「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 (第1回) 議事録2015-07-04

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「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第1回) 議事録

1.日時 平成27年5月12日(火曜日)14時から16時まで

2.場所 文部科学省13F1~3会議室 東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題
1.教科書制度の概要について
2.「デジタル教科書」に関する課題について
3.自由討議
4.その他

4.出席者

委員 堀田座長、天笠座長代理、新井委員、井上委員、金子委員、黒川委員、神山委員、近藤委員、高梨委員、中川委員、東原委員、福田孝義委員、福田純子委員、毛利委員、山内委員

文部科学省 小松初等中等教育局長、徳久大臣官房総括審議官、伯井大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、浅田大臣官房総務課長、豊嶋生涯学習政策局情報教育課長、新津情報教育課情報教育振興室長、望月初等中等教育局教科書課長、宇高教科書課課長補佐

5.議事録

【宇高課長補佐】 定刻となりましたので、ただいまから「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の第1回会議を開催させていただきます。
 本日は、皆様お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。また、各委員の先生方におかれましては、この検討会議の委員の御就任を快くお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。この場をお借りいたしまして、お礼を申し上げます。
 本日は第1回の会議でございますので、座長の御紹介までの間、便宜的に私、教科書課で課長補佐をしております宇高が議事進行を務めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料といたしまして、議事次第の後ろに資料1といたしまして、「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の開催について」、資料2といたしまして、「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の運営について(案)という資料をつけさせていただいております。
資料3といたしまして、横の資料になりますけれども、我が国における教科書制度について。資料4といたしまして、「デジタル教科書」の位置付けに関する検討についてという資料。資料5といたしまして、今後のスケジュールを付けさせていただいております。
 また、会議場配付資料といたしまして、「デジタル教科書」に関する参考資料集、また紫色の冊子で『教科書制度の概要』という資料を配付させていただいております。過不足等ございましたらこの場で挙手いただければと思いますが、大丈夫でしょうか。
 続きまして、私から委員の皆様を御紹介させていただきたいと思います。御出席の皆様につきまして、資料1の委員名簿の順に御紹介させていただきます。
 まず、千葉大学教育学部教授、天笠委員でございます。
【天笠委員】天笠です。どうぞよろしくお願いします。
【宇高課長補佐】 株式会社ベネッセホールディングスベネッセ教育総合研究所理事長、新井委員でございます。
【新井委員】 新井でございます。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 一般社団法人全国高等学校PTA連合会理事、井上委員でございます。
【井上委員】 井上と申します。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 広尾学園中学校高等学校教務開発統括部長、金子委員でございます。
【金子委員】 金子と申します、よろしくお願いします。
【宇高課長補佐】 光村図書出版株式会社専務取締役編集本部長、黒川委員でございます。
【黒川委員】 黒川でございます。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 岐阜市立岐阜特別支援学校教諭、神山委員でございます。
【神山委員】 神山です。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 東京大学先端科学技術研究センター准教授、近藤委員でございます。
【近藤委員】 近藤と申します。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 荒川区教育委員会教育長、高梨委員でございます。
