アスペルガー症候群等の被告人への対応についての意見書 2012/08/282012-08-28

大阪地裁で判決のあったようなアスペルガー症候群等の被告人への対応について
の意見書
一般社団法人 日本発達障害ネットワーク
理事長 市川 宏伸                  2012年8月28日

---------------

8月28日開催の発達障害の支援を考える議員連盟に「大阪地裁で判決のあったよ
うなアスペルガー症候群等の被告人への対応についての意見書」を提出したそう
だ。

http://jddnet.jp/index.files/archives2012/pdf/20120828_ikensho.pdf

大阪地方裁判所において、アスペルガー症候群と精神鑑定された被告の殺人事件
で、検察官の求刑を超える懲役20年の判決が言い渡されました。この判決文を読
むと、被告人は十分な反省をしておらず、アスペルガー症候群に対応できる受け
皿が何ら用意されておらず、その見込みもないという状況のもとでは再犯のおそ
れが強く心配されるので、許される限り長期間刑務所に収容することで内省を深
めさせる必要があり、そうすることが社会秩序の維持に資するとして、有期懲役
刑の上限である懲役20年に至ったとされています。この判決は、アスペルガー症
候群をはじめとする発達障害者に対する差別及び、刑罰という点で大きな問題を
抱えており、到底許されるものではありません。当事者、家族、支援団体などか
らなる日本発達障害ネットワークは、今回の件に関し、発達障害者の特性が十分
に理解され、司法の場において適切な対応がなされるよう、下記の点について提
案いたします

I 適正な判決が行われるための対応

1.捜査段階における心理・福祉等の専門家等による立会い
発達障害の特性に配慮した適切な方法による情報の提供等が確保されて、はじめ
て黙秘権や弁護人選任権の告知が機能すると考えます。そのためには、本人の思
考・行動様式を十分に理解できる関係者が立会い、情報提供することは取り調べ
の適正さを確保するためにも是非とも必要です。また、本人の供述の内容を正確
に伝えるためにも、本人の思考・行動様式を十分に理解できる関係者が立会い、
その真意を伝えることは有効です。
この専門家は通常の刑事被疑者の持つ黙秘権など「刑事手続き上の権利」につい
て適切な知識・認識を保持していることが前提ですが、この前提が存在するなら
ば、心理・福祉関係者に限定せず、教育・医療関係者等支援者であっても差し支
えないものと考えます。また、この専門家については、本人との接見に望む場合、
通常の弁護人の接見と同様の条件が認められる必要があるものと考えます。
発達障害者の捜査段階における情報提供及びコミュニケーション確保の保障の観
点から専門家および関係者の立会いの仕組みを作っていただきたいと思います。

2.取り調べの可視化の必要性
取り調べの実際のやり取りが残されていることは、発達障害者の論理が分かりや
すく、事件の本質が理解されやすいものと思われます。そのためには、事件の内
容について捜査官と本人とのやりとりのすべての場面が録画される必要があると
考えます。特に取り調べ初期のやり取りの可視化が重要です。それは、取り調べ
が進んでからのやり取りでは、本人の語る内容が修飾されてしまっている可能性
が高く、事件の本質が理解できなくなっている可能性があるからです。
捜査段階における適正な手続きを担保する観点から、取り調べの全行程が適切に
録画され、その記録の下に公正な対応がなされるべきであると考えます。

3.公判段階における適正な手続きの確保
公判段階において、適正な手続きの確保がなされないままに自白がなされた場合
には、証拠として採用されない仕組みが必要であると考えます。
また、発達障害者が被告人や証人として、質問や尋問を受ける場合には、発達障
害の特性に対応した適切な情報提供やそのために必要な専門家等の支援が受けら
れるような仕組みを創設していただきたい。

4.司法・警察関係者の発達障害への理解の促進
司法関係者(裁判官、検察官、弁護士、裁判員等)及び警察関係者などの発達障
害についての無知・無理解によるさまざまな問題が指摘されています。これらを
改善するために、発達障害の特性、障害に配慮したコミュニケーション方法、関
係の構築や支援の基本などについての理解等を促進する研修の一層の充実を図る
必要があると考えます。

II 事件を起こした被告への対応

1.受刑中の発達障害者の特性に応じた処遇プログラムの提供
独特の考え方や行動様式を持つアスペルガー症候群の受刑者には、長期間の特性
に合ったコミュニケーション方法や心理的アプローチの支援が必要です。発達障
害者は相手の感情や周囲の空気を読み取るのが苦手で、自ら深く反省する気持ち
があってもそれを表現することがうまくできないことがあります。
その障害特性に合った、内省へのアプローチや処遇プログラムが刑務所や少年院、
児童自立支援施設等で提供されることが必要です。また、精神医学的治療が必要
であれば適切な医療面での配慮も必要であると考えます。

2.専門的な医療施設の設置
英国ではブロードモア病院など高度治療施設、中等度治療施設などが用意されて
います。殺人など重大な罪を犯した発達障害児者については、処罰よりも専門性
ある心理カウンセリングなどを集中的に行える、医療観察法病棟をイメージした
専門施設での一定期間の対応が必要と考えます。一定期間を経過した者、あるい
は重大とは言えない罪を犯した者については、専門性を有した福祉施設での対応
により、社会復帰を促進していただきたいと考えます。そのために、国立施設と
してすでに罪を犯した発達障害者の支援を行っている国立コロニーのぞみの園、
あるいは国立障害者リハビリテーションセンター及び国立精神・神経センター等
の機能の一層の活用を是非検討していただきたい。

3.社会復帰を想定した支援体制の構築
発達障害者については、矯正施設在所中に社会復帰に向けた社会生活能力の向上
に向けた支援や出所後の生活を想定した関係者の連携によるマネジメントが不可
欠です。また、退所者には矯正施設や保護観察所や更生保護施設の司法分野と福
祉分野が“地域生活定着支援センター”等を活用しながら支援する形が整いつつ
あります。このような社会復帰を想定した支援体制がどの地域においても構築で
きるよう、罪を犯した発達障害者を受け入れる地域生活定着支援センター及び発
達障害者支援センター、グループホームや福祉施設等の充実をお願いします。

以上

パソボラ肢体不自由関連特別研修案内/戸山サンライズ 2012/8/27-282012-08-28

パソコンボランティア指導者養成事業の特別研修

肢体不自由関連特別研修の日程が決まりましたのでご案内をさせて頂きます。ま
た、今回はコミュニケーション支援技術研究会との共催になります。

内容につきましては、肢体不自由者へのICT支援について、講義、実習、ロール
プレイ、ケーススタディ等の体験を通して学ぶ。という内容になります。

開催日時:平成24年8月27日(月)から8月28日(火)

会場:戸山サンライズ(東京)

受講をご希望の方は、以下のページより、実施要綱、研修科目の概要、実施予定
をご確認の上、研修申し込みフォームよりお申し込み下さい。
http://www.jsrpd.jp/ic/pcv/

研修日程につきましては、以下のページ「実施予定」をご覧ください。
http://www.jsrpd.jp/ic/pcv/schedule.html

皆様のご参加をお待ちするとともに、周知・広報のご協力をお願い申し上げます。

お問い合わせ先
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 情報センターパソボラ事務局
E-mail:pcv@list.jsrpd.jp TEL:03-5273-0796 FAX:03-5273-0615