第23回文化審議会著作権分科会 議事録抜粋 2007/10/122007-10-12

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/bunkakai_23.pdf

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    第23回文化審議会著作権分科会
日 時 平成19年10月12日(金)13時00分 ~ 15時10分
場 所 フロラシオン青山 2階 「芙蓉」

○黒沼著作権調査官  その次のページでございます。障害者福祉関係では非常
に多数の要望が寄せられておりますが、代表的なものを御紹介いたしますと、視
覚障害者関係では、録音図書の作成について、現在、貸し出し目的で点字図書館
等の一定の施設だけで限定的に行われておりますけれども、それを公共図書館で
も実施できるようにしたいという点や、聴覚障害者関係では映像や放送などに字
幕や手話をつけて複製をするという点、それから知的障害者・発達障害者関係で
も、それぞれに適した形でデジタル録音図書の作成などができるようにと、そう
いった御要望が代表的なものとしてございました。
これにつきましては、障害者の情報アクセスを保障するという観点から、できる
限り障害者が著作物を利用できるような方向で検討すべきだということで、御結
論をいただいております。ただし、その際の留意事項としましては、健常者への
流出防止策など、権利者への不利益が生じないように考慮すべきという点が付せ
られております。--略--

○三田委員  障害者福祉関係の権利制限の見直しについて、著作者の立場から
すれば、権利制限の拡大については慎重に議論していただきたいというのが前提
ですが、障害者の中には緊急性の高い人たちがおります。そういう人たちの要望
に対して慎重に議論をしている間に、その障害者の方が致命的な損失をこうむる
ということもありますので、できれば障害者の立場に立って、なるべく早く結論
を出すべきであろうと思います。
例えば一例を挙げますと、学習障害児童という方がいらっしゃいます。この方た
ちは知能が劣るわけではなく、識字障害という本を読んでも理解できないという
方々であります。そういう方々でも録音図書を聞いていただくとちゃんと理解で
きます。ですから、教科書やあるいは学習参考書、それから優れた児童文学のよ
うなものを録音図書で聞きますと、すっきりと頭に入って知能がさらに発達する
ということです。逆に適正な年齢のときに適正なそういう情報が入りませんと、
知能そのものが遅れてしまうおそれがあるのです。ですから、学習障害児童に対
しては緊急性があると御理解いただきたいと思います。
それから、ここには公共図書館での録音図書についてしか言及されていないんで
すが、例えば点字図書館等が録音図書を作っております。これは郵便によって全
国に配布されますし、今はインターネットでも権利制限で利用できるようになっ
ております。ただし、これは視覚障害者の方に限られているわけです。点字図書
館には膨大なコンテンツがありますので、こういうものを学習障害児童にも利用
できるようなシステムの変更ができないだろうかと、そういうことも併せて検討
していただければと思います。以上です。--略--

