障害のある子どものための地域における相談支援体制整備ガイドライン/文部科学省 厚生労働省2008-08-14

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/021.htm

----------------

障害のある子どものための地域における相談支援体制整備ガイドライン(試案)
                              平成20年3月
                         文部科学省 厚生労働省

 目次
はじめに
第1章 ガイドライン策定の趣旨
 1.ガイドライン策定の背景
 2.ガイドラインの役割
第2章 相談・支援のための体制づくり
 1.関係部局・機関・関係者のネットワークの構築
 2.相談・支援のための全体計画(マスタープラン)の策定
第3章 地域における一貫した相談・支援のための連携方策
 1.「相談支援チーム」の設置
 2.関係機関の連携による相談・支援の実施
 3.「相談・支援手帳(ファイル)」の作成
 4.専門家の巡回による教職員への指導・助言や保護者からの相談の実施
 5.関係機関の合同による研修会の開催
 6.関係機関の連携による支援のための計画(「個別の支援計画」)の策定
 7.相談・支援に関する情報の提供
 8.個人情報の取扱い
<参考資料>
 1.障害の発見にかかわる主な制度
  (1)乳幼児健康診査
    ア 1歳6か月児健康診査
    イ 3歳児健康診査
  (2)就学時の健康診断
 2.障害の発見や相談・支援にかかわる主な機関とその役割
   ○1市町村保健センター
   ○2保健所
   ○3福祉事務所
   ○4児童相談所
   ○5児童福祉施設
   ○6発達障害者支援センター
   ○7特別支援学校(盲学校、聾学校、養護学校)
   ○8特別支援教育センター
   ○9公共職業安定所(ハローワーク)
   ○10地域障害者職業センター
  3.障害種ごとにみた主な障害の発見や相談
   ○1視覚障害
   ○2聴覚障害
   ○3知的障害
   ○4肢体不自由
   ○5病弱・身体虚弱
   ○6言語障害
   ○7情緒障害(自閉症を除く)
   ○8発達障害(LD、ADHD、自閉症等)
   ○9重複障害
  4.「障害者基本計画」及び「重点施策実施5か年計画」
  5.「障害のある子どものための教育相談体系化推進事業」
  6.「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」(平成13年1月)
    (抜粋)
  7.「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」
    (平成17年12月)(抜粋)
  8.学校教育法等の一部を改正する法律(平成18年法律第80号)の概要
    (※国会提出法律へリンク)
  9.学校教育法【特別支援教育関係主要部分抜粋】
  10.学校教育法施行規則の一部を改正する省令について(概要)
    (※中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会
    特別支援教育専門部会(第3回)議事録・配付資料へリンク)
  11.特別支援教育の対象の概念図
  12.「特別支援教育体制推進事業」の概要
  13.発達障害者支援法
  14.発達障害者支援法施行令、発達障害者支援法施行規則
    (※厚生労働省ホームページへリンク)
  15.発達障害のある児童生徒等への支援について(通知)
    (※告示・通達等へリンク)
  16.特別支援教育の推進について(通知)
    (※告示・通達等へリンク)
  17.小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、
    高機能自閉症等の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライ
    ン(試案)の概要について
  18.障害者自立支援法における相談支援体制
   ○相談支援事業の見直し
   ○地域における相談支援体制について(市町村が相談支援事業者に委託し
    て行う場合)
   ○市町村相談支援機能強化事業及び都道府県相談支援体制整備事業
 編集協力者一覧
(初等中等教育局特別支援教育課)

障害者職業総合セ 就職困難な若年者の就業支援の課題に関する研究/障害者職業総合センター2008-08-14

http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/shiryou/shiryou39.html

----------------

資料シリーズNO.39 就職困難な若年者の就業支援の課題に関する研究

執筆担当:(執筆順)
小泉 哲雄 障害者職業総合センター 統括研究員 序、おわりに
小杉 礼子 労働政策研究・研修機構 統括研究員 第1章
津富  宏 静岡県立大学国際関係学部 准教授
特定非営利活動法人青少年就労支援ネットワーク静岡理事長 第2章
東條 吉邦 茨城大学教育学部 教授 第3章

