文科省「学校教育の情報化に関する懇談会」開催について 2010/04/222010-04-22

「学校教育の情報化に関する懇談会」(第1回) 動画配信及び配布資料について
(※「熟議カケアイ」サイトにリンクします)
http://jukugi.mext.go.jp/library_view?library_id=57

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/04/1292706.htm

平成22年4月15日

 文部科学省では、今後の学校教育(初等中等教育段階)の情報化に関する総合
的な推進方策について有識者等との意見交換等を行うため、文部科学副大臣主催
の下、「学校教育の情報化に関する懇談会」を開催します。1 趣旨
 社会の情報化の急速な進展に伴い、ICTを最大限活用した21世紀にふさわしい
学校づくりが求められている。
 このため、今後の学校教育(初等中等教育段階)の情報化に関する総合的な推
進方策について有識者等との意見交換等を行うため、「学校教育の情報化に関す
る懇談会」(以下「懇談会」という。)を設置する。

2 懇談事項
(1)授業におけるICTの活用について(デジタル教科書・教材、情報端末・デジ
  タル機器、学校・教員等の在り方を含む)
(2)ICTを活用した校務支援について
(3)ICTの活用に関する教員へのサポート等について
(4)その他

3 懇談会委員 (敬称略、五十音順)

天野 一   社団法人日本PTA全国協議会副会長
新井 紀子  国立情報学研究所社会共有知研究センター長
安西 祐一郎 慶應義塾大学理工学部教授
五十嵐 俊子 日野市立平山小学校校長
市川 寛   東京書籍株式会社編集局ソフトウエア制作部部長
馬野 耕至  読売新聞東京本社メディア戦略局専門委員
大路 幹生  日本放送協会放送総局ライツ・アーカイブスセンター長
小城 武彦  丸善株式会社代表取締役社長
陰山 英男  立命館大学教育開発推進機構教授
國定 勇人  三条市長
重木 昭信  株式会社NTTデータ顧問、社団法人日本経済団体連合会情報通信
       委員会高度情報通信人材育成部会長
関口 和一  日本経済新聞社産業部編集委員兼論説委員
玉置 崇   愛知県教育委員会海部教育事務所所長
千葉 薫   仙北市立生保内小学校学校支援地域本部地域コーディネーター
中村 伊知哉 慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
西野 和典  九州工業大学大学院情報工学研究院教授
野中 陽一  横浜国立大学教育人間科学部准教授
堀田 龍也  玉川大学大学院教育学研究科教職専攻教授
三宅 なほみ 東京大学大学院教育学研究科教授
宮澤 賀津雄 早稲田大学IT教育研究所研究員(研究総括)
村上 輝康  株式会社野村総合研究所シニア・フェロー
若井田 正文 世田谷区教育委員会教育長
(以上22名)

4 開催日時・場所

第1回懇談会を、平成22年4月22日(木曜日)16時から18時まで、文部科学省3F1
特別会議室において開催します。

5 傍聴の受付について

 → すでに申し込みは締め切られていますが、インターネットによりライブ配
   信の予定。下記参照。

---------------

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/04/1292860.htm

「学校教育の情報化に関する懇談会」の開催について(変更)

平成22年4月20日

4月15日に報道発表しました「学校教育の情報化に関する懇談会」の開催につい
て、以下のとおり変更します。インターネットによるライブ配信について
 4月22日(木曜日)開催予定の第1回懇談会の模様について、インターネットに
よりライブ配信を行うこととしました。
 文部科学省のホームページのトップ画面に、ライブ配信についてのリンクを載
せる予定です。

お問い合わせ先
 生涯学習政策局参事官(学習情報政策担当)付
  情報政策室長 増子 則義、 教育情報施策調整係長 原田 智
  電話番号:電話:03-5253-4111(内線2940、2085)
  メールアドレス:gakusyu@mext.go.jp
(生涯学習政策局参事官(学習情報政策担当)付)

「学校教育の情報化に関する懇談会」第1回 動画配信等 2010/04/222010-04-22

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1292783.htm

文部科学省では、今後の学校教育(初等中等教育段階)の情報化に関する総合的
な推進方策について有識者等との意見交換を行うため、文部科学副大臣主催の下、
「学校教育の情報化に関する懇談会」を開催しています。

○「学校教育の情報化に関する懇談会」(第1回)
  日 時 平成22年4月22日(木)16:00~18:00
  場 所 文部科学省東館3F1特別会議室
  議 事 (1)懇談会座長の選任等について
      (2)自由討議

<動画配信>
低速用
http://www.elnet.go.jp/elnet_web/file/work1/ondemand/20100426143041/40725b366c76520271330f65/40725b366c76520271330f651.asx
高速用
http://www.elnet.go.jp/elnet_web/file/work1/ondemand/20100426143041/40725b366c76520271330f65/40725b366c76520271330f652.asx

<配布資料>

資料1 学校教育の情報化に関する懇談会の設置について
    http://jukugi.mext.go.jp/archive/59.pdf
資料2 学校教育の情報化に関する懇談会委員名簿
    http://jukugi.mext.go.jp/archive/60.pdf
資料3 学校教育の情報化に関する懇談会の懇談内容の公開について(案)
    http://jukugi.mext.go.jp/archive/61.pdf
資料4 論点(案)
    http://jukugi.mext.go.jp/archive/62.pdf
資料5 委員提出資料

