著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ意見募集の実施 2007/10/152007-10-12

http://www.mext.go.jp/b_menu/public/main_b13.htm
http://www.bunka.go.jp/oshirase_koubo_saiyou/2007/chosaku_iken_boshu.html
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000283&OBJCD=100185&GROUP=

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発達障害・学習障害等に対する著作権法上の配慮が必要であるとのまとめがされ
ています。著作権法改正につながるようパブリックコメントお願いします。
詳しくは下記。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000283&OBJCD=100185&GROUP=

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文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会中間まとめ」

31ページ

2 障害者福祉関係
(1) 問題の所在
--略--
○3 知的障害者、発達障害者等関係
 ア 聴覚障害者向けの字幕に関する翻案権の制限について、知的障害者や発達
障害者等にもわかるように、翻案(要約等)をすること
 イ 学習障害者のための図書のデイジー化(注27)について

 聴覚障害者向けに字幕により自動公衆送信する場合には、ルビを振ったり、わ
かりやすい表現に要約するといった翻案が可能(第43条第3号)であるが、文字
情報を的確に読むことが困難な知的障害者や学習障害者についても、同様の要請
がある。特に、教育・就労の場面や緊急災害情報等といった場面での情報提供に
配慮する必要性が高いため、知的障害者や発達障害者等にもわかるように翻案
(要約等)することを認めてもらいたいとの要望がある。

 また、現在、学習障害者や、上肢障害、高齢、発達障害等により文章を読むこ
とに困難を有する者の読書支援を目的として、図書をデイジー化し、提供する活
動が行われている。このような活動についても、権利制限の対象とすべきとの要
望がある。

(注27)デイジー(DAISY)は、Digital Accessible Information System の略語
であり、デイジーコンソーシアムにより開発されているデジタル録音図書に関す
る国際規格である。現在、日本のほか、スウェーデン、英国、米国などの国々で
利用されている。
 デイジーコンソーシアムは、アナログからデジタル録音図書に世界的に移行す
ることを目的として、1996年に録音図書館が中心となり設立された組織。
(出典:Daisy Consortium HP)〔注27終わり〕

33ページ

 さらに、イについては、自民党・特別支援教育小委員会において、以下のとお
り提言されている。

●「美しい日本における特別支援教育」(平成19年5月11日、自民党・特別支援
教育小委員会)
○8 著作物のデイジー化は、学習障害のある者にとって大いに有用なツールで
   あるとの指摘等も踏まえ、著作権法上の制約について、改正も視野に入れ
   た検討を行う。

  【参考:諸外国における立法例】(注28)
○ドイツ
 第45条a(1) 知覚障害により作品の理解ができない、またはかなり困難であ
る人々のために、またそうした者への作品の普及目的の場合に限り、利益を目
的としない作品の複製は認められる。

○イギリス
 第31条のA(1) 視覚障害者が、文学的作品、演劇作品、音楽作品、芸術作品
の全部又は一部の合法的な複製物を所有しており、障害ゆえにその複製物への
アクセスが不可能である場合、当該障害者の私的利用のためにアクセス可能な
形の複製物を作成することは、著作権侵害には当たらない。
 (5) この条の規定に基づき、ある者が視覚障害者の代わりにアクセス可能な
形の複製物を作成してその料金を得る場合は、その金額は複製の作成及び提供
においてかかったコストを上回ってはならない。

 第31条のB(1) 認可を受けた機関が、商業用に作られた文学作品、演劇作品、
音楽作品、芸術作品の全部又は一部の合法的な複製物を所有している場合、障
害ゆえにその複製物へのアクセスが不可能な視覚障害者の私的利用のためにア
クセス可能な形の複製物を作成及び提供することは、著作権侵害にはあたらな
い。
  ※ 認可を受けた機関:教育機関および非営利団体(第31条のB(12))

 第74条(1) 指定団体は、聾者若しくは難聴者又はその他身体障害者若しくは
精神障害者である人々に、字幕入りの複製物その他それらの人々の特別の必要
のために修正されている複製物を提供することを目的として、テレビジョン放
送若しくは有線番組又はそれらに挿入されている著作物のいずれの著作権をも
侵害することなく、テレビジョン放送又は有線番組の複製物を作成し、及び複
製物を公衆に配布することができる。

(注28) 三井情報開発株式会社 総合研究所『知的財産立国に向けた著作権制度
の改善に関する調査研究-情報通信技術の進展に対応した海外の著作権制度に
ついて-』(平成18年3月)より〔注28終わり〕