概要

 「発達障害のある若者の職業ガイダンス研究会」を設置し、「就職困難な若年
者の就業支援の課題」に関する議論を行った結果を取りまとめたもの。ここでは、
まず、現代の若者が置かれている職業環境について、雇用施策にアクセスしがた
い層との関連で検討した。そのうえで、無業状態にある若者を支援する機関の現
状を踏まえ、支援の在り方と課題を検討し、発達障害のある当事者の支援ニーズ
と就労準備の課題について検討を加えた。以上を踏まえ、障害者対策と若年対策
の連携の必要性や在り方等につき、提言を行った。

報告書をダウンロード

表紙、目次、序、第1章(PDF 864KB)
   http://www.nivr.jeed.or.jp/download/shiryou/shiryou39_01.pdf
   第2章(PDF 987KB)
   http://www.nivr.jeed.or.jp/download/shiryou/shiryou39_02.pdf
   第3章(PDF 1,140KB)
   http://www.nivr.jeed.or.jp/download/shiryou/shiryou39_03.pdf
   おわりに(PDF 715KB)
   http://www.nivr.jeed.or.jp/download/shiryou/shiryou39_04.pdf

教科書のバリアフリー化に向けて一歩前進/障害者放送協議会 2008/082008-08-14

教科書のバリアフリー化に向けて一歩前進
障害者放送協議会著作権委員会委員長 井上芳郎

1. はじめに

 通常国会の会期末が迫る2008年6月10日、「障害のある児童及び生徒のための
教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」という長い名称の法案が、衆議
院本会議において全会一致で可決成立した。そして遅くとも2008年9月中旬まで
には施行され、2009年度採用となる教科書から適用されることとなった。なお
「教科用特定図書」とはこの法律で新たに定義された用語で、従来の「拡大教科
書」と「点字教科書」とを指している。
 この法律は、主に弱視児童生徒の教育や支援に携わる関係者からの長年にわた
る働きかけにより実現したもので、これまで不十分であった拡大教科書の供給体
制整備を、国の責務として明確化させ、また拡大教科書の製作を促進させる目的
から、ボランティア団体等へ原稿用デジタルデータを提供するよう教科書出版社
に対し義務づけることとした。
 さらに、発達障害等の理由で通常の教科書での学習が困難な児童生徒にも拡大
教科書等の活用ができるよう、調査研究を推進するものとした。関連して著作権
法第33条の2の一部が改正され、はじめて著作権法において「発達障害」等に対
する配慮が明記された。
 それでは、この法律の成立までの経緯、期待される効果、そして将来に残され
た課題などについて、以下にまとめてみることとする。

2.拡大教科書の現状

 小・中学校の通常学級に在籍する弱視児童生徒に対して、国による拡大教科書
の無償供与がはじめられたのは、義務教育であるにもかかわらず、ようやく2004
年度になってからであった。
 しかし実際には教科書出版社から発行される拡大教科書は少なく、その多くが
ボランティア団体の努力により製作されている。しかし製作には多大な時間と労
力とを要するため、供給が需要に追いつかないのが現状である。
 2004年1月の著作権法改正により、ボランティア団体が拡大教科書を作成する
際には、著作権者の許諾を得ずとも複製が可能となったが、デジタルデータ提供
については難色を示す出版社が多く、ボランティアの方たちは相も変わらず手入
力やスキャナーで取り込みOCRにかけるといった労を強いられている。2006年
7月以来、文部科学大臣名で出版社側に対し、拡大教科書の出版やデジタルデータ
提供の要請が行われてはいるが、状況はあまり改善されていないようである。

