参議院 障害者基本法改正における中央障害者施策推進協議会に関する質問主意書 答弁書 2009/02/26 03/062009-03-06

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/171/syuh/s171070.htm

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平成二十一年二月二十六日
                                谷博 之
   参議院議長 江田 五月 殿

 障害者基本法改正における中央障害者施策推進協議会に関する質問主意書

 障害者基本法は二〇〇四年改正の際、施行後五年目の見直しが附則により規定
されており、今年はその年に当たる。この規定を踏まえ、政府は障害者施策推進
本部の下に設置した障害者施策推進課長会議において、昨年六月から、同年五月
に発効した障害者の権利に関する条約(仮称)(以下、「障害者権利条約」とい
う。)の締結に当たって必要と考えられる改正事項を検討し、同年十二月に同課
長会議が取りまとめた「障害者施策の在り方についての検討結果について」(以
下、「検討結果」という。)の中で八項目として公表した。
 八項目の中では、中央障害者施策推進協議会(以下、「中障協」という。)に
関する改正事項として、「障害者施策に関する調査審議、意見具申及び施策の実
施状況の監視等の所掌事務を追加する」(検討結果3.(7))と「関係行政機
関に対する資料提出等の協力の要請ができることとする」(検討結果3.(8))
の二つが示されている。この内容と、この内容に関係すると思われる障害者権利
条約の条文(第三十三条「国内における実施及び監視」)との整合性が不明なた
め、以下、質問する。

一 障害者権利条約の第三十三条第二項は「締約国は、自国の法律上及び行政上
の制度に従い、この条約の実施を促進し、保護し、及び監視するための枠組み
(適当な場合には、一又は二以上の独立した仕組みを含む。)を自国内において
維持し、強化し、指定し、又は設置する。締約国は、このような仕組みを指定し、
又は設置する場合には、人権の保護及び促進のための国内機構の地位及び役割に
関する原則を考慮に入れる」(外務省仮訳)とある。
 ここでいう「国内機構の地位に関する原則」とは、一九九三年十二月に国連総
会で決議された、いわゆるパリ原則のことであり、その原則2には、「国内機構
には、できるだけ広範な任務が与えられるものとし、その任務は、機構の構成及
び権限の範囲を定める憲法又は法律に明確に規定されるものとする」と明記(外
務省ホームページより。以下同じ。)されている。
 検討結果3.(7)でいうところの中障協の「所掌事務」は、このパリ原則2
でいうところの国内機構の「権限」と比べて極めて弱い位置づけではないかと考
えるが、政府の見解を明らかにされたい。もし違う点があるとすれば、それは何
か。

二 パリ原則3には、「国内機構は、特に、次の責務を有するものとする」とあ
り、続いて「政府、議会及び権限を有する他のすべての機関に対し、人権の促進
及び擁護に関するすべての事項について、関係当局の要請に応じ、又は、上位機
関に照会せずに問題を審理する権限の行使を通じて、助言を与えるという立場か
ら、意見、勧告、提案及び報告を提出すること」、また「国内機構は、法案や提
案と同様に、現行の法律や行政規定を審査し、これらの規定を人権の基本原則に
確実に適合させるために適当と考える勧告を行うものとする」ことが明記されて
いる。
 検討結果3.(7)における中障協の「意見具申」は、このパリ原則でいうと
ころの国内機構の「勧告」と比べて極めて弱い位置づけではないかと考えるが、
政府の見解を明らかにされたい。もし違う点があるとすれば、それは何か。

三 検討結果3.(7)における「施策の実施状況の監視」との関係で、社会福
祉法人日本身体障害者団体連合会は、「障害者権利条約の履行及び施策の実施状
況や監視の仕組みを設置する上で、政府から独立した機関とすることが適当」と
主張している。ところが検討結果には、中障協に一定の独立性を付与することに
ついて一切触れられていない。政府は中障協に、障害者権利条約及びパリ原則で
示されている独立性を持たせるべきと考えていないのか。

四 検討結果3.(7)における「施策の実施状況の監視」との関係で、中障協
の独立性がどのように確保されるのかという点について、昨年十二月の民主党障
がい者政策作業チームにおける障害者施策推進本部の説明によると、「検討結果
3.(8)に記した『関係行政機関に対する資料提出等の協力の要請』によって
確保できる」とのことであった。しかし関係行政機関に対する資料提出等の協力
の要請は、通常業務として位置づけられるものであり、そのことによってただち
に中障協の独立性が確保されるとは理解しがたいと考えるが、いかがか。

五 中障協に独立性を付与するとすれば、法的にどのような形で担保されるべき
と考えるか。

六 政府の考える中障協のあるべき独立性と、内閣府設置法第四十九条の規定に
基づく「外局」の独立性との違いは何か。

七 障害者権利条約の第三十三条第三項には「市民社会(特に、障害者及び障害
者を代表する団体)は、監視の過程に十分に関与し、かつ、参加する」(外務省
仮訳)とあるが、障害者基本法第二十五条第二項の改正なしに、現在の中障協の
委員任命方法及び委員構成のままで、障害者権利条約第三十三条第三項に適合し、
障害者権利条約を批准することが可能であると考えているのか。

