第1回 障害者の一般就労を支える人材の育成のあり方に関する研究会議事録 2009/07/042009-01-15

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/txt/s0704-6.txt

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第1回 障害者の一般就労を支える人材の育成のあり方に関する研究会議事録
(平成20年7月4日(金)18:00~20:45、於:共用第6会議室)

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○座長
 それでは、研究会を再開したいと思います。2番目のヒアリングでございますが、明
治学院大学社会学部教授で同時に障害者就業・生活支援センター「ワーキング・トライ」
のセンター長の八木原委員の方から、障害者就業・生活支援センターにおける一般就労
を支える人材の現状と課題についてお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いい
たします。

○八木原委員
 よろしくお願いいたします。先ほどの志賀委員のお話を聞きながら、ちょっと厳しい
状況に立たされているなということを肝に銘じながら、説明は極めて福祉的にやってい
こうと思います。すみませんが、お手元に平成19年度の事業報告書があります。その
他に今日の資料としてJHC板橋会の組織図、それから就労支援のシステム、そして障害
者雇用のアンケート用紙を1部入れさせていただきました。本来ならば、きちんとした
資料を提示する必要があったのですけれども、実際のところをご覧いただきながら説明
させていただこうと思いました。
 まず、このドーナッツ型の組織図ですけれども、これは時計と反対回りに1984年から
順番に開設されている事業所です。左にあります「大山」から「いずみ」までの5ヶ所
が小規模授産施設です。自立支援法の中では2012年までに1つの包括支援センター、3
つの就労継続支援事業B型、1つの地域活動支援センターIII型を検討いたしております。
それから、板橋区の委託事業のクラブハウスが1つ、居住援助事業のグループホーム、
移行支援事業の社会就労センター、地域活動支援事業I型の地域活動支援センター、こ
こには退院促進事業や国土交通省の事業であるあんしん賃貸支援事業も含めています。
これらと、今回の障害者就業・生活支援センターを入れまして、JHC板橋会は複合施
設として活動しております。
 障害者就業・生活支援センター「ワーキング・トライ」の業務の目的とか内容は、こ
の報告書の3ページに基づき展開されております。内容は、4ページから8ページとい
うことで詳細が書かれておりますので、ここを少し説明させていただこうと思います。
 まず、4ページに入って、「相談・支援の実施」ですけれども、これともう1つの就
労支援のシステム図はJHC板橋会の中で生活支援と就労支援というものを2つに分け
た時に、就労支援に重きをおいて活動している小規模授産施設及び就労支援センター、
そして、障害者就業・生活支援センターの利用の流れを図式化したものです。これはD
VD化してありますが、これをご覧いただくと24分かかりますので、割愛させていた
だきます。
 JHC板橋会以外の人たちが利用されるときは、相談申し込みをされますと、まず初
回面接をいたします。ここでの初回面接というのはアセスメントで、そこでコーディネ
ートをしていく形になります。つまり、この人が本当に就労できるのだろうか。それよ
りももう少し訓練をした方がいいのではないか。この人の体験の様子を見ながら少し考
えたいなということなど、振り分けをする作業を第一で行っています。この中で、スタ
ッフに必要なスキルというのは、まずは情報収集された資料、資源をどう活用していく
かということと、コーディネートする力が要求されているのではないかと思います。
 4ページのところに「就労準備学習会」とあります。この就労準備学習会では地域連
携、ネットワークづくりということを大切にしておりまして、この中で東京労働局、産
業労働局、ハローワーク、職業センターの方というように、地域の資源を活用しながら
当事者を含めてみんなで学習をしています。就労ミーティングの中にはいろいろなSS
Tを取り込んでおります。職場定着のために、職場実習をしている人たちが戻って来て、
どのように困ってきたのか、あるいはどういうふうに言われてきたのか。課題を解決し
