2012.09.20 第26回 DiTT勉強会のご報告 -竹元賢治氏・近藤武夫氏-2012-09-20

http://ditt.jp/report/

2012年9月20日、山王健保会館2階会議室にて、第26回デジタル教科書教材協議会
勉強会を開催いたしました。今回は竹元 賢治氏(インテル株式会社 イノベー
ション事業本部教育事業統括部 教育事業開発部長)と近藤 武夫氏(東京大学
先端科学技術研究センター 人間支援工学分野・講師)にご登壇頂きました。竹
元 賢治氏には、「21世紀型教育をビジネスとして語ろう」というテーマで、近
藤 武夫氏には「障害のある児童の学習の現状と、有効なコンテンツ・機器」と
いうテーマでお話を頂きました。

近藤武夫氏 ご講演要旨-
平成14年の文科省の「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童
生徒に関する全国実態調査」では、通常学級での発達障害のある児童は、全国の
小中学校に6.3%いるとされている。人数を推計すれば66万人となる。また,6.3
%のうち最も大きな比率を占める障害は学習障害であり,4.5%を占める。
学習障害のある児童生徒には,目は見えていても,文字を見て読むことに大きな
困難のある児童が含まれる。彼らは、学習を行う以前に,紙に印刷された教科書
が主な教材として使われている教室には参加することが難しい。そのため,「印
刷物障害(=紙の印刷物を読むことに困難のある障害)」に含められている。ま
た,学習障害は外見上からは障害あることがわかりづらいため,「見えない障害」
とも言われる。結果,障害のために勉学が遅れていることを本人の甘えであると
見られてしまったり,適切な支援を受けられないままに過ごしている子どもたち
も多い。こうした児童生徒には,学校からドロップアウトせざるを得ない現状が
ある。
障害のある子供たちの学びを支える技法としてテクノロジーの利用をして、支援
していく必要がある。デジタルはアナログな教材等とは違い,コンテンツの提示
方法を調整したり,変換することも行いやすい。そのため、障害を持つ個々の児
童に合わせて利用できるところもひとつのメリットとなっている。障害のある子
どもとない子どもがともに学ぶインクルーシブ教育とそこで合理的配慮が提供さ
れるこれからの時代に不可欠なものとなる。代表的な支援技術デバイスの持つ機
能例として、「音声で読み上げる」、「文字や色などを読みやすく調整する」、
「視覚的な注意をガイドする」、「文章を視覚的に構造化する」、「音声で文字
を入力する」などがある。
実例として、東京大学が運営しているDO-IT JAPANで、障害を持つ小学生に対し
て、テクノロジーによる配慮がない場合とある場合でテストを行い,成績を比較
した。結果は、配慮なしの場合よりも配慮がある場合で、点数が2倍以上,偏差
値でも20以上の向上が見られた。この事から、発達障害のある子供に対して技術
を使って支援していくことは、学びに困難を感じている多くの子どもたちの学力
を底上げすることにもつながる。日本の国力のボトムアップにも繋がっていくだ
ろう。
しかし現状は、教育の現場では障害児へのテクノロジー利用は一般的に認められ
にくく,支援につながっていない。海外(特にアメリカ)での読み書き障害児へ
向けた教育現場でのテクノロジー利用の現状と、日本の現状には大きな格差があ
る。また、高校入試や大学入試でもそうした配慮が得られるように小学校から大
学まで一貫した支援が必要である。