○常世田委員  図書館関係でございますが、先ほど事務局の方から継続的なも
のがほかにもあるということで、これからも御検討いただくということではあり
ますけれども、特に平成15年のこの分科会報告で法制化が適当ということで方針
が出されております、再生手段の入手困難なコンテンツについての図書館での複
製という件でございます。これは例えばベータとか、あるいはコンピューターの
OSでもうなくなってしまっているものとか、そういう状況が次々に出てきてお
ります。特にここに来て中古の電気製品の流通についての法律等ができてくると、
ますます再生そのものが困難になるコンテンツが増えてくるということがありま
す。
図書館というのは、文化的なものを次代に伝えていくという非常に重要な機能を
持っているものでありますので、再生可能な媒体に変換された新しい商品として
販売されるものについては、当然、購入をして利用者に提供するということにな
るわけですが、再生する機械そのものが供給されなくなってしまって、媒体その
ものが再生できないということについては、再生可能な媒体に複製をするという
ことを図書館で行うことが適当であるという結論が既に出ているわけであります
が、これが法制局等で棚上げになってしまっていると聞いております。
このことについては18年の分科会での報告書においても、適当だという御意見を
いただいておりますので、こういうことについては具体的に何が問題になってい
るのか、どこをどのようにすれば法制化が進むのかというようなことも、事務局
も含めてぜひ御検討いただきたいと思っております。
また、図書館においてインターネットの内容をプリントアウトするということを、
一々許諾を得ることがそもそも不可能なものがありますので、これを可能にする
権利制限とそれから官公庁で刊行されているものついての全部分の複写というこ
と、これを要望として出しておりまして、これも18年の分科会報告の中では妥当
であるという御意見をほぼいただいております。
このことにつきましては、諸外国の例を見ても図書館からの情報提供によって社
会を活性化していく、国を強くしていく、経済的な発展、活性化をそれで図る、
あるいは医療情報や法律情報を提供するというような国レベルでの情報政策の中
に、図書館の情報機関としての役割というものを位置づけている国が大変多くな
っております。これは欧米だけではなくてアジアでもそういう傾向が出てきてい
るわけでありまして、日本でも文部科学省からの大臣告示でありますとか、政策
をあらわすための各種の報告書の中で、はっきりこれが明示されております。こ
ういう点から、この要望については今回も要望事項として出させていただいてお
りますので、これは政策的な面からの御検討もぜひお願いしたいと思っておりま
す。
それから、先ほど三田委員の方からもお話がありました障害者に対する情報提供
の権利制限でありますけれども、一般的に健常者へ障害者用のコンテンツが流れ
るのではないかということを権利者の方は御心配になるのでありますけれども、
図書館界としては公共図書館がそれを管理することによって、おおむね公務員が
法律に基づいて公的な行政事業として行うことによって、そのようなことを防ぐ
ことができるのではないかと御提案を申し上げているところでありますので、こ
の辺も含めて御検討いただければと思っております。以上でございます。

公開セミナー「発達障害のある青年の就労支援-大学における支援に期待したいこと」/慶應義塾大学日吉キャンパス第4校舎 2007/10/122007-10-12

主催者からのご案内です。

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公開セミナー「発達障害の世界を知る
        -思春期・青年期の生きにくさへの理解と援助に向けて-」

第6回「発達障害のある青年の就労支援-大学における支援に期待したいこと」

講 師:向後礼子先生 
(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター研究員)

日 時:2007年10月12日(金) 17時30分から19時

場 所:慶應義塾大学 日吉キャンパス 第4校舎 B棟 J19番教室

※前回まで使用していた会場から変更になっておりますのでご注意ください。

レポートが書けない、卒論に手が付けられない、仲間とうまくコミュニケーショ
ンがとれない-多くの学生がもっている悩み。でも、それは“発達障害”からき
ているかもしれません。
今、発達障害の症状と向き合いながら、大学に通っている多くの学生がいます。
しかし、その症状は十分に理解されず、大学での適切な支援もなく、彼・彼女た
ちは“生きにくさ”に苦しんでいます。

第6回目は、発達障害を抱えた方たちの就労支援に取り組む実践家であり、研究
者でもある向後礼子氏を講師にお迎えし、「発達障害のある青年の就労支援-大
学における支援に期待したいこと-」と題し、発達障害のある青年の職業選択や
就労場面において直面する問題や、その支援体制について講演していただきます。

入場は無料です。大学生のみなさん、大学に携わる教員・職員の皆様、学生相談
室のお仕事に関わる皆様、多数のご来場をお待ちしております。

<講師のプロフィール>
向後礼子先生 
早稲田大学大学院文学研究科(心理学)博士後期課程単位取得退学。
 1993年から独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター
において、知的障害、1995年から学習障害等の発達障害者を対象として、学校か
ら就労への移行支援、就労継続支援などについての研究に携わる。最近では、高
等学校在学中の生徒を対象とした職業評価とその後の進路選択との関連について
検討している。
2002年~2005年は、職業能力開発総合大学校福祉工学科講師。
精神保健福祉士・臨床発達心理士・学校心理士。

<講演内容>
 青年期における重要な発達課題の1つに職業選択があります。よりよい職業選
択のためには、障害の有無に関わらず自分の特性や能力について知り、自らの興
味や関心を明確にするなどの「自己理解」を深めることが求められます。これに
加えて、発達障害がある青年の場合は、自らの障害特性との関連の中で、周囲に
求める支援の具体的な内容と範囲についても知らなくてはなりません。
 また、就労とその継続のために必要なスキルは、大学生活の中で必要なスキル
でもあるため、大学での生活支援は、就労時に必要な支援と結びついていること
が期待されます。今回は、就労や職場適応について、大学卒業までに検討される
べき本人の問題と支援体制の問題を取り上げ、それぞれについて問題提起をして
いきたいと思います。