ていくための1つの方法として行っております。5ページ目の「定着支援」では、職場
訪問ももちろんございますし、個別支援も行います。それから、定着の中では、就職、
一般就労のできた方が月1回集まるOB会というのがありまして、グループワークの中
で相互支援の活動を展開しております。それから、事業主からの相談もたくさんござい
まして、業務創出だとか、メンタルヘルスの対策等についても相談を行っております。
 6ページの中の「関係機関との連絡会議」というのがございます。これは、障害者就
業・生活支援センターで年3回を実施していましたが、今年度からセンターとハローワ
ークとの合同で開催する予定となっています。今年7月から、東京都は5カ所目の障害
者就業・生活支援センターができましたので、東京都にあるハローワークを5分割して、
地域連携の強化をしようということになっております。
 7ページの「障害者雇用支援者に対する研修の実施」ということでは、いろいろと実
施しております。10ページを開けていただきますと、対外的に「障害者の就労支援従
事者研修とSSTセミナー」ということで、以前はSSTを行っていましたが、昨年度
から就労支援に特化した研修に切り替えています。8ページの「ハローワークとの連携」
では、双方が講師として協力をしています。先ほどの準備学習会の中で、ハローワーク
の方が講師となってくださったり、それから東京労働局と東京都産労局主催でのセミナ
ーにこちらが講師として招かれたりしています。もちろん、この中で、私たちが大事に
していることは、ただ単に支援する側が話をするだけではなくて、障害当事者、それか
ら企業の方、支援者の三者が合同で伝え合う機会を設けています。
 支援対象者の状況につきましては、35ページをご覧下さい。障害種別では私どもは
精神障害者を対象に生活支援を行っておりましたので、対象者の9割近くは精神障害の
ある方となっております。その他としては、高次脳機能障害の方、発達障害の方、自閉
やてんかんという形になっています。支援対象者は在職中、求職中、訓練中の割合が3
分の1ぐらいでここ数年推移しているということが、統計資料の中で分かっております。
 36ページの「就職・職場実習状況」ですけれども、平成16年度をピークにちょっ
と減少しています。ほんの少しですけれども、就職している方の数が減ってきていると
いうのをご覧いただけるかと思います。これは、私どものスタッフの能力のなさという
こともあるでしょうが、登録をする前の支援機関がなくて、単独で仕事探しをされてい
るケースが非常に増えてきているということも原因の一つではないかと思われます。従
って、準備訓練が不十分であって、その準備訓練に要する時間が必要になってきて、就
労への移行が難しくなっているということです。
 37ページの「就職者実績」の方では、精神に障害のある方の雇用率算定が可能とな
ってきたことで、企業の障害者雇用の受入れが非常に進んできています。障害をオープ
ンにして就職する方の数が増加しているということで、この表の中でも、クローズドで
いった方が3人しかいらっしゃいません。もちろん手帳取得者もそれに伴って増加して
おります。
 38ページですが、就職者の実績の中で、精神に障害のある方たちの「ワーキング・
トライへの利用経路」を見ていきますと、関係機関からの紹介で相談を受けに来られる
方が増えてきています。その方たち62名の方の詳細を見ていきますと、下の円グラフ
になります。そうしますと、非常に多くの所からの紹介による相談になっていますが、
退院促進事業が進められているといいつつも、病院からの紹介がちょっと少なくなって
います。代わりに、ハローワークから相談に来る人、あるいは自力で相談に見える方が
増えているということで、先ほどの36ページのグラフからもうかがえるのではないか
と考えています。
 すみませんが、43ページをちょっとご覧になってください。「定着率」のところで
すけれども、平成18年の10月から平成19年9月までの1年間のデータの中で、就
職していかれた方が28人です。そして、25人が就職後6カ月を経ても在職しており、
定着率は89.3%です。離職された3人の方を追ってみたのですけれども、1人の方は一
旦就職されましたが離職されて、現在は求職活動中です。2人目の方は、流れ作業に変
わったということで、どうも仕事がしっくりいかないということで辞められ、今は事務
職で勤められて、約1年継続されています。3人目の方は、派遣社員のオペレータとい