【高梨委員】 高梨でございます。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 日本マイクロソフト株式会社パブリックセンター統括本部業務執行役員文教本部長、中川委員でございます。
【中川委員】 中川です。よろしくお願いします。
【宇高課長補佐】 信州大学学術研究院教育学系教授、東原委員でございます。
【東原委員】 東原でございます。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 佐賀県教育委員会副教育長、福田委員でございます。
【福田孝義委員】 福田でございます。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 練馬区立光が丘春の風小学校校長、福田委員でございます。
【福田純子委員】 福田でございます。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 東北大学大学院情報科学研究科教授、堀田委員でございます。
【堀田座長】 堀田です。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 堀田委員には、本検討会議の座長もお願いしております。
 続きまして、つくば市教育局総合教育研究所副所長、毛利委員でございます。
【毛利委員】 毛利と申します。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 東京国際大学商学部教授、山内委員でございます。
【山内委員】 山内と申します。よろしくお願いいたします。
【宇高課長補佐】 あいにく本日は御欠席でございますけれども、このほかに尾上委員、若江委員にも、委員として御就任いただいております。
 これで委員の御紹介は終わらせていただきます。
以後の進行は、座長である堀田委員に司会をお願いしたいと思います。
 なお、議事に先立ちまして、堀田座長に座長代理の御指名もお願い申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございます。座長となりました堀田でございます。
 座長の代理は天笠委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
よろしくお願いいたします。
 私の方で、この後、一言御挨拶をさせていただこうと思うのですが、その前に小松局長に御挨拶をと思います。
【小松局長】 ありがとうございます。
 座長に御挨拶いただきます前に、一言申し上げさせていただきます。
 この会議においでいただきました趣旨をごく簡単に、端的に御説明をいたしまして、御挨拶に代えさせていただきます。
 まずは、先ほど事務局からも申し上げましたが、皆様方に、大変御多忙な中、本検討会議に加わっていただき、また御出席いただきましたことにつきまして、心から感謝を申し上げます。
 わざわざお忙しい中をお集まりいただきました原因の大きな要素は、一つは学校等、子供たちの教育を受ける機会、あるいはその質を担保する上で、教材というのは非常に重要かつ不可欠なものでございますが、最近の教育における情報化の進展という環境の変化、それから教育の在り方として、アクティブ・ラーニングということが、今、盛んに言われておりますけれども、そもそもその内容、方法の在り方が、大きく将来の子供たちに向けて変わっていかなければいけない。
こういう中で、デジタルという要素の果たす役割が非常に大きなものになってきております。主体的な学習の必要性ということの高まりを考えますと、学校現場で使用される教科書、教材についても、こうした時代の流れに対応していくにはどうしたらいいかということが急がれる課題になっている。これが一つでございます。
 それから、実際の政府の動きとしても、昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画や、知的財産推進計画2014の中でも、デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度の在り方等についてどうしていくのか、検討が求められているという情勢もございます。
こういった背景や情勢を受けまして、私どもとして検討していくに当たり、この検討会議においていろいろとお知恵をお借りしたいという趣旨でございます。
 そこで、この検討会議におきましては、教科書や教材の意義、特質、位置付けなどについて十分御留意をいただきながら、その中で、いわゆる「デジタル教科書」に関する様々な課題について、御議論いただきたいと思っております。
全体としては、およそ1年半ということを目途に考えておりまして、今後の方向性について、一定の取りまとめまでお願いしたいと考えております。