主催: 平成17年度文部科学省学術フロンティア推進事業「超表象デジタル研究」
   バリアフリーキャンパス構築プロジェクト
   慶應義塾大学教養研究センター特定研究
共催: 学生総合センター学生相談室

お問い合わせ: 慶應義塾大学 日吉心理学研究室
 〒223-8521 横浜市港北区日吉4-1-1
 tel 045-566-1366 fax 045-566-1374
 email : txmidori@hc.cc.keio.ac.jp(担当:高山緑)

僕の今まで、そしてこれから-発達障害からみえる世界-/三原市市民福祉会館 2007/10/122007-10-12

主催者からのご案内です。

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幼少の頃発達障害の診断を受けた、丘侑祐氏にお越しいただき、その療育に関わ
って来られた土田先生とお話していただきます。

僕の今まで、そしてこれから 発達障害からみえる世界

講 師 土田玲子氏 & 丘 侑祐氏

日 時 2007年10月12日(金) 18:00受付開始
    18:30 開会・講演 20:10 質疑応答 20:30 閉会

会 場 三原市市民福祉会館  5階 大会議室
    広島県三原市城町一丁目18番1号(駐車場はございません)

参加費 一般 1000円、正会員 無料、利用・賛助会員 300円

主 催 NPO法人ナチュラルビレッジ
    (〒723-0015 広島県三原市円一町4-2-14 TEL0848-64-7803)

後 援 三原市・三原市教育委員会

侑祐君との付き合いは、私のセラピスト人生の中でもかなり長く、インパクトと
課題の多いものの1つです。私が初めて彼に出会ったのは、彼が小学2年生の時
です。訪ねた学校では所属する教室には全く寄り付かず、1時間目は隣の教室で
体育に参加、2時間目は5年生の理科の実験に参加、休み時間は校舎の屋根の上
に登り、下を通る子供をめがけて瓦を投げるなど、かなり「自由な」学校生活を
送っていました。彼はちょっとしたことでもすぐに腹をたて、人の好き嫌いが激
しい子でした。大学の個別指導の場であるプレールームからはだしのまま飛び出
して、同僚が300メートルほど先の別の建物まで追いかけたこともありました。
私も彼と格闘(1回きりですが)したことがあります。

お母様のお話では、7ヶ月で這い這いをしだすと、乳母車の中にじっとしている
ことができず、手袋と長ズボンを履かせ、外を這い這いで移動させたり、幼稚園
では同級生をひっかいたり、噛み付いたりと乱暴なため、他の子どもの母親達か
ら「乱暴だから近よるな」と言われるなど、かなりユニークな子育てを体験され
たようです。4年生の時から「僕が何もしていないのに皆が悪いというので」学
校に行かなくなり、不登校の子供を支える教育機関を卒業しました。

このような彼の人生を鼎談を通して振り返り、彼のこれからの生き方を共に考え
てみたいと思います。 (土田玲子)

土田 玲子氏 福島出身 作業療法士 現在県立広島大学 教授
       NPO法人なごみの杜理事長 日本感覚統合学会 会長

丘 侑 祐氏 長崎出身 22歳 現在NPOなごみの杜研修生
       趣味:読書、コンピューターゲーム、ピアノ演奏

講演名・開催日時・参加代表者の氏名、住所、連絡先電話番号・所属・参加者全
員の氏名を明記してファックス 0848-76-1150
又はメールn-v@agate.plala.or.jp にてお申し込み下さい。

著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ意見募集の実施 2007/10/152007-10-12

http://www.mext.go.jp/b_menu/public/main_b13.htm
http://www.bunka.go.jp/oshirase_koubo_saiyou/2007/chosaku_iken_boshu.html
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000283&OBJCD=100185&GROUP=

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発達障害・学習障害等に対する著作権法上の配慮が必要であるとのまとめがされ
ています。著作権法改正につながるようパブリックコメントお願いします。
詳しくは下記。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000283&OBJCD=100185&GROUP=

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文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会中間まとめ」

