国立国会図書館 レファレンスNo.712(2010年5月)就学義務制度の課題2010-05-31

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/201005_712/071202.pdf

就学義務制度の課題(要約) 江澤和雄

1 わが国の義務教育は、学校への就学を原則とする就学義務制度を採用してい
るが、学校をめぐる様々な問題が注目されるなかで、今日、不登校の問題、障害
を持つ児童生徒の就学先の決定、それに外国籍の子どもの就学をめぐって、この
制度の運用や改善に関わる課題が提起されている。就学義務から、家庭での教育
を認める教育義務へ転換する必要性も説かれている。

2 就学義務制度は、明治以来、わが国の義務教育を支えてきた。学校の役割が
問われ、教育改革が論議されたときにも、また不登校の問題への対応をめぐり学
校外での学習活動に学校への出席扱いが認められたときにも、就学義務の原則は
維持されてきた。しかし、例外的措置等を認めることで運用されてきた就学義務
制度は、そのあり方の見直しも含めた諸課題に直面している。

3 不登校の問題への対応においては、IT等を活用した家庭での学習活動が、学
校復帰をめざすという条件付きではあるが、学校への出席扱いとして公認される
ところまできている。また、障害を持つ児童生徒の就学先の決定に関しても、彼
らの教育ニーズに応えるものとする観点から、その運用等の見直しが図られてき
ている。さらに、就学義務がないとして、希望する場合にしかわが国の学校教育
を受けられない外国籍の子どもに対しても、自治体における様々な取組みが広が
ってきており、義務教育を保障する制度的な対応が望まれている。

4 不登校の問題においては、ホームスクールや学校選択制のあり方と結び付け
た議論だけでなく、学校への出席扱いが認められる民間施設等での学習活動に対
し、どのような支援を行っていけるかが、今後の課題となる。また、障害を持つ
児童生徒の就学については、新たに始まった特別支援教育において、障害を持つ
児童生徒のニーズに的確に応えるとともに、地域や社会をともに形成する主体と
して育成する観点が求められている。さらに、外国籍の子どもの就学を保障する
ためには、彼らを受け入れ得る学校づくりや地域づくりを学校や地域がどのよう
に行っていけるかが課題となる。

5 これらに共通する課題としては、現状把握の必要性、地域における取組みの
強化、国際的な動向もふまえた義務教育就学保障の実現、などが挙げられる。と
くに、現状の正確な把握は、問題解決への早期の対応を可能にするものとして重
要となる。また、地域における取組みの蓄積は、国の施策や法制度の改善への土
台として重視される。

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