 教科書をはじめとして、その他の教材は日々学校教育の場で使用されておりますし、また国民の皆様の関心が非常に高いところでございます。その種類や用途も、実は極めて多岐にわたっておりまして、一様ではございません。こういったことを踏まえながら、お集まりの皆様方のこれまでの実践や幅広い知見に基づいて、率直な御意見、御提言を広く頂きたいと考えております。
 どうぞよろしくお願いを申し上げます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 続きまして、座長として御指名いただきましたので、一言だけ御挨拶させていただき、それから進行に入らせていただきます。
 改めまして、本検討会議の座長を拝命いたしました堀田でございます。よろしくお願いいたします。
今ほど小松局長からもお話がございましたが、我が国におきましては、この教科書、教科書制度は常に重要な位置付けになっているものと認識しております。そういう中で、アクティブ・ラーニング等をはじめとして、現在、子供たちにとって情報化に対応した学習環境がどのようにあるべきかということが議論されているところでございまして、この教科書というものを情報化にどう合わせていくのかというのは、非常に重要な課題となっております。
 しかしながら、そこにはたくさんの検討すべき要素がございまして、これらを前向きに、専門的に検討していくというのが、この検討会議のミッションだと考えております。
とりわけ教科書検定や採択、供給、あるいは既存のそういう制度、あるいは既存のほかの様々な教材等の関係、あるいはデジタルになったときの様々な配慮事項、あるいは紙との共存、あるいはコストの面など、様々な点で議論すべき点があると思います。
 今日から1年半ぐらいかけて、教科書とデジタルの関係について、様々な課題を洗い出すことにより、今後の教育の推進に進めていければと思います。
 検討すると課題がたくさん出てくることが予想され、課題がたくさん出てくると、若干、後ろ向きな意見も出てくるかもしれませんが、私としてはできるだけ前向きに進めていきたいと考えておりますので、前向きな検討をよろしくお願いしたいと思います。
 以上をもちしまして、御挨拶に代えさせていただきます。
 それでは進行に入りますが、最初に、議事の進め方等につきまして、議論に入る前に幾つか決定すべきことがございますので、資料2につきまして、事務局から御説明をいただければと思います。
【宇高課長補佐】 資料2について、私の方から御説明させていただきます。
 資料2の方で、検討会議の運営について(案)というものがありますが、そちらの方で、この会議の運営について定めております。
 まず、座長を堀田委員にお願いしておりますが、この座長が議長となりまして議事を運営していただくことになります。先に御指名いただきましたが、座長がやむを得ない理由によって会議に出席できない場合、そのときは座長があらかじめ指名する委員が座長代理として職務を代理することになっております。それにつきまして、先ほど御指名いただいた天笠委員にお願いしたいと思っております。
 会議の公開についてでございますが、原則としては公開、ただし、委員の皆様の専門的、学術的な審議、若しくは率直かつ自由な意見交換を確保する必要性があり、又は審議内容に個別利害に直結する事項に係る案件を含んでおり、座長が非公開にすることが適当と認める場合には非公開にすることができることとしたいと思っております。
 会議資料につきましても、原則としては配付資料をホームページ等へ掲載して公開することにしたいと思います。ただ、こちらも座長が非公開にすることが適当と認める場合には、その一部又は全部を非公開とすることができることとしたいと思っております。
 議事概要につきましても、議事概要等をホームページへの掲載等により公開したいと思っております。ただし、座長が非公開とすることが適当と認める場合には、その一部、又は全部を非公開とすることができるという規定とさせていただいております。
 こちらが案となりますので、よろしくお願いします。
【堀田座長】 ただいま本検討会議の運営につきまして、事務局から説明をしていただきました。この案のとおりに進めていきたいと思っているのですが、皆さん、御了承いただけますでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、このように決定させていただきます。
 決定する前に私がフライングで、どうしても早く座長代理を決めたくて天笠委員にお願いしまして、申し訳ございませんでした。何分、このように不慣れなものですから、今後とも御協力をよろしくお願いしたいと思います。
 これから議題に入りますので、カメラ、ビデオカメラによる撮影はここまでとさせていただきます。たいへん恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
 それでは、議題の1番目と2番目につきまして、まず教科書制度の概要と「デジタル教科書」に関する課題につきまして、配付資料がありますので、事務局の方から御説明をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

