社団法人日本図書館協会 障害者用資料製作のためのデータ利用提言書2011-02-03

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jla/kenkai/20110222.html

2011年2月3日

デジタルコンテンツの障害者等へのアクセシビリティの確保と、図書館等におけ
る障害者用資料製作のためのデータ利用への配慮について

社団法人日本図書館協会

1 提言の趣旨

 電子書籍等デジタルコンテンツは情報障害者にとって、従来からの紙媒体の資
料に比べアクセシビリティ等の点で大きな可能性を持っており、その普及に大き
な期待をもっています。しかし、その規格・仕様によっては障害者の利用をまっ
たく排除してしまう可能性もあります。事実現在流通している電子書籍の大多数
は視覚障害者等が使えないものとなっております。
 「障害者の権利に関する条約」(以下に資料)の趣旨からも明らかなように、
電子書籍の流通と利用の円滑化を検討するに当たっては、障害者等情報入手に困
難な者への配慮を最初から念頭に置いて行わなければならないと考えます。特に、
その規格・仕様・方法等を検討する場合に、ある程度固まった段階でアクセシビ
リティへの配慮を行うのは多大な経費・技術開発を必要とすることになり効率的
ではありません。最初から検討の重要視点とされるべきです。
 障害者のアクセシビリティを不可能にするような技術的保護手段に反対します。
デジタル著作権管理(DRM)が障害者のアクセシビリティを阻害してはならない
のです。(「障害者の権利に関する条約」30条を参照) 図書館では、今後電子
書籍を重要な図書館資料として扱うことになりますが、その利用者に障害者等が
含まれることはいうまでもありません。電子書籍はこれら利用者を含むすべての
国民が利用できるものでなくてはならないと考えます。

2 具体的提言

(1) 電子書籍を障害者自らが購入したり利用したりできるようにしてください。
特に、電子書籍自体のフォーマット、購入方法、利用方法、再生機や再生ソフト
のアクセシビリティ等、流通・利用のあらゆる段階で配慮が必要です。
 技術的保護手段により障害者の利用が困難にならないよう、適切な配慮をして
ください。

(2) 本来は(1)の実現を図り、あらゆる著作物が公表されるときに障害者のアク
セスにも配慮されていることが必要ですが、障害の個別性や目まぐるしく変化す
る技術の中で、障害の有無に関係なく絶対的にアクセス可能なものを提供するこ
とが難しい場合もあります。
そこで図書館等においては著作権法第37条第3項による障害者用資料の製作等の
方法で障害者の利用を保障することとなります。その場合に電子書籍からのテキ
ストデータの抽出等、障害者資料製作に有効なデータを利用できるようにしてく
ださい。
同様に、著作権法第37条の2による映像著作物への字幕・手話挿入ができるよう
配慮してください。

資料:障害者の権利に関する条約(抜粋)
第9条 アクセシビリティ
1 締約国は、障害のある人が自立して生活すること及び生活のあらゆる側面に
完全に参加することを可能にするため、障害のある人が、他の者との平等を基礎
として、都市及び農村の双方において、物理的環境、輸送機関、情報通信(情報
通信技術〔情報通信機器〕及び情報通信システムを含む。)、並びに公衆に開か
れ又は提供される他の施設〔設備〕及びサービスにアクセスすることを確保する
ための適切な措置をとる。 このような措置は、アクセシビリティにとっての妨
害物及び障壁を明らかにし及び撤廃することを含むものとし、特に次の事項につ
いて適用する。
(略)
(b) 情報サービス、通信サービスその他のサービス(電子サービス及び緊急時サ
ービスを含む。)
2 締約国は、また、次のことのための適切な措置をとる。
(a) 公衆に開かれ又は提供される施設〔設備〕及びサービスのアクセシビリティ
に関する最低基準及び指針を策定し及び公表すること、並びにこれらの最低基準
及び指針の実施を監視〔モニター〕すること。
(b) 公衆に開かれ又は提供される施設〔設備〕及びサービスを提供する民間主体
が、障害のある人にとってのアクセシビリティのあらゆる側面を考慮に入れるこ
とを確保すること。
(略)
(f) 障害のある人が情報にアクセスすることを確保するため、障害のある人に対
する他の適切な形態の援助及び支援を促進すること。
(g) 障害のある人が新たな情報通信技術〔情報通信機器〕及び情報通信システム
(インターネットを含む。)にアクセスすることを促進すること。
(h) 早い段階において、アクセシブルな情報通信技術〔情報通信機器〕及び情報
通信システムに関する設計、開発、生産及び分配を、それらを最小の費用でアク
セシブルにするようにして促進すること。
第30条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加
1 締約国は、障害のある人が他の者との平等を基礎として文化的な生活に参加
する権利を認めるものとし、次のことを確保するためのすべての適切な措置をと
る。
(a) 障害のある人が、アクセシブルな様式を通じて、文化的作品へのアクセスを
享受すること。
(b) 障害のある人が、アクセシブルな様式を通じて、テレビ番組、映画、演劇そ
の他の文化的な活動へのアクセスを享受すること。
(c) 障害のある人が、劇場、博物館、映画館、図書館、観光サービス等の文化的
な公演又はサービスが行われる場所へのアクセスを享受し、また、可能な限度に
おいて国の文化的に重要な記念物及び遺跡へのアクセスを享受すること。
2 締約国は、障害のある人が、自己の利益のためのみでなく社会を豊かにする
ためにも、創造的、芸術的及び知的な潜在能力を開発し及び活用する機会を有す
ることを可能とするための適切な措置をとる。
3 締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法令が文化的作品への障害
のある人のアクセスを妨げる不合理な又は差別的な障壁とならないことを確保す
るためのすべての適切な措置をとる。
(略)

以上

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