3. 法律成立までの経緯と期待される効果

 この法律成立の大きな契機として、それまで拡大教科書供給促進のために尽力
されてきた筑波大学附属視覚特別支援学校の宇野和博氏が、2007年10月に「教科
書バリアフリー法私案」を公表されて賛同者を募り、関係方面への働きかけを精
力的に進められたことがあげられる。障害者放送協議会著作権委員会としても
2007年5月と7月の2回にわたり、文化審議会著作権分科会の小委員会において意
見発表の機会を得て、「障害者の情報保障や学習権の保障を進めるためには、著
作権法の改正と教科書バリアフリーの課題がセットで解決されるべき」との提言
をしたところであった。
 法案審議の過程では、出版の義務化が必要との意見もあったようだが、これは
見送られて出版社の努力義務とすることで決着をみた。その代償というべきか、
ボランティア団体等へのデジタルデータ提供が義務づけられることとなった。ま
た拡大教科書供給に関する責務は国が負うものと明確化されたことで、今後の全
般的な供与状況の改善が期待される。
 ただし、拡大教科書の「標準規格」や、ボランティア団体等に提供されるデジ
タルデータの種類、提供方法、管理方法などについては、2008年4月21日に文部
科学省が設置した「拡大教科書普及推進会議」において現在も検討中であり、今
後の動向に注目する必要がある。

------------------------------------------------------------------------
(国の責務)
第三条 国は、児童及び生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず十分な教育
を受けることができるよう、教科用特定図書等の供給の促進並びに児童及び生徒
への給与その他教科用特定図書等の普及の促進等のために必要な措置を講じなけ
ればならない。

(教科用図書発行者の責務)
第四条 教科用図書発行者は、児童及び生徒が障害その他の特性の有無にかかわ
らず十分な教育を受けることができるよう、その発行をする検定教科用図書等に
ついて、適切な配慮をするよう努めるものとする。

(教科用図書発行者による電磁的記録の提供等)
第五条 教科用図書発行者は、文部科学省令で定めるところにより、その発行を
する検定教科用図書等に係る電磁的記録を文部科学大臣又は当該電磁的記録を教
科用特定図書等の発行をする者に適切に提供することができる者として文部科学
大臣が指定する者に提供しなければならない。

※「電磁的記録」とは、いわゆる「デジタルデータ」のことである。
------------------------------------------------------------------------

4. 発達障害等の児童生徒への対応

 2007年4月より特別支援教育が本格実施されたことにより、それまでの特殊教
育の対象に加え、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機
能自閉症等の発達障害の児童生徒も対象となった。この特別支援教育の理念とし
ては、一人一人の教育的ニーズに対応した、適切な個別の指導や支援が行われる
ものとされている。しかしながら、拡大教科書等は弱視児童生徒用であるという
制度上の制約や、録音図書は視覚障害用であるとの認識から、その学習支援上の
効果が確認されているにもかかわらず、発達障害等の児童生徒にはほとんど利用
されてこなかった。
 今回成立した法律では、発達障害等の児童生徒が使用する拡大教科書等に関す
る調査研究を国の責務として推進することが謳われている。発達障害の児童生徒
に対し拡大教科書を無償供与とさせることは当初は困難だとしても、保護者から
の要望や学校現場での判断によって利用できる可能性が広がったのであるから、
今後は積極的に活用していくべきであると考える。
 発達障害等の児童生徒に対しての拡大教科書等の学習支援効果について、特に
学校現場での実践的な調査研究の推進が必要になる。ここで拡大教科書「等」と
したのは、紙ベースのものではない、例えばDAISY(Digital Accessible
Information System)のようなデジタル化されマルチメディアに対応した教科書
の活用が期待されるからである。読みに困難のあるLDやディスレクシア(読字
障害)の児童生徒に対して、マルチメディアDAISY化された教材を使った支
援が、すでに一部で始まっており成果を上げている。
 今回、著作権法第33条の2が併せて改正され、複製の方式について「拡大」の
みに限定せず「必要な方式により・・できる」とされたのは、このような将来の
DAISY準拠のデジタル教科書の作製と活用を促進するための条件整備である
と捉えるべきである。