5-1 新井委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/63.pdf
5-2 安西委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/64.pdf
5-3 五十嵐委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/65.pdf
5-4 市川委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/66.pdf
5-5 馬野委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/67.pdf
5-6 大路委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/68.pdf
5-7 小城委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/69.pdf
5-8 陰山委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/70.pdf
5-9 國定委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/71.pdf
5-10 重木委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/72.pdf
5-11 玉置委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/73.pdf
5-12 千葉委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/74.pdf
5-13 中村委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/76.pdf
5-14 西野委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/77.pdf
5-15 野中委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/78.pdf
5-16 堀田委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/79.pdf
5-17 三宅委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/82.pdf
5-18 宮澤委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/83.pdf
5-19 村上委員提出資料
   http://jukugi.mext.go.jp/archive/85.pdf

資料6 今後のスケジュールについて(予定)
    http://jukugi.mext.go.jp/archive/88.pdf
参考資料 学校教育の情報化に関する基礎資料
    http://jukugi.mext.go.jp/archive/89.pdf

学校教育の情報化に関する懇談会(第1回) 【議事概要】 2010/04/222010-04-22

https://jukugi.mext.go.jp/archive/114.pdf

1 日時:平成22年4月22日(木)16:00~18:00

2 場所:文部科学省東館3F講堂

3 委員出席者(敬称略):天野一、新井紀子、安西祐一郎、五十嵐俊子、市川
 寛、馬野耕至、大路幹生、小城武彦、陰山英男、國定勇人、重木昭信(角田代
 理)、玉置崇、千葉薫、中村伊知哉、西野和典、野中陽一、堀田龍也、三宅な
 ほみ、宮澤賀津雄、村上輝康、若井田正文

4 文部科学省出席者:鈴木文部科学副大臣、坂田文部科学事務次官、清水文部
 科学審議官、山中官房長、板東生涯学習政策局長、川上審議官(生涯学習政策
 局担当)、?久審議官(初等中等教育局担当)、戸渡審議官(文化庁)、齋藤
 参事官(学習情報政策担当)、増子情報政策室長

5 議事概要

(1)議事の公開について資料3のとおり決定。座長に安西委員、副座長に三宅
 委員が就任。

(2)鈴木副大臣挨拶

○ 社会の情報化の急速な進展に伴い、ICTを最大限活用した21世紀にふさわしい
学校づくり、学びが求められている。主に初等中等教育段階における学校教育あ
るいは学びの情報化に関する推進方策について懇談をいただきたい。

○ 21世紀は、ICTの社会への普及によって、単なる技術革命ではなく、情報社会
革命とも呼ぶべき文明論的転換が生じている。すなわち、物の生産よりも、情報、
文化、コミュニケーションが、社会活動、人間活動の極めて中心的な要素を占め
るという歴史的転換期にある。こうしたなかで、次の時代を担う人材を養成する
学校現場、あるいは学びそのものが、そうした新しい歴史創造を先導することを
構想していきたい。

○ 今までのマスエデュケーション自体も、コンセプトから変わっていく。単な
る理念だけではなく、まさにICT、あるいはデジタルコミュニケーション環境、
情報機器によって、個に応じた学習、あるいはそうした個と個によるコラボレィ
ティブな学び、膨大なアーカイブ、様々なシミュレーションも可能になっていく。
これらは、無限の可能性を秘めており、例えば、個別の児童・生徒の学びの履歴、
あるいは成長も、相当な程度で把握可能になり、これに基づいたカスタマイズさ
れた学びもデザインできるだろう。また、時間と空間を超えて、場合によって、
国境を超えたコラボレィティブな学習も可能になる。
こうした中で、学びの本質論にも立ち返りつつ、21世紀の学びを再構築、再構
成していきたい。

○ 具体的には、例えばデジタル教科書、教材、あるいは情報端末、デジタル機
器を議論の対象とする。その際、次のパラダイムをどのようにしていくべきかに
ついても、きちんと理解し、そして近い将来の的確な導入についてのロードマッ
プも見すえていく。また、新しい学習環境における教員、教員をサポートする人
材、学校をデザインすることを検討する。校務も、ICTを活用することによって、
劇的に効率化し、また改善をすることができる。教員へのさまざまなサポートに
ついても、議論の対象にしたい。

○ ヒアリングを随時行いながら、6月あるいは7月を目途に、文部科学省として、
教育の情報化ビジョンの骨子、枠組みをとりまとめ、来年度の概算要求などにも
つなげていきたい。その後は具体的な課題に即してワーキンググループを設置し、
年度内に教育の情報化ビジョンを策定したい。IT戦略本部における政府全体の新
たなIT戦略の策定動向との整合性も図りながら、教育の情報化ビジョンを策定し
てまいりたい。

○ 21世紀のまさに新しい日本人をつくっていくという観点に立ち返って、皆さ
んと一緒に新しいパラダイムを切り開いていきたいので、よろしくお願いしたい。

(3)意見交換

【天野委員】

○ 保護者の立場からは、ICTを活用することによって、子供たちも大きな変化を
していくと思う。子供たちは、情報機器の操作や理解が大変速い。情報機器は、
教科書以上に、授業への関心や興味、あるいは意欲を高めてくれるのではないか。