(事務局(望月教科書課長)より説明)

【堀田座長】 ありがとうございました。
 大変詳しく御説明していただきました。私どもは、「デジタル教科書」と一言で言っていますけれども、それは一体どこからどこまでのものなのかということの合意、あるいは現状の教科書制度とそれを合わせていくようなときに、どう考えていけばいいのかというための現状の制度の理解、これが非常に重要かと思いますので、今、丹念に説明していただきました。
 本日は第1回の会議でもございますので、この御説明を踏まえて、「デジタル教科書」について今から自由討議をしたいと思います。約1時間の時間がございます。それぞれ様々なお立場、御経験のもとで、委員として選出されてお見えですので、是非今日のうちに何か一言は言っていただきたいと思います。時間は全体で1時間ということで、その点を御理解いただいた上で、御発言いただければと思います。
 発言順等は自由にさせていただきますので、挙手をお願いしたいと思います。皆さんの御意見は、いずれ事務局でまた整理していただきまして、論点としてだんだんはっきりしていく、あるいは課題が明確になっていくものと思いますので、今日の段階ではどの辺りからでも構いません。できれば、この資料のここですけれどもということで、そこを踏まえて御意見をいただければと思います。
いかがでしょうか、どなたからでも結構でございます。
 では、毛利委員、お願いします。
【毛利委員】 つくば市教育局の毛利と申します。
 今、御説明していただきまして改めてよく分かったことですが、つくば市では外国からたくさんの視察の方がお見えになります。そのときに、教科書があって、これは全国一律で使っているというお話をすると、いつもびっくりされています。そうすると、教員が非常に効率よく、非常に間違いなく一律に学習できるものだ、大変すばらしいというお話をいつも頂いています。
 それで、つくば市でも教科書会社が作成している指導者用デジタル教材を有効に使わせていただいているのですが、これが非常に便利なものです。全国的に小学校より中学校の方が利用率が低いと言われておりますが、私が昨年度まで勤めていました春日学園という小中一貫校では、今やもう中学校の方が引っ張りだこで、必ず指導者用デジタル教材を使っています。
紙の教科書もとてもいいのですが、やはり情報が限られています。紙の教科書は見るだけ、読むだけですが、デジタル教科書は触ったり、動かしたり、書き込んだり、ほかの情報をリンクしたりということで、たくさんの情報を取捨選択しながら学習できる。まさにアクティブ・ラーニングになくてはならないものになってきています。そういう意味では、現在、非常に有効に使わせていただいております。
【堀田座長】 ありがとうございました。学校現場の実情を踏まえて、御説明していただきました。
 ほかにいかがでしょうか。
 福田委員、次に山内委員でお願いします。
【福田純子委員】 小学校の校長という立場で、現場とはいっても子供の発達段階がかなり小さいということで、お話しさせていただきます。
 今、御説明いただいた教科書の定義を知っているようでも、こうやって資料と御説明聞いて、改めて確認した思いです。その現在の教科書の定義を、現状の「デジタル教科書」と言われているものにすぐに当てはめることは、例えば全員が使用しなくてはならないとか、コストの点とか、難しいのが現実なのだと思いました。
 ただ、毛利委員がおっしゃったように、「デジタル教科書」と呼ばれているけれども、実は副教材的な位置付けで、私の前任の学校でも、教員の意欲がそちらの方向に向いて、実際に教室で使ってみて、その有効性というのに私自身も驚いた思いがあります。ですから、将来的な可能性としては、先ほどの弱視の子供たちの拡大教科書のように、条件が整ったところから「教科書に代えることができる」というような位置付けもありなのではないかと考えます。
そのときに、コンテンツの部分の副教材的なものとどうすみ分けるかというところをはっきりする必要があるかと思いました。
 それから現場にいて、ICTなど最新の、時代に合ったいろいろな教材や教具について思うのは、教員のリテラシーや整備の状況には、格差とか学校間の格差とか地域の格差とかがかなりあるのが現状です。ですから、「デジタル教科書」導入というところの前に、小学校段階、中学校段階、高校段階、大学段階、それぞれに最も有効とされるICT環境を、教員側から見た環境と子供から見た環境を整える方が先ではないか。それから今も子供たち、
ドリルのような、自分がフローチャートのように、自分の能力と興味に応じて活用できるような端末を使っている例もたくさん見聞きしていますけれども、そういう子供側から見た活用と大勢を一斉に指導する教師、その双方の活用に至るための環境整備を適切に行っていくことの上に、「デジタル教科書」が全体にという、そのステップがあるように思いました。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 それでは山内委員、お願いいたします。
【山内委員】 東京国際大学の山内です。
 この「デジタル教科書」には、プラスの点と、それから懸念すべき点があるのではないかと感じます。
