文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)議事録からの抜粋 2007/08/222007-08-22

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/housei_gijiroku_07.pdf

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日 時 平成19年8月22日(水) 10:00 ~ 11:40

(4) 知覚障害者、発達障害者等関係の権利制限について
【黒沼著作権調査官】 それでは、資料4になりますけれども、こちらは知的障
害者、発達障害者等関係の権利制限の要望でございます。1、2と2つございます
けれども、大体同じような文脈で出されている要望だと理解をしておりまして、
知的障害者、発達障害者、それから学習障害者のために、それぞれが理解しやす
い形で翻案しての複製をできるようにするという御要望だと思っております。
検討の背景の部分は今までの整理でございますので、2ページ目から御説明させ
て頂きますが、基本的な考え方といたしましては、今までと同じでございまして、
一般に流通している著作物の理解が困難な方に対しての情報格差の解消という観
点からは、対応の必要性は基本的に高いものだということで考えております。
現行規定でどこまで対応できるのかということでございますけれども、前回のヒ
アリングの中で御発表があった事例では、学校教育に関係した事例が多くあった
わけでございまして、そういった観点で申し上げますと、第35条1項で、現在、
学校その他の教育機関において教育を担任する者が、授業の過程で使用するため
に複製することはできることになっておりますが、その際には翻案して利用する
こともできるという規定になっております。こちらの「教育を担任する者」につ
きましては、私的複製の場合と同じように、その支配下において補助的な立場に
ある人が代わって複製することも許されるということでございまして、必ずしも
教員本人でなくても認められる場合があり得るということでございますので、そ
ういった制作の態様によっては、現行法においても許諾を得ずに複製できる場合
があるのではないかと思われます。
一方で、ヒアリングの中では、現段階で具体的なものがあるわけではないのかな
という印象は受けましたけれども、将来像としては共通のセンターのようなもの
がデイジー図書なりの作成を行う、もしくは蓄積をしておいて、それを提供する
というような構想が提示されていたかと思います。そのように、個別の要望に応
じて手足として動くような形態でなければ、第35条1項の範囲内とは捉えにく
いのかとは思われます。
以下は、そういった現状を踏まえまして、権利制限による対応を行う場合の議論
のポイントとしてどういうものがあるのかということでございます。
まず、1点目として、アの今後の製作・流通形態がどうなるのかという点を挙げ
させて頂きました。これは、先ほどのような一定の形態であれば現行法でも可能
でございますし、一方で何らかのセンター的なものを作るのであれば難しいとい
うことではございましたが、まだ現状そういうものが整備されているようにも思
われなかったので、そういったものをどう考えていくのかというのが1点あろう
かと思います。
2点目でございますが、これは議論のための議論になるのかもしれませんけれど
も、権利者に与える不利益というのはどの程度あるのかということでございます。
基本的には、デイジー図書というものであれば独自の再生機器が必要ですとか、
おそらく流出可能性はないと思われるのですけれども、そのままデジタルテキス
トデータをCD-ROMに録音したような場合ですとか、そういったものの可能
性があるのであれば、それはまた議論が変わってくるのかもしれませんし、その
実態に応じていろいろあり得るのかなということで、議論のポイントとしては掲
げさせて頂きました。
それから、ウは、権利制限規定を仮に作る場合の作り方ですけれども、発達障害
者、学習障害者というものに着目して独自の規定をつくった場合には、それが権
利制限規定の範囲内なのかどうか確認する手段が果たしてあるのかどうか、その
実効性の担保という点でどうなるのかというのが1つ議論になるかと思います。
それに応じまして、複製主体の議論もまた、あわせて出てこようかと思っており
ます。
それから、下のほうにいきまして、エですけれども、仮に独自の規定がうまく作
りにくいのであれば、ほかの規定、第33条の2で拡大教科書の規定ですとか、
第35条の教育関係の権利制限規定、こういったものの拡大によって対応する可
能性はあるのか、ないのか。それぞれの規定によって、蓄積が可能であったりな
かったり、いろいろな条件の違いはあろうかと思いますけれども、そういった可
能性は議論の余地があるのかと思っております。また、ここには書いてございま
せんけれども、視覚障害者、聴覚障害者、先ほどどこまで範囲を広げるのかとい
う議論がございましたけれども、それの対応によってはこちらの要望も拾えてく
る部分があるのかと思います。
諸外国の例としましては、イギリス、ドイツは先ほどと同じものでございますけ
れども、カナダにおいては、すみません、これは視覚、聴覚のところにも本来載
せておくべき規定だったのかもしれませんけれども、知覚に障害がある方、そう
いった方からの求めに応じていろいろな複製ないし録音、手話、翻訳、改作、複
製することなどができるという規定があるということでございます。知覚障害者
につきましては、視覚、聴覚なども含めた広いものになっている規定でございま
す。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
【中山主査】 それでは、ただいまの説明を踏まえまして、御意見を頂戴したい
と思います。
何か御意見ございましたら、お願いいたします。どうぞ、苗村委員。
【苗村委員】 先ほどから御説明のあった権利制限3つあわせてなのですが、基
本的にこの3つは最初の薬事関係の話とは違って、日本固有の事情はないのだろ
うと思います。
それで、著作権法の権利制限を考えるにしても、いろいろと御紹介いただいてい
る欧米の例などを参考にして、基本的にはそれと同じレベルの権利制限を認める
のがよいのではないかと思います。実際にそれを条文としてどうするかについて
は、今、具体的な意見はありませんが、できれば、そういう趣旨で具体的な案を
お示し頂くほうが良いのではないかと思います。
それから、全く別の視点なのですが、ここでは視覚、聴覚あるいは知的、発達障
害などを対象にしていますが、これとは別に、実際にマーケットニーズがあるか
もしれないのは、むしろ外国人、日本に滞在していて日本語が十分使えない人た
ちは、こういったことに関してもかなりのニーズもあると思うので、むしろマー
ケットとしてはこういう分野がいろいろと進展していいのではないかと思うので、
何らかの意味で将来、例えば、3つともそうなのですが、こういったことに関し
て、より多くのユーザーが使えるような技術、サービスが進展していくようなこ
とを一応予想しておいたほうがいいのではないかという気がします。ただ、現時
点でそれが分からないから権利制限を認めないというのは必ずしも良いことでは
ないので、総論としては認めていいのではないかと思います。
【中山主査】 他にございましたらどうぞ。
知的障害、発達障害につきましては、視聴覚障害と比べると認定は難しいかもし
れませんけれども、難しいからといって放置していいということにはならないと
思いますので、何らかの措置は講じたほうがいいと思いますけれども、いろいろ
問題もあるかと思いますので、御意見を頂戴できればと思います。
よろしいでしょうか。いろいろお伺いしておりますと、基本的にはやはり障害者
が健常者になるべく近い形で文化を享受できるようにという方向では一致してい
ると思いますので、また事務局のほうで案をまとめて頂ければと思います。