○ 他方、情報機器により、操作が得意な教員にとっては負担軽減になるが、苦
手の教員にとってはかえって負担になることがある。教員のICT活用に格差が出
て、それが子供たちの学力差に表れてしまうのではないかという懸念もある。

【新井委員】

○ 国立情報学研究所では、2005年からNet Commonsというソフトウエアを、オー
プンソース、完全にプログラムの中味を公開した形で、無償で配布している。こ
のソフトウエアにより、学校のホームページが非常にきれいに構築できるだけで
はなく、日々更新して学校の情報を発信できる。あるいはうまくメールと連動さ
せると、それが不審者情報の配信システムにも使える。保護者から学校評価のア
ンケートをとったり、保護者にだけ見えるPTA用の部屋が用意されたり、教員用
のグループウエアが整備されていたり、子供たちが協調しながら学習ができるよ
うな場、基礎学力の繰り返しのテストができるようなシステムを提供している。
現在までに全国で2,500ほどの学校で利用されており、例えば鳥取県、神戸市、
前橋市、佐野市などでは、全学校で使用されている。

○ 一番ICTの支援が必要で、子供たちにとってもICTに触れて情報活用能力を学
んでいかなければいけないのは、小中学校ではないか。アイデアや使えるお金の
額は、市町村の規模によって様々であり、教育委員会に任せる形だとどうしても
格差が出てしまう。ICTの基盤部分をクラウド化、SaaS化してコストを10分の1、
50分の1に下げることも考えるべきではないか。

【五十嵐委員】

○ 日野市の教育の情報化のポイントは、授業の充実、校務の情報化、広報であ
り、優れた実践校には、市独自のICTマークを授与する仕組みを整備している。
これまでの日野市のICT化の成果の要因は、教育の情報化の戦略本部を設け
(教育CIO)、ICT活用教育推進室を設置し、学校のマネジメント体制(学
校CIO)を整え、市が示した明確なビジョンの実現を目指したことである。と
くにメディアコーディネータ(ICT支援員)が、ハード面の整備より授業創り
の支援をしてきた点が特色である。

○ 日野市では、ICTを活用して、個に応じた学習を実現している。クラス、
学年、学校を超えた共同学習も行っている。今はPDAを使って、発見したことを
その場でメモして、その情報を共有するという取り組みも始めている。学習過程、
学び合いの振り返りのポートフォリオの活用も増えてきた。教科を深めるために
分析ツールとしての活用も行っている。また、思考を深めるため、様々な図形を、
子どもたちが実際に操作、活用している。デジタルコンテンツのうち、理科ねっ
とわーくは、理科を教える教員はみんな使おうと取り組んできた。

○ 校務支援システムは、効率的であるだけではなく、教育の質を向上させると
いうことがだんだん見えてきた。見える学校づくりということで、Webサイトに
ついては技術がなくても発信できるように、全校にCMSを入れ、最初は校長から
発信した。前提となるセキュリティ対策も整えてきた。

○ 今後の課題として、次のことを指摘したい。サポート体制について、いろい
ろな自治体がゼロからの立ち上げを始めている。日野市の経験を生かしながらモ
デル地域に対する助言の機会を得たが、それらの自治体は素晴らしい成果を上げ
ているので、その成果がもっと広められたらいい。

○ 指導主事がいない自治体もあるなかで、小規模の教育委員会に対する支援を
真剣に考えなくてはならない。新任教員の中にも、ICTの教育利用に否定的な
考えを持っている初任者が少なくないように思うが、教員養成課程に課題がある
のではないか。

○ 学校がICTをどんどん使える段階にあり、もっと教科の学びを深めたいと
きに、教員のニーズにこたえられるようなソフトをすぐに調達できる仕組みがあ
ればよいと思う。

【市川委員】

○ 従来、一般的に言われているデジタル教科書は、教室で教員が補助資料とし
て使う提示用教材である。最近よく使用されるようになった理由は、第一に、視
覚効果があって非常に楽しく、学習意欲や授業への集中力が高まることだ。また、
教員にとっては、準備のロス等が大分省けてきた。AETの先生が、デジタル教材
を使った授業の子供たちの発音は、去年自分が教えていたクラスと全く違うと述
べていた。

○ ICTを活用していくためには、多くの教員が、早くICT、それからその教材の
活用に慣れ親しむことではないか。そのためには、機器は格差なく学校にそろえ
られるということが最優先である。韓国では、2007年以前に、全学校にデジタル
テレビなど、デジタルコンテンツを提示する大型のビジョンが普通教室に配備さ
れていた。まず環境整備をしっかりしてほしい。

○ 「生きる力」と、OECDの21世紀のスキルを踏まえると、教員の指導用、ある
いは生徒用の、デジタルコンテンツの開発が必要ではないか。また教科書会社
としては、著作権の問題と、それから標準化の問題等があると思う。

【馬野委員】

○ デジタル教科書について、印刷物でないと教科書にすることができないのか
どうか。デジタル教科書にせよデジタル機器にせよ、専用のものを開発するの
か、それとも既に市販されている汎用のものを活用するのか。教育現場への導
入をいつごろ想定しているのか。これらを確認したい。