------------------------------------------------------------------------
(発達障害等のある児童及び生徒が使用する教科用特定図書等に関する調査研究
等の推進)
第七条 国は、発達障害その他の障害のある児童及び生徒であって検定教科用図
書等において一般的に使用される文字、図形等を認識することが困難なものが使
用する教科用特定図書等の整備及び充実を図るため、必要な調査研究等を推進す
るものとする。

(教科用拡大図書等の作成のための複製等) ※ 改正著作権法
第三十三条の二 教科用図書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他
の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童又は生
徒の学習の用に供するため、当該教科用図書に用いられている文字、図形等の拡
大その他の当該児童又は生徒が当該著作物を使用するために必要な方式により複
製することができる。
(以下略)
------------------------------------------------------------------------

5. 今後の課題と展望

 この法律が衆議院で可決された際に、同院文部科学委員会から附帯決議が提出
されている。附帯決議そのものに法的効力はないけれども、政府が法律を執行す
る際にとるべき留意事項を示したものであり、その趣旨は最大限尊重されるべき
ものとされる。今後に残された課題の多くが、実はこの附帯決議で指摘されてい
るといってもよいだろう。なお、参議院文教科学委員会からも、ほぼ同趣旨の附
帯決議が提出されている。

------------------------------------------------------------------------
衆議院文部科学委員会提出の附帯決議(抄) ※ 二、三、五、七、は略。

一、 拡大教科書等の供給・普及の促進という国の責務を果たすためには、教科
書発行者による拡大教科書等の発行が重要であることにかんがみ、その発行が一
層促進されるよう、必要な措置を講ずること。

四、 将来の教科書や教材のデジタル化に備え、すべての児童生徒が障害の有無
や程度にかかわらず、快適に利用できる電子教科書や電子教材が開発されること
となるよう、継続的に調査研究を推進すること

六、 高等学校において障害のある生徒が使用する拡大教科書等の普及の在り方
の検討に当たっては、拡大教科書等購入費の自己負担の軽減など必要な具体的支
援について検討し、その結果に基づいて適切な措置を講ずること。

八、 特別支援学校高等部専攻科において、いわゆる音声教科書購入費の自己負
担の軽減が図られるよう、すみやかに必要な措置を講ずること。
------------------------------------------------------------------------

 学校教育の場面に限ってみても、学習活動において教科書以外の図書に依存す
る割合は、学年が進むにつれ増えていく。教科書以外の図書とは、例えば辞書や
資料集、学習参考書、一般書籍等のことである。本来はこれらの図書も、出版段
階でバリアフリー化されているのが理想だが、現実問題としてそれが叶わないの
であれば、少なくとも非営利の教育目的等での利用については、著作物の公正利
用(フェアユース)の観点から、自由に拡大図書や録音図書、マルチメディア
DAISY図書として複製できるように、さらには出版社からのデジタルデータ
の提供が受けられるよう、引き続き著作権法等の見直しを求めていく必要がある。
法改正等の結果、著作権者側への補償金が必要な場合があるとしても、出来る限
り公的な負担とすることが望ましいと考える。
 また、マンパワーやデジタル化された資源を有効活用するためにも、米国で策
定され、すでに一部運用が開始されているNIMAS(National Instructional
Materials Accessibility Standard)のような、デジタルデータ集中管理のため
の仕組みが、わが国でも必要である。システム構築のための初期投資や、著作権
者側への補償金など少なからぬ財政支出が必要ではあろうが、長期的に見れば日
本社会全体としての投資効果は大きいものと思われる。
 全国各地の学校、公民館、図書館、博物館等や、場合によっては自宅のパソコ
ンなどからこのようなシステムを利用して、誰もが手軽にバリアフリー化された
著作物を読むことができる日が、一日も早く到来することを待ち望むものである。

【参考】
  ○ この法律の全文については、下記サイトなどを参照のこと。
    http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/copyright/barrier-free_houan.html
  ○ DAISY( Digital Accessible Information SYstem )については下
    記サイトを参照のこと。
    http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/
  ○ NIMASについては下記サイトを参照のこと。
    http://nimas.cast.org/