31ページ

2 障害者福祉関係
(1) 問題の所在
--略--
○3 知的障害者、発達障害者等関係
 ア 聴覚障害者向けの字幕に関する翻案権の制限について、知的障害者や発達
障害者等にもわかるように、翻案(要約等)をすること
 イ 学習障害者のための図書のデイジー化(注27)について

 聴覚障害者向けに字幕により自動公衆送信する場合には、ルビを振ったり、わ
かりやすい表現に要約するといった翻案が可能(第43条第3号)であるが、文字
情報を的確に読むことが困難な知的障害者や学習障害者についても、同様の要請
がある。特に、教育・就労の場面や緊急災害情報等といった場面での情報提供に
配慮する必要性が高いため、知的障害者や発達障害者等にもわかるように翻案
(要約等)することを認めてもらいたいとの要望がある。

 また、現在、学習障害者や、上肢障害、高齢、発達障害等により文章を読むこ
とに困難を有する者の読書支援を目的として、図書をデイジー化し、提供する活
動が行われている。このような活動についても、権利制限の対象とすべきとの要
望がある。

(注27)デイジー(DAISY)は、Digital Accessible Information System の略語
であり、デイジーコンソーシアムにより開発されているデジタル録音図書に関す
る国際規格である。現在、日本のほか、スウェーデン、英国、米国などの国々で
利用されている。
 デイジーコンソーシアムは、アナログからデジタル録音図書に世界的に移行す
ることを目的として、1996年に録音図書館が中心となり設立された組織。
(出典:Daisy Consortium HP)〔注27終わり〕

33ページ

 さらに、イについては、自民党・特別支援教育小委員会において、以下のとお
り提言されている。

●「美しい日本における特別支援教育」(平成19年5月11日、自民党・特別支援
教育小委員会)
○8 著作物のデイジー化は、学習障害のある者にとって大いに有用なツールで
   あるとの指摘等も踏まえ、著作権法上の制約について、改正も視野に入れ
   た検討を行う。

  【参考:諸外国における立法例】(注28)
○ドイツ
 第45条a(1) 知覚障害により作品の理解ができない、またはかなり困難であ
る人々のために、またそうした者への作品の普及目的の場合に限り、利益を目
的としない作品の複製は認められる。

○イギリス
 第31条のA(1) 視覚障害者が、文学的作品、演劇作品、音楽作品、芸術作品
の全部又は一部の合法的な複製物を所有しており、障害ゆえにその複製物への
アクセスが不可能である場合、当該障害者の私的利用のためにアクセス可能な
形の複製物を作成することは、著作権侵害には当たらない。
 (5) この条の規定に基づき、ある者が視覚障害者の代わりにアクセス可能な
形の複製物を作成してその料金を得る場合は、その金額は複製の作成及び提供
においてかかったコストを上回ってはならない。

 第31条のB(1) 認可を受けた機関が、商業用に作られた文学作品、演劇作品、
音楽作品、芸術作品の全部又は一部の合法的な複製物を所有している場合、障
害ゆえにその複製物へのアクセスが不可能な視覚障害者の私的利用のためにア
クセス可能な形の複製物を作成及び提供することは、著作権侵害にはあたらな
い。
  ※ 認可を受けた機関:教育機関および非営利団体(第31条のB(12))

 第74条(1) 指定団体は、聾者若しくは難聴者又はその他身体障害者若しくは
精神障害者である人々に、字幕入りの複製物その他それらの人々の特別の必要
のために修正されている複製物を提供することを目的として、テレビジョン放
送若しくは有線番組又はそれらに挿入されている著作物のいずれの著作権をも
侵害することなく、テレビジョン放送又は有線番組の複製物を作成し、及び複
製物を公衆に配布することができる。

(注28) 三井情報開発株式会社 総合研究所『知的財産立国に向けた著作権制度
の改善に関する調査研究-情報通信技術の進展に対応した海外の著作権制度に
ついて-』(平成18年3月)より〔注28終わり〕

34ページ〔3行は前のイギリスの内容〕

○アメリカ
 第121条 第106条及び第710条の規定にかかわらず、許諾を得た団体が既発行
の非演劇的言語著作物のコピーまたはレコードを複製しまたは頒布することは、
視覚障害者その他の障害者が使用するためのみに特殊な形式においてかかるコ
ピーまたはレコードを複製しまたは頒布する場合には、著作権の侵害とならな
い。