○ これらの開発や普及を促進させるには、情報通信技術、ICTの利用環境の整
備が不可欠である。全校に無線LANを整備するよう、従来の目標水準を引き上げ
るべきではないか。ICT利用環境の具体的な目標設定、その実現に向けた工程表
の作成が急がれるべきと思う。また、過去の戦略期間中に達成できなかった原
因を究明することが大切。これを究明した上で、予算措置のあり方も含めて今
後の対策を明確に打ち出すことが求められる。

○ NIE(Newspaper In Education)として、学校などで新聞を教材として活用
するという事業を全国的に展開している。OECDの調査でも、読解力向上には新
聞が有効であるという結果が示されている。

○ 新聞社が保有するデジタル化された情報資産としては、記事や写真のデータ
ベースがある。本年1月現在、日本新聞協会加盟社のうち54社がデータベース提
供事業を行っている。例えば読売新聞社の場合、学校向けの記事データベース
サービス「スクールヨミダス」は、国語や社会、総合的な学習などの授業のほ
かに、小論文、レポートづくり、ディベートに備えた資料収集に活用されてい
る。また明治7年の創刊から、現在までの記事をオンラインで検索、閲覧するこ
とができる「ヨミダス歴史館」というサービスを使えば生徒・児童たちの近現
代史の理解を深めることに役立つのではないか。

【大路委員】

○ NHKの学校放送番組は、小学校の68.2%で利用されているというデータがあ
る。他方、デジタル教材については、今年度、600本の番組と約3,000本の動画
クリップを公開しているものの、利用率は27%と若干低い状況にある。認知し
ているが利用していない学校の先生方に伺うと、ネット環境が整えば利用した
いといった声がよく聞かれる。

○ NHKクリエィティブライブラリーは、昨年10月末にスタートした新しいサー
ビスであるが、過去の映像素材、NHKが撮影してきた様々な自然、風景、CG等の
素材を、無料で、インターネットにより提供している。3月末時点で3,000本で
あるが、一層増やしていくために取り組んでいる。簡易編集ソフトを入れてお
り、子ども、若い人たちが、これを使って簡単な映像作品を作れるということ
が売りである。また、著作権フリーの音楽も何種類か入れており、ミュージッ
クビデオも作れる。創造性教育、映像リテラシーの教育に利用いただきたい。

○ 他に、「戦争証言アーカイブス」として、今年の夏から再開するサービス
がある。太平洋戦争の激戦地で苦労した兵士、市民、さまざまな方々の証言を、
400件程度集めてインターネットですべて公開しようという計画であり、年表・
地図も入れて、授業でも使えるようにしたい。環境、平和、生き方、情報といっ
たテーマで、過去の特集番組等のDVDを無料で貸し出すサービスも学校向けに行
っている。

○ これらと並行し、デジタル教材を学校で利用していただくため、教員のため
の講座を行っている。今年度は全国で10回程度開催する予定。教員を志望する
学生に向けて、教え方教室も実施している。回数は年5回程度であるが、講師派
遣等も実施している。課題は、学校のICT環境の整備の一層の充実である。動作
環境、先生方にとって非常に使い勝手の悪い環境にある学校が少なくない。こ
れは自治体によっても差があり、教員が黒板の前で見せる分にはよいが、パソ
コン教室で全員が一斉にアクセスするととまってしまったりする現状がある。
フィルタリングのためNHKのクリエィティブライブラリーが見られない学校もあ
る。

○ 今後、ICTのすそ野を広げていくためには、教育現場を支えていくためのサポ
ート体制をさらに充実するとともに、ICTの活用ノウハウを身につけるための教
育プログラムを考えていく必要がある。

【小城委員】

○ 大学の教育分野でのデジタル化では、教科書について、米国が大変進んでお
り、現状はまだ5%程度であるが、2012年には全体の教科書の10%から15%がデ
ジタル化されるだろうと思われている。単なる内容で差異化するだけではなく、
教員が自由に編集できたり、補助教材がついていたり、学生の成績管理等の機能
がついていることが大変多い。また電子書籍端末については、大学等で実験が始
まっており、Amazonのキンドル等が大学で配布され、トライアルが始まっている。
電子図書館についても、日本でも若干始まっているが、アメリカが一歩先行して
いる。また特にITを活用した学習環境デザインについて、いわゆるアクティブ・
ラーニングが日本では東京大学を中心とし、また、アメリカでも進んでおり、効
果としては、成績優秀者の力がより伸びる傾向があると言われている。

○ アナログ、デジタルを2分割で考えず、それぞれのよさをハイブリッド化し
て、トータルで効用を増すという発想が大変重要である。また、単なる教材の
IT化、デジタル化だけではなく、やはり学習環境全体をデザインする視点が重
要である。特に電子図書館については、聞くところによると、現状の本がある
図書館については、未だIT化が途上であると伺っており、それをやらないと、
なかなか電子化は難しいと考えている。