文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会(第7回) 2007/08/222007-08-22

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/07082903.htm
http://shibuya.cool.ne.jp/ldnews/20070822.pdf

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文化審議会著作権分科会 法制問題小委員会(第7回)議事録・配付資料

日 時 平成19年8月22日(水曜日)10時~11時40分

配付資料(※現在掲載準備中です。)
資料1 薬事行政関係の権利制限についての論点
資料2 視覚障害者関係の権利制限についての論点
資料3 聴覚障害者関係の権利制限についての論点
資料4 知的障害者、発達障害者等関係の権利制限についての論点
資料5 ネットオークション関係の権利制限についての論点

---以下にペーパー資料からスキャンしたものを掲載する。
   http://shibuya.cool.ne.jp/ldnews/20070822.pdf

知的障害者、発達障害者等関係の権利制限についての論点

1聴覚障害者向けの字幕に関する翻案権の制限について、知的障害者や発達障害
 者等にもわかるように、翻案(要約等)をすること

2学習障害者のための図書のデイジー化について

ア 検討の背景と現状について

聴覚障害者向けに字幕により自動公衆送信する場合には、ルビを振ったり、わか
りやすい表現に要約するといった翻案が可能(第43条第3号)であるが、文字情
報を的確に読むことが困難な知的障害者や学習障害者についても、同様の要請が
ある。特に、教育・就労の場面や緊急災害情報等といった場面での情報提供に配
慮する必要性が高いため、知的障害者や発達障害者等にもわかるように翻案(要
約等)することを認めてもらいたいとの要望がある。
また、現在、学習障害者や、上肢障害、高齢、発達障害等により文章を読むこと
に困難を有する者の読書支援を目的として、図書をデイジー化し、提供する活動
が行われている。このような活動についても、権利制限の対象とすべきとの要望
がある。

【参考】デイジー(DAISY)について

デイジー(DAISY)は、Digital Accessible Information SYstem の略語であり、
デイジーコンソーシアムにより開発されているデジタル録音図書に関する国際規
格である。現在、日本のほか、スウェーデン、英国、アメリカなどの国々で利用
されている。
デイジーコンソーシアムは、アナログからデジタル録音図書に世界的に移行する
ことを目的として、1996年に録音図書館が中心となり設立された組織。

平成18 年1月の著作権分科会報告書は、1について、「権利制限の範囲の限定、
その必要性の明確化(契約による権利処理の限界)、障害者にとっての当該利用
の意義など提案者による趣旨の明確化を待って、聴力障害者情報文化センターと
関係放送局、映画会社、権利者団体との間の契約システムの現状を踏まえた上で、
改めて検討することが適当」としている。

また、2については、自民党・特別支援教育小委員会において、以下の通り提言
されている。

【参考】「美しい日本における特別支援教育」
    (平成19年5月11日、自民党・特別支援教育小委員会)

  著作物のデイジー化は、学習障害のある者にとって大いに有用なツールであ
  るとの指摘等も踏まえ、著作権法上の制約について、改正も視野に入れた検
  討を行う。

イ 検討の方向性について

i )基本的な考え方

知的障害者、発達障害者等にとって、著作物を享受するためには、一般に流通し
ている著作物の形態では困難な場合も多く、デイジー図書が有効である旨が述べ
られており、著作物の利用可能性の格差の解消の観点からは、視覚障害者や聴覚
障害者の場合と同様に、対応の必要性が高いと考えられる。--略