参議院 障害者権利条約の批准に関する質問主意書 2009/03/092009-03-09

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/171/syuh/s171079.htm

 質問主意書情報 質問主意書 質問第七九号
 障害者権利条約の批准に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
                          平成二十一年三月九日
                              神本 美恵子
参議院議長 江田 五月殿

障害者権利条約の批准に関する質問主意書

 障害者権利条約は、二〇〇六年一二月国連で採択され、二〇〇八年五月に発効
した。日本政府は二〇〇七年九月二八日に署名し、批准が待たれている。
 障害者権利条約第二四条の内容と、日本の障害のある子どもの教育法の整合性
について、以下、質問する。

一 障害者権利条約の第一条で「障害者とは、長期にわたる身体的、精神的、知
的、感覚的な損傷によって、他者との平等に基づく、十分かつ効果的な社会参加
が、さまざまな障壁の相互作用において阻まれている人たちのことである」とし、
障害を社会・環境との関係で規定している。したがって、障害の克服は社会の在
り方との相関において捉えるべきであると考える。
 しかし、学校教育法第七二条は、「特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、
知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対し
て、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害に
よる学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授ける
ことを目的とする」とし、特別支援学校の教育の目的を機能障害の克服と記載し
ている。
 国際的な潮流としても、障害は社会との関係によって生じるという認識になっ
ていることに明らかにそぐわず、学校教育法第七二条は条約に抵触すると考える
が、政府の見解はいかがか。

二 障害者権利条約第二四条2bは「障害のある人が、自己の住む地域社会にお
いて、他の者との平等を基礎として、インクルーシブで質の高い無償の初等教育
及び中等教育にアクセスすることができること」とされている。
 「アクセスすることができる」とは、権利の実現が保障されることである。し
たがって、障害を持つ子どもが日常的、恒常的に地域の初等中等教育学校に就学
できることと理解するが、それで良いか。

三 障害者権利条約第二四条2cは、「個人の必要に応じて合理的配慮が行われ
ること」と定めている。この合理的配慮は、特別支援学校・普通学級ともに行わ
れると理解して良いのか。
 さらに、地域の普通学校と普通学級に合理的配慮が行われた場合には、学校教
育法施行令第五条第一項第二号の認定就学制度は廃止されると考えても良いのか。
 また、各個人のニーズは、だれがどのように判別するのか明らかにされたい。

四 障害者権利条約第七条第三項は、「障害のある子どもが、他の子どもとの平
等を基礎として、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を
表明する権利を有することを確保する。この場合において、障害のある子どもの
意見は、その年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする」と記載し、
障害のある子どもの自己の意見表明権の確保を規定している。また、「締約国は、
また、障害のある子どもが当該権利を実現するための支援であって障害及び年齢
に適したものを提供される権利を有することを確保する」と記載し、意見表明権
を行使するための支援の提供についても規定している。以上より、前記の合理的
配慮の提供や内容について、障害を持つ子どもの意見表明に基づくべきであると
考えるが、政府の見解はいかがか。また、年齢及び成熟度にそって意見表明を行
使するための支援の提供について、どのように考えているのか明らかにされたい。

五 学校教育法施行令第一八条の二は「市町村の教育委員会は、翌学年の初めか
ら認定就学者として小学校に就学させるべき者又は特別支援学校の小学部に就学
させるべき者について、第五条(第六条第一号において準用する場合を含む。)
又は第十一条第一項(第十一条の三において準用する場合を含む。)の通知をし
ようとするときは、その保護者及び教育学、医学、心理学その他の障害のある児
童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者の意見を聴くものとする」として
いる。
 障害者権利条約第七条は障害のある子どもの意見表明権の確保を規定している。
就学に際して子どもの意見を優先的に尊重せねばならないと考えるがいかがか。
また、子どもの意見表明を尊重しその行使が可能なように支援すべきと考えるが
政府の見解はいかがか。

六 障害者権利条約第二四条2eに記載されている「完全なインクルージョン」
とは、アメリカ合衆国では同じ学級で障害のある子どもと障害のない子どもが共
に学ぶことと理解されており、そのように捉えるべきと考えるが、政府の見解は
いかがか。

七 特別支援学校の学校教育費について、子ども一人あたりいくらか示されたい。
これに対して、普通学級に通う子ども一人あたりの学校教育費はいくらか明らか
にされたい。また、普通学級に障害を持つ子どもが在籍しているにもかかわらず、
就学する場によって子どもの学校教育費が異なる教育予算の仕組みについて、政
府の見解を示されたい。

八 特別支援教育就学奨励費は、保護者の経済的負担を軽減するために、特別支
援学校及び特別支援学級に在籍する障害のある子どもの保護者に支払われている
が、普通学級に在籍する障害のある子どもの保護者には支払われておらず、通学
や付き添いに際して自己負担をしているという実態がある。これは、同じように
障害がありながら、不平等な取扱いと考えるが、政府の見解はいかがか。

  右質問する。