【陰山委員】

○ 本年3月にシンガポールで、ICTを使った教育の国際コンクールの審査員を務
めたが、非常に衝撃的だったのは、圧倒的に日本が遅れており、完全にアジアの
トップから見れば抜き去られている状態であることだ。教職員の大量退職により
ます新規参入が今後10年大きく進む。こうした中で、教員免許の更新制をはじめ、
教職員のあり方についての議論が高まっている今だからこそ、本懇談会は非常に
意味があると思う。また、新しい学習指導要領が提起され、教材が変わってくる。
これは学ぶ内容も変わってくるわけであるが、キンドル、iPad等がいよいよ登場
し、ごく普通に日常生活の中に馴染んでくれば、自然に子供たちが使うようにな
る。この場合に、デジタル教科書もごく自然に子供たちに入ってくるのではない
かと思う。もっと国策として導くべきであり、根本から
改めるべきではないか。

○ 立命館小学校に、DS-iという新しいDSを入れた。2面式になっていて、画面
があり、書くところがある。いわば教科書とノートの関係である。もっと教育
用に特化したものが考えられていいのではないか。そしてこれを全国に普及し
ていくためには大量のお金が要ると思う。予算のあり方からひっくるめて、日
本の教育全体を改める必要があるのではないか。教育の分権化は、基本的には
正しいとは思うが、一時期、いっぺん中央集権に戻してはどうかというぐらい
のことを思っている。

【國定委員】

○ 三条市では、昨年度の補正予算によって簡易型の電子黒板を大量に導入した。
子供たちを集中させる効果が非常に高いという意味で、教員に極めてよい評価
をいただいている。現時点での学校現場の情報化水準からすれば、この電子黒
板を如何に活用させていくのかに予算、財源、人材をすべて集中投資してもい
いのではないか。個別端末に可能性を追求していくことももちろん大切だが、
限られた財源を考えたときには、せっかく今、全国に普及をし始めた簡易型の
電子黒板、これを活用するソフトを充実させていかなければいけない。何と言
っても最良・最強のコンテンツは教科書であるので、現在一部に限られている
教科書のデジタル化にまずは全力投球するべきではないか。このデジタル化を
強力に推進するためにも、紙ベースの教科書の無償給与を準用するような形で、
自治体間格差を生まないための、国からの積極的な財政支援も必要ではないか。

○ 特別支援教育に対する支援も大事な視点である。発達の障害のレベル、そし
て発達の段階に応じて、といったときに、ICTほど親和性の高いものはないと思
う。これこそ国、行政が積極的に入り込んでいく分野だと考えており、ハード、
ソフト、両面にわたって、これから先かなり力を入れていくべき分野である。

○ 校務支援システムは絶対に必要である。校務支援システムについては、恐ら
く全国の市町村、ほぼ一律の中味で十分だと思っている。例えばクラウドコン
ピューティング、地域情報化プラットホームといったような、統一的な共通基
盤を得ないと、自治体が今陥っている、いわゆる基幹系の電算システムが個別
のシステムベンダーによってかなり高いところでとどまっている状況の二の舞
を踏むことになる。したがって、全国的で統一的なシステムの導入を目指して
いくべきである。

○ 自治体への財政支援については、教育版一括交付金の創設を期待している。
そうすれば、各自治体がハード、ソフトの整備などを複数年度の計画で行うこ
とができ、結果として全国的に均(なら)される形になるだろう。

【重木委員(角田代理)】

○ 教育に関するICTの利用について、デジタル機器の導入や、通信環境の整備だ
けではなく、教材、コンテンツの整備が重要である。コンテンツの整備につい
ては、現場に任せるだけでは足りない。標準的なコンテンツの供給、流通体制
の整備が、今後求められる。また、専門的な理解なしに使えるような環境での
配備、提供が望ましい。

○ カリキュラムに沿った標準的なコンテンツ作成については、中央で集中的に
行って、それを現場に提供するという形があり、現場では、それを改善し、現
場でつくったものをさらに集中管理していくことが、自由に可能な環境整備が
必要になるのではないか。

○ 情報化社会に関する教育が、従来に増して必要になる。単にパソコンの使い
方を教えるというだけではなく、情報の取得、蓄積方法、分析技術、発表方法
など、コンピューターの利用有無にかかわらず、一連のコミュニケーション方
法、情報活用方法を中心に教えていく必要がある。

○ ICTによる校務支援については、教職員1人1台のパソコンとネットワーク接続
環境が望ましい。多くの学校は、教職員の数で見ると、企業で言えば零細企業、
小規模な企業に該当する。そうした意味では、ICTの専門家をそれぞれに設置す
るということは実質的に難しいため、例えば区ごとに専門メンバーを配置する
などして、複数の学校のICT化を一括して進めるというふうなやり方が、現実的
には望ましい。また、個別にプログラムとかシステムを作るのは高価になるた
め、業務の標準化が必要になる。

【玉置委員】

○ 校務の情報化によって、学校は間違いなく元気になる。保護者からの信頼が
生まれる。小牧市の実践により、教職間の情報の共有が素早くでき、お互いの
情報をオープンに見られることで、教職員の力も向上した。1年間で、A4で20
ページぐらいの情報を保護者に提供している。そして全職員で子供を育てよう
という目的で、「いいとこ見つけ」という取り組みとして、グループウエアの中
に各職員が見つけた子供のいいところを書いておくと、それが通知表のところ
に自動的に差し込まれ、子供はいろいろな先生から自分を認めてもらったとい
うコメントを読むことができる。保護者も、学校の先生は我が子を一人一人を