うことで仕事をされた方ですが、そこは辞めて、合同面接会を経て就職をされ、データ
入力の仕事で9カ月目に入ったところです。こういった3人の方には、意図的な介入を
行ない、先ほどOB会といいましたけれど、ここにお誘いして、引き続き継続的な相談
を行っています。
 以上がざっとした概要ですが、障害のある方たちの一般就労を支える人材ということ
では、この報告書の3ページ、それから、4ページから8ページ、こういった業務を遂
行していくわけです。就業支援担当者として、まず主任は、法人内部の調整、それから
事業、予算、統括責任を担っています。
 それから、利用者に対するインテーク面接です。私は初回面接を担当しておりまして、
この中で、先ほど申しました振り分け作業をやっております。そうすると、スーパービ
ジョンがやりやすくなるのですね。職員のスーパーバイザーという形で研修を担当して
おりますし、その都度、ケース検討の中でもスーパーバイズしやすくなるということで
す。それから、会議等の渉外、他の機関との連絡調整ということをやっております。次
に担当者は事業計画の立案をしたり、利用者や事業主のための支援ということで出かけ
ることが多くなっております。統計報告書などの作成も当然行います。地域ネットワー
クのための啓発活動も行います。研修等の企画立案を一緒にやっていきます。
 今回の本題である障害者就労支援担当者に必要な能力、必要な技能ということですが、
やはり障害者就業・生活支援センターが三障害の相談を行なうことが原則ですが、多様
な障害者の特性の理解が必要になるかと思います。しかし精神に障害のある方たちを主
に支援してきた関係で、やっぱり発達障害とか、高次脳機能障害の方たちに関しては、
障害者職業センターや発達障害者支援センターなどの専門の就労支援機関と連携をとり
ながら活動していくということになります。就労支援は、環境に応じた柔軟な対応が必
要になりますし、ケアマネジメント技法の特にアセスメント、ニーズアセスメント、プ
ランニングという、この辺りをしっかりとやっていくことが必要です。コーディネート
力はもちろんですけれども、次に個別ケースに応じたネットワークの構築も必要となり
ます。技法として私はSSTをずっと取りいれております。ポジティブな考え方、今で
きるところから目標設定ができるということでは、SSTスキルを採り入れていきたい
と思っております。それから、チームワークです。これは抱え込まないでみんなで支援
していく姿勢をもたないと、就業支援は1人ではできません。コミュニケーションスキ
ルもそうです。適切な報告書の書き方、情報から創造力を持つことです。これは、本セ
ンターも法人内の就労支援を行なっている事業所も同じ状況だと思っています。
 育成方法として、私は3段階あると考えております。
 まず、新人の見習い研修では、まずは観察をするということです。先ほど志賀委員も
いろいろな実際のOJTの話をなさいました。私どもも複合施設の強みを生かして、各
事業所を研修の場として活用しています。就労支援というのは生活支援の一部であると
いうことで、私たちは生活支援からスタートしてきました。生活支援を理解して、個々
のケースが、どのような特性をもっているかを理解した上で就労支援を行なうという、
この流れを理解してもらうことにしております。自分自身のキャリア形成に照らし合わ
せても、障害者雇用というものは、人間尊重の中で平等に、対等に扱われていくという
ことを学んで欲しいと考えております。3カ月間の見習い中は活動記録、スーパービジ
ョンを実施しています。
 2段階目は、他者の話を聞くということで、先ほど申し上げましたセミナー等に同僚
が講師として派遣された時に、自分たちの所属している機関のことをどのように説明し
ているか、仲間の発表を聞くということをやらせております。更に、支援者として自己
覚知ですね。自分自身の振り返りを行うチャンスとして、SSTやピアカウンセリング
の学習を徹底させています。これは支援する一人ひとりの技能というか、豊かな柔軟な
対応ということを考えて、職員の態度変容のための学習として行っております。
 3段階目は、これまでの学びを創造へということで、新しい開発プログラム、つまり
支援する者が支援知識や方法ということを学習して、そして開発プログラムを造り上げ
ていく。そのために、内部研修以外の外部研修に出かけていく。参加後は必ず報告書を
提出する。こういう3段階を私たちは考えて進めております。
 他の機関の一般就労を担う人材ということでは、先ほどからも話が出ております自立
