるようにすることが望ましいこと。

4. 特別支援学校における取組

(1) 特別支援教育のさらなる推進
 特別支援学校制度は、障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じ
た教育を実施するためのものであり、その趣旨からも、特別支援学校は、これま
での盲学校・聾学校・養護学校における特別支援教育の取組をさらに推進しつつ、
様々な障害種に対応することができる体制づくりや、学校間の連携などを一層進
めていくことが重要であること。

(2) 地域における特別支援教育のセンター的機能
 特別支援学校においては、これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を生かし、
地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ること。
 特に、幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校の要請に応じて、
発達障害を含む障害のある幼児児童生徒のための個別の指導計画の作成や個別の
教育支援計画の策定などへの援助を含め、その支援に努めること。
 また、これらの機関のみならず、保育所をはじめとする保育施設などの他の機
関等に対しても、同様に助言又は援助に努めることとされたいこと。
 特別支援学校において指名された特別支援教育コーディネーターは、関係機関
や保護者、地域の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び他の特
別支援学校並びに保育所等との連絡調整を行うこと。

(3) 特別支援学校教員の専門性の向上
 上記のように、特別支援学校は、在籍している幼児児童生徒のみならず、小・
中学校等の通常学級に在籍している発達障害を含む障害のある児童生徒等の相談
などを受ける可能性も広がると考えられるため、地域における特別支援教育の中
核として、様々な障害種についてのより専門的な助言などが期待されていること
に留意し、特別支援学校教員の専門性のさらなる向上を図ること。
 そのためにも、特別支援学校は、特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状
保有状況の改善、研修の充実に努めること。
 さらに、特別支援学校教員は、幼児児童生徒の障害の重複化等に鑑み、複数の
特別支援教育領域にわたって免許状を取得することが望ましいこと。

5. 教育委員会等における支援

 各学校の設置者である教育委員会、国立大学法人及び学校法人等においては、
障害のある幼児児童生徒の状況や学校の実態等を踏まえ、特別支援教育を推進す
るための基本的な計画を定めるなどして、各学校における支援体制や学校施設設
備の整備充実等に努めること。
 また、学校関係者、保護者、市民等に対し、特別支援教育に関する正しい理解
が広まるよう努めること。
 特に、教育委員会においては、各学校の支援体制の整備を促進するため、指導
主事等の専門性の向上に努めるとともに、教育、医療、保健、福祉、労働等の関
係部局、大学、保護者、NPO等の関係者からなる連携協議会を設置するなど、地
域の協力体制の構築を推進すること。
 また、教育委員会においては、障害の有無の判断や望ましい教育的対応につい
て専門的な意見等を各学校に提示する、教育委員会の職員、教員、心理学の専門
家、医師等から構成される「専門家チーム」の設置や、各学校を巡回して教員等
に指導内容や方法に関する指導や助言を行う巡回相談の実施(障害のある幼児児
童生徒について個別の指導計画及び個別の教育支援計画に関する助言を含む。)
についても、可能な限り行うこと。なお、このことについては、保育所や国・私
立幼稚園の求めに応じてこれらが利用できるよう配慮すること。
 さらに、特別支援学校の設置者においては、特別支援学校教員の特別支援学校
教諭免許状保有状況の改善に努めること。

6. 保護者からの相談への対応や早期からの連携

 各学校及び全ての教員は、保護者からの障害に関する相談などに真摯に対応し、
その意見や事情を十分に聴いた上で、当該幼児児童生徒への対応を行うこと。
 その際、プライバシーに配慮しつつ、必要に応じて校長や特別支援教育コーデ
ィネーター等と連携し、組織的な対応を行うこと。
 また、本日施行される「学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
政令の整備等に関する政令(平成19年政令第55号)」において、障害のある児童
の就学先の決定に際して保護者の意見聴取を義務付けたこと(学校教育法施行令
第18条の2)に鑑み、小学校及び特別支援学校において障害のある児童が入学す
る際には、早期に保護者と連携し、日常生活の状況や留意事項等を聴取し、当該
児童の教育的ニーズの把握に努め、適切に対応すること。