見ていてくれていると考える。また、ホームページにCMSを導入し、365日学校
ホームページを更新した。いわゆる学校を見えるようにすることによって、保
護者からの声が入り、双方向のやりとりができることを実感している。

○ 課題としては、校務の情報化が学校のマネジメントを大きく変えるという認
識がまだ広がっていないことだ。教育行政にいると、調査、文書がたくさんあ
るが、ICTを使って、国レベルで集約をし、利用していくことができないかと思
う。

【千葉委員】

○ 学校支援地域本部地域コーディネーターという仕事をしながら学校を幾つか
回ってみたが、例えば、生保内小学校では、先月電子黒板が入った。例えば、
理科の授業では、自然現象をつかませる上で、視覚的な教材の効果は非常に大
きいという感想を聞いている。また、教材についても、非常に効率的に作成す
ることができるという感想を聞いている。さらに、教師が本来やるべき業務に
携わることができるようになったという感想も聞いている。

【中村委員】

○ デジタル教科書を普及させる協議会の設立を民間有志で進めているところで
ある。デジタル教科書といっても、我々は、教科書の教材だけではなく、端末
機、それらをつなぐトータルなネットワーク環境、アプリケーションのシステ
ムを含むトータルな学習環境を意味している。

○ 例えば端末のスペックについても、大きさ、軽さ、強さ、画像の精細度、通
信機能について考えていくべきと思う。また、それ以上に、そしてそれ以前に
トータルな教育環境をどうするのか、学習効果はどう検証するのか、教員の負
担、教育法はどのようなものかを広く考えていく必要がある。そのため、文部
科学省との連携、現場の先生方等の考え、経験を広く取り入れながらオープン
に進めていきたい。

○ 知的財産計画の骨子にもデジタル教科書の普及について記述されており、こ
の分野は、教育、成長戦略としても、今注目されている。

【西野委員】

○ 学校教育の情報化において、3つの大事なステージがあると考えている。1
つめは、授業で有効に使われるような情報機器を開発し選定したりして、学校
に導入すること。2つめは、導入した情報機器がうまく授業で有効に使われるよ
うになること。それには、先生方が授業で有効に使うためのスキル、これが必
要である。3つめは、それらの情報機器を、今度は児童・生徒が有効に利用する
ことができるようになることであり、すなわち情報教育である。

○ 2005年に米国の小中高等学校へ、情報教育、教育の情報化の視察に行ったが、
全教室に電子黒板やプロジェクターがあり、有効に授業に使われていた。情報
教育もとても進んでいた。最近、ヨーロッパ、韓国、オーストラリア等と比較
すると、日本の教育の情報化と情報教育は大変遅れていると感じざるを得ない。

○ 九州工業大学では、平成19年度から情報教育支援士養成講座を実施している。
これは、学校の情報化に資する人材を育成するとともに、実際に情報教育の授
業に入っていき、教員のもとで生徒に指導するものである。課題としては、卒
業した情報教育支援士がなかなか有効に働けないという現実があることだ。財
政的な問題があり、市の教育委員会等々で雇用できないという問題もあると思
う。加えて、学校現場のほうから、それが声として上がってこない。地域の教
育CIO、あるいは学校のCIOという方々がうまく機能していないということが背
景にあるのではないか。

【野中委員】

○ 日本の学校、特に小中学校ではICT活用も情報教育も、普及・定着にはほど
遠い状況にある。現在は、先生方の努力や工夫によって、かなりの部分依存し
ている状況にあり、今後総合的に条件整備をしていくことは非常に重要な課題
である。例えば、韓国では2001年にインフラの整備が終わっており、その後普
及に4~5年かけている。英国では、2003年ぐらいから電子黒板の導入を始め、
どこの教室でも電子黒板を使っていたが、教員が手間無く活用できるICTの環境
整備を行ってきた。また、相当な予算をつぎ込んでいるという実態がある。一
斉授業をするときに先生が手間を感じるようでは、普及はあり得ない。

○ 全国学力・学習状況調査における学校質問紙で、ICT活用の状況について問
うた項目がある。インターネットを活用した授業を行っていない学校の割合が
非常に低い。小学校に比べ、中学校はもっと低い。例えば地域間格差という話
もあり、同じ整備がされていても学校間の差もある。教員が使いやすいかとか、
今までやっている授業スタイルに馴染んでいるかというところからスタートし
ない限り、その後の整備、活用の促進には至らないのではないか。

○ 大ざっぱであるが、ICT環境が整えば活用頻度が上がるというデータは出て
いる。活用頻度が高くなると、国語・算数の学力が若干上がるというデータも
ある。ただICTを活用しただけではだめで、ICTを活用する先生の授業力や、そ
の活用の仕方によるので、複合要因であって、はっきりとは出ないのであるが、
そのようなデータは出ている。

○ 提示用コンテンツとしてのデジタル教科書は、学力向上に寄与するだろう。
日本で多く行われている学習スタイルは、一斉指導の次はおそらくグループ別
学習である。学習指導要領の中に教科におけるICT活用、情報教育の話が盛り込
まれたが、「教育の情報化に関する手引」は、ほとんどの先生に読まれていない
のではないか。学習指導要領の総則あたりで、体系的にこういう学年でこうい
う能力を育てるということを明示すべきではないか。