八 中障協の委員の過半数を、障害を持つ有識者及び障害者を代表する団体から
の推薦者で占めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

九 障害者権利条約の批准に伴い、中障協の庶務を含めた障害者施策を担当する
内閣府の常勤職員を、現在の政策統括官以下十名から増員する予定はあるか。

十 二〇〇九年度予算案で七百万円とした中障協経費の増額分三百万円によって、
協議会の開催回数を何回増やす見込みなのか明らかにされたい。

  右質問する。

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http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/171/touh/t171070.htm

内閣参質一七一第七〇号 平成二十一年三月六日
                        内閣総理大臣 麻生 太郎
   参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員谷博之君提出障害者基本法改正における中央障害者施策推進協議会に
関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員谷博之君提出障害者基本法改正における中央障害者施策推進協議会に
関する質問に対する答弁書

一及び二について
 障害者施策推進課長会議が平成二十年十二月二十六日に取りまとめた「障害者
施策の在り方についての検討結果について」においては、障害者の権利に関する
条約(仮称)(以下「本条約」という。)の締結に際し必要と考えられる障害者
基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の改正事項として、中央障害者施策推進
協議会(以下「中央協議会」という。)について、「障害者施策に関する調査審
議、意見具申及び施策の実施状況の監視等の所掌事務を追加する」こと及び「関
係行政機関に対する資料提出等の協力の要請ができることとする」ことを挙げて
いる。これらの改正により、「国内機構の地位に関する原則」(以下「パリ原則」
という。)を考慮に入れる旨の規定を含む本条約第三十三条2の規定を実施する
ことが可能であると考えている。

三から五までについて
 本条約第三十三条2においては、締約国が、その実施を促進し、保護し、及び
監視するための枠組み(適当な場合には、一又は二以上の独立した仕組みを含
む。)を自国内において維持し、強化し、指定し、又は設置することとし、その
場合にはパリ原則を考慮に入れる旨規定されている。
 御指摘のパリ原則においては、「構成並びに独立性及び多様性の保障」として、
多元的な代表の確保、活動の円滑な運営にふさわしい基盤及び一定の任期を定め
た公的な任命に触れられているところ、中央協議会については、障害者基本法第
二十五条第二項において、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び
学識経験のある者のうちから委員が任命されることとなっている。また、その運
営に必要な予算が確保されてきており、かつ、その委員は、内閣総理大臣により
二年の任期をもって任命されている。さらに、一及び二についてで述べた改正が
実現すれば、中央協議会は障害者施策に関する調査審議、意見具申及び施策の実
施状況の監視等の所掌事務が追加され、並びに関係行政機関に対する資料提出等
の協力の要請を行うことができることとなることから、運営における独立性も確
保されることとなる。
 これらの点から、中央協議会により、パリ原則を考慮に入れる旨の規定を含む
本条約第三十三条2の規定を実施することが可能であると考えている。

六について
 中央協議会については、三から五までについてで述べたとおり、パリ原則を考
慮に入れる旨の規定を含む本条約第三十三条2の規定を実施することが可能であ
るようなものである必要があると考えている。
 一方、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条の規定に基づく
「外局」は、事務の性質、事務量の規模等を踏まえて、必要に応じて設置される
ものであり、組織、業務運営における本府からの独立性については、それぞれの
外局の性格に応じて定められているものである。

七について
 障害者基本法第二十五条第二項において、「中央協議会の委員は、障害者、障
害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験のある者のうちから、内閣総
理大臣が任命する。この場合において、委員の構成については、中央協議会が様
々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた協議を行うことができることと
なるよう、配慮されなければならない。」と規定されており、現在任命されてい
る二十九名の委員のうち過半数である十六名が障害のある者又はその家族である
とともに、障害の多様性も反映した構成としていることから、市民社会(特に、
障害者及び障害者を代表する団体)による関与及び参加が十分確保されているも
のと考えている。したがって、障害者基本法第二十五条第二項の改正並びに委員
の任命方法及び委員構成の変更を行わなくても、本条約の締結は可能であると考
えている。

八について
 障害者基本法第二十五条第二項において、「委員の構成については、中央協議
会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた協議を行うことができる
こととなるよう、配慮されなければならない。」と規定されており、現在任命さ
れている二十九名の委員のうち過半数である十六名が障害のある者又はその家族
であり、今後とも、中央協議会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏ま
えた協議を行うことができるよう適切に運営してまいりたい。

九について
 中央協議会の庶務を含めた障害者施策を担当する職員の数について見通しを述
べることは困難であるが、本条約の批准の後も、引き続き、必要な職員の確保に
努めてまいりたい。

十について
 平成二十一年度予算案においては、中央協議会の開催回数を四回増やすことを
見込んでいる。

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