○カナダ
 第32条(1) 知覚障害者の求めに応じて以下のことをする場合、または非営利
  団体がその目的のために以下のことをする場合には、著作権侵害にはなら
  ない。
 (a) 文学作品、音楽作品、芸術作品、演劇作品を、特に知覚障害者のための
  形態において複製ないし録音すること(映画著作物を除く)
 (b) 文学作品、演劇作品を、特に知覚障害者のための形態において手話に翻
  訳、改作、複製すること(映画著作物を除く)
 (c) 文学作品、演劇作品を手話(ライブあるいは特に知覚障害者のための形
  態)で実演すること
 ※ 第2条「“知覚障害”とは、文学作品、音楽作品、演劇作品、芸術作品を
  元の形のまま読んだり聞いたりすることが不可能、あるいは困難な状態を
  指し、以下のような状態を含む。
 (a) 視覚・聴覚における重度あるいは全体的な障害、または、焦点・視点の
  移動ができない状態
 (b) 本を手に持ち扱うことができない状態
 (c) 理解力に関わる障害のある状態」

○スウェーデン
 第17条 録音以外の方法により、だれもが、障害者が作品を楽しむために必要
な形態において、出版されている文学作品、音楽作品、視覚的芸術作品の複製
を作成することが可能である。その複製物を障害者に配布することができる。
また、政府が特定の場合において認可した図書館や組織は、以下のことが可能
である。
 1.最初の段落で言及した複製物を、作品を楽しむために複製を必要として
  いる障害者に伝達すること。
 3.聴覚障害者が作品を楽しめるように、作品をラジオ、テレビ放送、映画
  で送信すること、およびその複製物を聴覚障害者に配布、伝達すること

41ページ3行目から

 4 知的障害者、発達障害者等関係についての対応方策
 a 現行規定での対応可能性
 ヒアリングの中では、学校教育に関係した事例が多く見られたが(注37)、著作
権法第35条第1項では、学校その他の教育機関において、教育を担任する者及び
授業を受ける者が、授業の過程において使用する場合には、公表された著作物を
複製することができ、また翻案して利用することもできる(第43条第1号)とさ
れている。
 この「教育を担任する者」については、その支配下において補助的な立場にあ
る者が代わって複製することも許されると考えられており(注38)、学校教育、社
会教育、職業訓練等の教育機関での活用であれば、デイジー図書の製作の態様に
よっては、現行法においても許諾を得ずに複製できる場合があると考えられる。
ただし、複製の分量や態様、その後の保存等の面においては、必要と認められる
限度に限られる。
 一方、ヒアリングの中では、これらの取組の中核的な施設のようなものがデイ
ジー図書の蓄積や提供を行う構想等も提示されているが(注39)、そのような形態
であれば、第35条第1項の範囲の複製とは考えにくい。

 b 対応方策について
 知的障害者、発達障害者等にとって、著作物を享受するためには、一般に流通
している著作物の形態では困難な場合も多く、デイジー図書が有効である旨が主
張されており、著作物の利用可能性の格差の解消の観点から、視覚障害者や聴覚
障害者の場合と同様に、本課題についても、何らかの対応を行う必要性は高いと
考えられる。
 このような観点から、2視覚障害者関係、3聴覚障害者関係の権利制限の対象
者の拡大を検討していく中で、権利制限規定の範囲の明確性を確保する必要性は
あるものの、可能な限り、障害等により著作物の利用が困難な者についてもこの
対象に含めていくよう努めることが適切である。その際、複製の方法については、
録音等の形式に限定せず、それぞれの障害に対応した複製の方法が可能となるよ
う配慮されることが望ましいと考えられる。

(注37)前出・第6回法制問題小委員会(平成19年7月19日)資料4-2〔注37終
わり〕
(注38)「教育を担任する者といいましても、第30条の私的使用の場合と同様に、
実際にはその部下職員である事務員とか児童・生徒を手足として使ってコピーを
とることは、複製の法律的主体が教員自身である限り許されます」(加戸守行著
『著作権法逐条講義(五訂新版)』((社)著作権情報センター、平成18年3月)
〔注38終わり〕
(注39)前出・第6回法制問題小委員会・資料4-2。ただし、現状において、特
にそのような施設が整っているとの実態は特段示されなかった。 〔注39終わり〕