34ページ〔3行は前のイギリスの内容〕

○アメリカ
 第121条 第106条及び第710条の規定にかかわらず、許諾を得た団体が既発行
の非演劇的言語著作物のコピーまたはレコードを複製しまたは頒布することは、
視覚障害者その他の障害者が使用するためのみに特殊な形式においてかかるコ
ピーまたはレコードを複製しまたは頒布する場合には、著作権の侵害とならな
い。

○カナダ
 第32条(1) 知覚障害者の求めに応じて以下のことをする場合、または非営利
  団体がその目的のために以下のことをする場合には、著作権侵害にはなら
  ない。
 (a) 文学作品、音楽作品、芸術作品、演劇作品を、特に知覚障害者のための
  形態において複製ないし録音すること(映画著作物を除く)
 (b) 文学作品、演劇作品を、特に知覚障害者のための形態において手話に翻
  訳、改作、複製すること(映画著作物を除く)
 (c) 文学作品、演劇作品を手話(ライブあるいは特に知覚障害者のための形
  態)で実演すること
 ※ 第2条「“知覚障害”とは、文学作品、音楽作品、演劇作品、芸術作品を
  元の形のまま読んだり聞いたりすることが不可能、あるいは困難な状態を
  指し、以下のような状態を含む。
 (a) 視覚・聴覚における重度あるいは全体的な障害、または、焦点・視点の
  移動ができない状態
 (b) 本を手に持ち扱うことができない状態
 (c) 理解力に関わる障害のある状態」

○スウェーデン
 第17条 録音以外の方法により、だれもが、障害者が作品を楽しむために必要
な形態において、出版されている文学作品、音楽作品、視覚的芸術作品の複製
を作成することが可能である。その複製物を障害者に配布することができる。
また、政府が特定の場合において認可した図書館や組織は、以下のことが可能
である。
 1.最初の段落で言及した複製物を、作品を楽しむために複製を必要として
  いる障害者に伝達すること。
 3.聴覚障害者が作品を楽しめるように、作品をラジオ、テレビ放送、映画
  で送信すること、およびその複製物を聴覚障害者に配布、伝達すること

41ページ3行目から

 4 知的障害者、発達障害者等関係についての対応方策
 a 現行規定での対応可能性
 ヒアリングの中では、学校教育に関係した事例が多く見られたが(注37)、著作
権法第35条第1項では、学校その他の教育機関において、教育を担任する者及び
授業を受ける者が、授業の過程において使用する場合には、公表された著作物を
複製することができ、また翻案して利用することもできる(第43条第1号)とさ
れている。
 この「教育を担任する者」については、その支配下において補助的な立場にあ
る者が代わって複製することも許されると考えられており(注38)、学校教育、社
会教育、職業訓練等の教育機関での活用であれば、デイジー図書の製作の態様に
よっては、現行法においても許諾を得ずに複製できる場合があると考えられる。
ただし、複製の分量や態様、その後の保存等の面においては、必要と認められる
限度に限られる。
 一方、ヒアリングの中では、これらの取組の中核的な施設のようなものがデイ
ジー図書の蓄積や提供を行う構想等も提示されているが(注39)、そのような形態
であれば、第35条第1項の範囲の複製とは考えにくい。

 b 対応方策について
 知的障害者、発達障害者等にとって、著作物を享受するためには、一般に流通
している著作物の形態では困難な場合も多く、デイジー図書が有効である旨が主
張されており、著作物の利用可能性の格差の解消の観点から、視覚障害者や聴覚
障害者の場合と同様に、本課題についても、何らかの対応を行う必要性は高いと
考えられる。
 このような観点から、2視覚障害者関係、3聴覚障害者関係の権利制限の対象
者の拡大を検討していく中で、権利制限規定の範囲の明確性を確保する必要性は
あるものの、可能な限り、障害等により著作物の利用が困難な者についてもこの
対象に含めていくよう努めることが適切である。その際、複製の方法については、
録音等の形式に限定せず、それぞれの障害に対応した複製の方法が可能となるよ
う配慮されることが望ましいと考えられる。

(注37)前出・第6回法制問題小委員会(平成19年7月19日)資料4-2〔注37終
わり〕
(注38)「教育を担任する者といいましても、第30条の私的使用の場合と同様に、
実際にはその部下職員である事務員とか児童・生徒を手足として使ってコピーを
とることは、複製の法律的主体が教員自身である限り許されます」(加戸守行著
『著作権法逐条講義(五訂新版)』((社)著作権情報センター、平成18年3月)
〔注38終わり〕
(注39)前出・第6回法制問題小委員会・資料4-2。ただし、現状において、特
にそのような施設が整っているとの実態は特段示されなかった。 〔注39終わり〕

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