○ 教員の育成と同時に、教育委員会で整備を担当する指導主事、あるいはCIO、
CIO補佐官の人材育成、ICT支援員の活用が重要。また、韓国では、KERISという
機関があって、継続的に調査・分析をしたうえで、次の展望を出している。英
国にはBECTAという組織がある。ぜひ国として機関を設置して、継続的に行わな
いと、この問題は解決しないのではないか。

【堀田委員】

○ 教員は、子供たちにもっと勉強をわかってほしいと思っているので、さまざ
まな教え方の工夫をしており、ICTにも非常に期待している。ICTをあまり使っ
ていない現場の教員についてマスコミ等が責めたてることが多いが、物が導入
されていないので使いようがないし、使う機会があまりない。一般的に、パソ
コンを使えない先生は、もはやほとんどいない。授業で便利なものが十分に入
っておらず、使うチャンスが十分に保証されていないことが問題である。

○ 教員の多忙化との関係では、ICTも教員から見れば多くのことのうちの1つで
ある。ICT活用を重点化するための戦略が必要であると思う。

○ 我が国は教科書の質が非常に高い。これは世界的に見た日本の大きな特徴で
ある。良質な教育内容をきちんと子供たちに習得させるということ自体は、否
定されるべきことではない。教員がそのことを特に義務教育において行うこと
について、もっとICTがバックアップできるような形にならなければならない。

○ 教員の教え方を変えるようにと、外から強く言われることが多いが、教員は
なかなか同調しにくいのではないか。むしろ現在の学校文化を助けるところで、
ICTを活用し、そこから新しい教え方にスライドしていくような戦略をとらなけ
ればならないのではないか。

○ 日本では130年間ずっと、一斉授業を中心に進めてきた。これは日本の強味。
その教育技術が教師にはあり、これに役に立つICT教材をインストールしていく
べきではないか。

○ 英国はどちらかといえばICT活用に成功した国だが、ICTが授業で使われてい
くには5段階ある。最初は、慣れる・親しむ、そして活用してみる、それから
初めてインテグレーションが起こって、授業の見直しが起こって進化していく。
最初から進化を追うのではなく、馴染む段階がどうしても必要である。

○ 今までの日本の教員の授業スタイルを最初はあまり崩さず、指導時の提示用
のデジタル教科書から入り、同じものを子供も使える、家庭でも使える、とい
うプロセスをとりながら、さまざまな外部情報をその教科書にリンクしていく
ことにより、高品質な教科書を持っている我が国の強みを生かしていけるので
はないか。

○ 教員養成の学部では、1段階目(慣れる・親しむ)、2段階目(活用してみる)
ぐらいの基本的な事項は体験してから教員になってほしい。そうした制度も検
討していくべきではないか。

【三宅副座長】

○ 東京大学の大学発教育支援コンソーシアム推進機構は、大学が知を発信して
いく場所であるならば小中高等学校の教育にも資するような努力をすべきでは
ないか、ということで創設された。大学知を活用できるよう現場の教育の質を
上げるためには、教員が説明するのではなく、ICTも活用して、学習者自身が知
識を構成していくような学びの場をつくり出してゆく必要がある、そのために、
インターネットを駆使した情報の受発信ができる等ICTをきちんとした形で学
校の中に入れ、常に活用できる状態に整えておく必要があると考えている。

○ これは、世界的に希求されており、3月に米国で出されたオバマ大統領の教
育リフォーム、Reforming American Education Powered by Technologyでも重
視されている。提言の骨子の一つは子どもたちが学校をきちんと修了して社会
に出、活躍できるようにしようというもの。学校を出た先の社会では、ICTを十
分に使いこなしている人々が改革を牽引している。学校ではそのような高度な
リテラシーの獲得を目指すと同時に、今ICTに関しては普通の人たちが使ってい
るのと同じような形で使えることが社会の中で役に立つ最低条件なのだから、
学校では最低でも普通にツールとしてICTがきちんと使える、特にインターネッ
トがきちんと使える、という状況をつくり、学校を出たときにはそのような力
が備わっているようにしよう、というものである。この基準に合わせて考える
なら、日本の現在の学校におけるインターネット環境を大幅に変える必要があ
る。

○ ヨーロッパでは、Assessment & Teaching of 21st Century Skillsというプ
ロジェクトが、企業とOECDを巻き込んで行われており、インターネットがつな
がっていることが、世界的に、全体として教育の質を上げる基盤と考えられて
いる。

【宮澤委員】

○ 15年前に比べ、機器は相当ふんだんに提供され、情報も非常に多く提供され
るようになったが、現場の教員にとって、よい機器、よい学習環境、よいコン
テンツの取捨選択が非常に難しくなってきたように思う。

○ 情報過多の中で、きちんととらまえて活用できる教員と、その情報の中に飲
まれてしまう教員の2つに分かれてしまっているのではないか。

○ 教育の情報化は一体何のためにやるのか、ぜひ戦略・戦術を明確にしていく
べき。

○ 国としてどのような人材をつくるかを明確にした上で、何を使ってどのよう
にするかという具体的な方策を導くべきと考える。

【村上委員】

○ デジタル化の範囲については、例えば小学校の期間には一切デジタル機器を
教育現場には持ち込まず、中学校から一気に進めるべきではないか。そのかわ
り高校以上についてはできるだけ早く、コストのことを考えるのであれば、紙
の教科書をなくしてしまうというようなデジタル化の全面展開をやるような、
メリハリのきいたアプローチが重要ではないか。

