マルチメディアデイジー教科書の普及促進を求める意見書 福岡県議会2010-06-23

http://www.gikai.pref.fukuoka.lg.jp/honkaigi/kaketsu-22062405.html

マルチメディアデイジー教科書の普及促進を求める意見書
(平成22年6月23日)

 平成20年9月に「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及
の促進等に関する法律」、いわゆる教科書バリアフリー法が施行された。
 この教科書バリアフリー法の施行を機に、平成21年9月より、財団法人日本
障害者リハビリテーション協会(リハ協)がボランティア団体の協力を得て、通
常の教科書と同様のテキストと画像を使用し、デジタル化対応することで、テキ
スト文字に音声をシンクロ(同期)させて読むことを可能にした「マルチメディ
アデイジー版教科書」(デイジー教科書)の提供を始めた。また文部科学省は、
平成21年度より、発達障害等の障害特性に応じたデイジー教科書などのあり方
やそれらを活用した効果的な指導方法等について、実証的な調査研究を実施して
いる。
 デイジー教科書は、平成21年12月現在で約300人の児童生徒に活用され、
保護者などから学習理解が向上したとの効果が表明されるなど、普及推進への期
待が大変に高まっている。
 しかし、デイジー教科書は教科書無償給付の対象となっていないことに加えて、
その製作は、多大な時間と費用を要するにもかかわらず、ボランティア団体頼み
であるため、必要とする児童生徒の希望に十分にこたえられない状況にある。実
際にリハ協が平成21年度にデイジー化に対応できた教科書は、小中学生用教科
書全体の約4分の1にとどまっている。
 このような現状を踏まえると、まず教科用特定図書等の普及促進のための予算
のさらなる拡充が求められるところだが、平成21年度の同予算が1億7,20
0万円に対し、平成22年度は1億5,600万円と縮減されており、これらの
普及促進への取り組みは不十分であると言わざるを得ない。
 よって、国におかれては、必要とする児童生徒、担当教員等にデイジー教科書
を安定して配布・提供できるように、その普及促進のための体制の整備及び無償
配布や作成費支援への予算措置を講ずることを要望する。
 以上、地方自治法第99条の規定に基づき、意見書を提出する。

  平成22年6月23日

福岡県議会議長 田中 秀子

衆議院議長    横路 孝弘 殿
参議院議長    江田 五月 殿
内閣総理大臣   菅  直人 殿
文部科学大臣   川端 達夫 殿

デジタルネットワーク社会における出版物利活用推進懇談会報告(案)2010-06-23

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/shuppan/30700.html

デジタル・ネットワーク社会における出版物の
        利活用の推進に関する懇談会報告(案)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000071341.pdf

【10】障がい者、高齢者、子ども等の身体的な条件に対応した連携を増進する。

(1)電子出版とアクセシビリティ

電子出版は、視力低下をきたした高齢者の読書、子どもの教育を助けるとともに、
視覚障がい、学習障がい等のある人々の出版物へのアクセスを飛躍的に拡げる可
能性を持っている。
電子出版においては、文字の拡大等を簡単に行うことができ、高齢により視力が
低下した人々の読書習慣を支えることが可能であり、こうしたことから、米国に
おいては、電子出版が高齢者の支持を獲得しつつある。
我が国では、点字図書館、国立国会図書館、一部の公共図書館、ボランティアグ
ループなどでDAISY録音図書( Digital Accessible Information SYstem )
が制作されてきた。今後は、音声と文字、動画等を同期をとって扱うSMILE
( Synchronized Multimedia Integration Language )形式により、読字障がい
等の発達障がい児の情報利用を始め、子どもの読書、教育への活用の拡大が期待
される。
また、政府にあっては、21世紀にふさわしい学校教育を実現できる環境整備の
ため、デジタル教科書・教材の普及促進に向け、必要な取組を計画的に実施する
ことが求められる。
障がいのない人々が紙の出版物と電子出版を選択することができるのに対して、
視力を失った視覚障がい者にとって、「紙の本は本ではない」現実がある。
このため、視覚障がい者にとって電子出版の普及は、障がいのない人々とは比較
できないほど大きな意味がある。
例えば、正確でなくともよいから本の概略だけを知りたい、より多くの出版物を
読みたい、障がいのない人々と同様に新刊が読みたい等、多様な視覚障がい者等
のニーズに応えるには、電子出版についてテキストデータの音声読み上げ
(TTS;Text to Speech)を可能とする環境の構築や、テキストデータの読み
上げの高度化が重要と考えられる。
電子出版のアクセシビリティを高めることは、情報バリアフリーの実現の観点か
ら重要であるのみならず、電子出版とデジタル・アーカイブに関する技術開発、
他の様々な応用分野におけるイノベーションを促進し、社会全般にも裨益が波及
するものと考えられ、こうした観点からも積極的な取組が期待される。--略