7. 教育活動等を行う際の留意事項等

(1) 障害種別と指導上の留意事項
 障害のある幼児児童生徒への支援に当たっては、障害種別の判断も重要である
が、当該幼児児童生徒が示す困難に、より重点を置いた対応を心がけること。
 また、医師等による障害の診断がなされている場合でも、教師はその障害の特
徴や対応を固定的にとらえることのないよう注意するとともに、その幼児児童生
徒のニーズに合わせた指導や支援を検討すること。

(2) 学習上・生活上の配慮及び試験などの評価上の配慮
 各学校は、障害のある幼児児童生徒が、円滑に学習や学校生活を行うことがで
きるよう、必要な配慮を行うこと。
 また、入学試験やその他試験などの評価を実施する際にも、別室実施、出題方
法の工夫、時間の延長、人的な補助など可能な限り配慮を行うこと。

(3) 生徒指導上の留意事項
 障害のある幼児児童生徒は、その障害の特性による学習上・生活上の困難を有
しているため、周囲の理解と支援が重要であり、生徒指導上も十分な配慮が必要
であること。
 特に、いじめや不登校などの生徒指導上の諸問題に対しては、表面に現れた現
象のみにとらわれず、その背景に障害が関係している可能性があるか否かなど、
幼児児童生徒をめぐる状況に十分留意しつつ慎重に対応する必要があること。
 そのため、生徒指導担当にあっては、障害についての知識を深めるとともに、
特別支援教育コーディネーターをはじめ、養護教諭、スクールカウンセラー等と
連携し、当該幼児児童生徒への支援に係る適切な判断や必要な支援を行うことが
できる体制を平素整えておくことが重要であること。

(4) 交流及び共同学習、障害者理解等
 障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒との交流及び共同学習は、
障害のある幼児児童生徒の社会性や豊かな人間性を育む上で重要な役割を担って
おり、また、障害のない幼児児童生徒が、障害のある幼児児童生徒とその教育に
対する正しい理解と認識を深めるための機会である。
 このため、各学校においては、双方の幼児児童生徒の教育的ニーズに対応した
内容・方法を十分検討し、早期から組織的、計画的、継続的に実施することなど、
一層の効果的な実施に向けた取組を推進されたいこと。
 なお、障害のある同級生などの理解についての指導を行う際は、幼児児童生徒
の発達段階や、障害のある幼児児童生徒のプライバシー等に十分配慮する必要が
あること。

(5) 進路指導の充実と就労の支援
 障害のある生徒が、将来の進路を主体的に選択することができるよう、生徒の
実態や進路希望等を的確に把握し、早い段階からの進路指導の充実を図ること。
 また、企業等への就職は、職業的な自立を図る上で有効であることから、労働
関係機関等との連携を密にした就労支援を進められたいこと。

(6) 支援員等の活用
 障害のある幼児児童生徒の学習上・生活上の支援を行うため、教育委員会の事
業等により特別支援教育に関する支援員等の活用が広がっている。
 この支援員等の活用に当たっては、校内における活用の方針について十分検討
し共通理解のもとに進めるとともに、支援員等が必要な知識なしに幼児児童生徒
の支援に当たることのないよう、事前の研修等に配慮すること。

(7) 学校間の連絡
 障害のある幼児児童生徒の入学時や卒業時に学校間で連絡会を持つなどして、
継続的な支援が実施できるようにすることが望ましいこと。

8. 厚生労働省関係機関等との連携

 各学校及び各教育委員会等は、必要に応じ、発達障害者支援センター、児童相
談所、保健センター、ハローワーク等、福祉、医療、保健、労働関係機関との連
携を図ること。

(お問い合わせ先)文部科学省初等中等教育局
   特別支援教育課(古川、富田、吉原)電話:03-5253-4111(代表)
   (内線3192)03-6734-3192(直通)

(初等中等教育局特別支援教育課)

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