支援法に関連して、移行支援事業を行っている事業というのは大変忙しいです。どんど
ん送り出して、どんどん新しい人を入れていくという流れで、本当に忙しいところなの
ですね。ところが、継続支援B型になってきますと、それがちょっと留まってしまうと
いうことで、先へ進まない。やっぱり、障害者のサービス利用体系と事業所に求められ
ている体系というものとが、どうも混同されているのではないかなと考えます。支援機
関はスムーズな移行になり得ていない。抱え込みが見受けられるということです。
 それから、利用者にとってみれば、一般就労を希望する障害者がそういった施設を利
用するというよりも、むしろ自分自身で就職活動をしていかなければいけないというと
ころに追い込まれているのではないかと思います。つまり、福祉サービスを受けるため
には自己負担をしなければならないということで、自分で職探しをされているのだと思
います。それが36ページで説明しましたように、就労準備段階の準備訓練というとこ
ろで大変時間を要するということにも繋がるのではないかと考えております。そして、
就労移行支援事業者に求められる知識というのは、スムーズな福祉的就労から一般就労
への切り替えが大変難しい状況にあるのだろうと、思っております。やっぱり、ケアマ
ネジメントに基づくアセスメントですね。ちょっと今一つはっきりしないということを
感じます。そうすると、サービスのあり方が思いつきであったり、計画性がなかったり
ということで、それが障害のある方たちに響いているのではないかと感じております。
 今後の人材ということにおきましては、私は事務局にお願いをして、この「特例子会
社における」という機構のNo.265を用意してもらいました。これは、湯田委員や根岸委
員もご一緒でしたけれども、特例子会社についてのケーススタディです。39ページか
ら41ページに今後の見通しという点について書かれています。それと、41ページに
雇用を進めていくために必要なこととしての地域の連携体制、人材の確保ということが
挙げられておりますし、43ページには支援者に求められる要望として、「支援の個別
性、つまり知的障害者はこういうものだ、精神障害者はこういうものだというように、
障害にとらわれないで、個別の対応ということを考えて欲しい」ということが言われて
おりますし、「ジョブコーチの人たちも包括的な支援の役割が必要なのだ」ということ
のコメントが入っておりまして、この研究会の中でもヒントが得られるのではないかと
思います。
 それから、もう1つ、資料の最後に障害者の雇用のアンケート調査というのがありま
す。これは2005年から東京中小企業家同友会との連携でやっております。まだ単純集計
が終わったばかりで、クロス集計を少しやっている最中ですが、56人以上の従業員を
抱える企業からは、障害者雇用を考える動きが見られます。直接雇用を考えているのは、
個々の企業で10社ありました。56人以下のところでは、あまり障害者雇用に対する
関心は高くありません。ただし、職場実習だったら受け入れるというところの回答は多
く見られます。こういったところで私たちは就労支援をしていく中で、体験実習をさせ
ていただくのには好都合なのかなと思っています。この辺も連携がうまく取れたらいい
なと思っています。
 最後に、支援者及び支援機関は、働きたいと希望される障害者の方と向き合った時か
ら支援が始まっているわけです。入口から就労を達成して、継続して仕事が続いていく
ための出口、そして、定着支援に至るまでの全行程をまずは理解しなければなりません。
それがなくて、部分々々を学習していくと、それだけで終わってしまって、支援内容が
見えていかない。福祉的就労から一般就労に向かう時にはこの就労支援の全行程を理解
することが絶対条件だと思います。ですから、障害者の指導を行うに当たり、職務分析
とか業務分析といったものの必要性が理解されていないのも、その辺りにあるのではな
いかと考えております。分断された研修というのは、やはり就労支援にも影響を与える
もので、この機構のNo265 の43ページにもこれと同じことが述べられております。そ
れと、研修というのは、知識、理論の詰め込みが多いのですけれども、理論と同時にそ
れ以上の演習、実践活動、実践の場での研修が必要不可欠だと思っています。以上です。
ちょっと時間をオーバーしまして失礼いたしました。--略

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