○ インターネットは、コンテンツについてはほとんど何でも入手できるすべを
我々に与えてくれたが、何をどのように学ぶのかという、学び方のオペレーテ
ィングシステムについては与えてくれるものではない。この学び方のOSという
べきものは、おそらくデジタルであるよりも、最初はアナログの方がよいので
はないか。

○ 他方、校務の情報化は、小学校も含めて広範にデジタル化を推進すべきと思
う。

○ 教科書、教材のデジタル化、あるいは校務の支援システムを効率的に推進し
ていくために、クラウドコンピューティング技術の活用が不可欠。セキュリテ
ィー水準の高い教育クラウド、SaaSを活用した教育、校務にかかわる標準化さ
れたアプリケーション、標準化された教科書、教材コンテンツの共同利用が、
費用の削減というところで大きく寄与するはず。端末については、ワイヤレス
接続は必須だが、できるだけ汎用的な端末、皆が使っている端末を標準端末に
するのがよいのではないか。

○ 学校教育の情報化には、教職員、児童・生徒、保護者をつなぐ、安全・安心
な個人認証基盤の確立がかぎになってくる。新しい国民ID基盤の確立に向けて
の動きと歩調を合わせたような取り組みが大事ではないか。

○ 学校教育のデジタル化、校務の情報化の推進のかぎを握るのは、児童・生徒、
教員、教育委員会、保護者に対する適切なICTリテラシー教育、研修である。こ
の役割を担い、システムアドミニストレーションの役割を担う、ICT支援員
のような機能については、職種として、全校に悉皆で、しかも恒常的に入れて
いくことがかぎになる。

○ デジタル化を進めていくため、従来の一方向の放送型の学習から、双方向の
対話型の学習にするという、非常に大きなパラダイム転換を実現していくには、
米国のBECTAや韓国のKERISのように、デジタル時代の教育のICT化の戦略的な推
進について責任を持ち、カリキュラムの開発、評価、教師向けの研修、ニーズ
の吸収等を専門的に実施する執行機関が必要ではないか。

○ 以上、第一回なので、あまり資源的な制約を考えないで提案を行った。

【若井田委員】

○ 世田谷区は、平成20年度から23年度までの「世田谷区教育の情報化推進計画」
を進めている。この推進計画は、ICTを活用した教育活動の充実と学力の向上、


地域とともに進める教育の情報化、これらすべてを支えるセキュリティーの確
立という4つの目標を設定して、進めているところである。

○ 世田谷区では、平成19、20年度で、教員1人1台のパソコン環境を整備した。
また、それらをすべて校務ネットワークシステムで結んでいる。教育ネットワ
ークと別途に専用線を導入して、独立したネットワークとして稼働している。
これらに対応するヘルプデスクを整備した。

【安西座長】

○ 明治以来の追いつけ追い越せ、大量生産を、日本でリードしてきたのが、特
に初等中等教育であった。しかし、大きな時代の転換があり、これには特にイ
ンターネットの影響が大きかったと思うが、多極化、グローバル化の時代にな
り、これからは日本で生きていく人たちが、一人ひとり、自分でものを考えて、
自分で行動していかなければならない時代に入ってきた。それには、今まで成
功してきた初等中等教育が成功に浸ることなく、これからの日本の時代のあり
方を見すえて、変わっていかなければならないのではないか。

○ このためには、子供たちそれぞれに受け身の教育、学びではなく、もちろん
双方向の学習も含め、これからの時代の学びのあり方があり、ICTはそのために
非常に重要な、不可欠の道具になってくるだろう。また、情報化を進めるので
あれば、一方で身体、社会、責任、軋轢、人の心の痛みがわかることなど、バ
ランスをとっていく必要がある。

○ ネットをベースにするということになると、子供たち一人一人の伸びる教育
ということに目が行くが、鍛える教育も必要である。その繰り返し教育、あるい
は鍛える教育のミニマムラインをきちんとつくって、それを全国できちんとでき
るかどうかということも、考えていただきたい。

○ これまで、デジタル化あるいはICT導入への移行は待ったなしという意見と、
現場の教員あるいは日本の今の教育のあり方にかんがみ、一歩一歩着実にやって
くべきとの意見があったと考えている。

【陰山委員】

○ ICTの教育を進める上において、ハードウエア、ソフトウエア等について、
民間企業に頼る部分が大変大きい。メーカーと学校現場とがうまくWin-Winの関
係で流れていくガイドラインがつくれないものか。

【安西座長】

○ 個別企業あるいは製品開発等々を聞くことも重要であると思うので、第2回
(5月18日)、第3回(5月21日)は、非公開のヒアリングとしたい。

【鈴木副大臣】

○ ソフト、ヒューマン、ネットワークを含むハードウエアがきちんとかみ合い、
トータルデザインの中で具体的なアクションプログラムを示していくことが重要。
皆さんと共に、日本の児童生徒の学びをイノベートしていくというゴールに向か
ってベストを尽くしていきたい。   (以上)