 プラスの点としては、「デジタル教科書」ですと、デジタルなので非常に多くの情報が取り込める。紙の教科書ですと、非常に文字数やページ数とかが決まってしまっているわけですけれども、「デジタル教科書」はどういう媒体で提供されるかにもよりますが、DVDやウェブサイトなどであれば、膨大な情報を組み込むということができるわけです。それによって児童生徒の興味、関心に応じて学習意欲を向上させ、学習を継続させるというような効果的な学習ができるわけです。
 しかも、その中の教材というのは、常時更新できるとすれば、最新の情報をどんどん入れていくことができます。歴史の教科書では、何かイスラムの方で、それこそアラブの春などが起こった場合には、そういうものをどんどん入れていける可能性があるわけです。こういう情報のアップデートとか、児童生徒の興味、関心に応じて多様なことができる、いわゆる電子図書館的な膨大な情報を入れることができるという点はプラスだと思います。
 ただ一方で、懸念する点としましては、その膨大な情報を、どういうふうに質を高めて、質を確保するのか。そして、日本の場合には検定制度があるわけですので、その検定制度の中でどういうふうに位置付けるかということが非常に問題になってくるのかと思います。
私自身、教科用図書検定調査審議会の外国語、英語の委員をさせていただいております。外国語、英語の検定審議会でも、最近、紙の教科書にワークブックを一体化したようなものが出て、それをどうやって検定するのか。教科書本体そのものなのか、ワークブックも含めてやるのか、そういうところがいろいろと審議されているような状況で、そのようなことを考えると、「デジタル教科書」というものが出てきたときに、膨大な情報についてどこまで検定を要するのか。
 また、検定をする場合には、先ほどお話がありましたように、いろいろな専門委員に事前に正しいかどうか、適切であるかどうか、いろいろな調査をするわけです。そのためには時間もかかりますし、人件費もかかります。そういうもので出てきた結果を検定審議会では、その資料をもとにして議論をするわけですが、多分、「デジタル教科書」では膨大な情報量になりますので、その審議会の時間と日数、それから投入するエネルギーもどんどん必要になってくる。そういうプラスの点とマイナスの点があるわけです。
 時代の流れとしまして、このデジタル化というのは非常に必要だと思いますし、ほかの海外の国々を見ても、オーストラリアをはじめ、タブレットを教科書代わりにどんどん使っている国もあるようですので、真剣に考えなければならないとは思いますが、今のようなプラスの点と懸念すべき点というものをしっかり見据えてやっていく必要があるのではないかと感じております。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 続いて、ほかに御意見を。
 黒川委員、お願いいたします。
【黒川委員】 光村図書の黒川と申します。
 この中では、教科書を作っている側の人間でございますので、いろいろと課題も多くございます。私自身、平成12年から「デジタル教科書」の開発に関わり、もう15年たっておりますけれども、3年ぐらい前から紙の教科書の統括をしておりまして、いわばデジタルと紙の間に挟まれて、生きた心地がしないというのが正直なところでございます。
 日本の教科書については、望月課長からもお話がございましたが、世界の学校に伺って見てきても、この教科書の制度や内容を含めて、私はナンバーワンではないかと痛感しております。非常に整った制度だと感じます。ですから、教科書の在り方というのは、やはり日本の教育を大きく左右するだろうと思っております。
 ただ、「デジタル教科書」に関して、この間から新聞等でも多くの報道がございまして、ネット等での反応を見ますと、「ついにそういう時代がきたのか」とか、「教科書は紙で、デジタル化には絶対反対だ」とか、「目が悪くなるので心配である」とか、「字が書けなくなるのではないか」。それから、「落書きができなくなる」などというほほ笑ましい話題もあって、それは「デジタル教科書」でもできるのですが、そのようなことが一般の方々の反応だと思っています。
 残念ながら、余りいいイメージがありません。その理由は二つあって、一つは「デジタル教科書」を活用されている現場を、皆さん御存じないからです。今日は活用されている先生方がいらっしゃいますので、どのように授業の中で活用されていくのかといった話もしていただければと思います。それから、「指導者用」や「学習者用」という話もありますが、実態をよく御存じないというのが現状で、そこからイメージ的に語られてしまうので、いろいろな議論や課題が根拠なく出てしまうということがあります。
 二つ目は、先ほど言ったように、教科書の制度は明治以来続いているものですので、授業や教育の中での位置付けが深く、その長い期間に培ったイメージと、デジタルというクールなイメージがミスマッチしているのだろう、というのが一般の方の反応だと思います。
ですから、今後、この検討会議を機会に、「デジタル教科書」について知っていただき、考えていただけたらいいのではないかと思っています。
 そういう中で、おさえておきたいのが、教科書というのは、黒板とともに、一斉学習の中で非常に有効なツールであった、ということです。
ところが、今日の情報化社会と言われるような時代の中で、学びの在り方が多様化しつつあります。個別に学習したり、一緒にみんなで考えたり、ものを作ったりという協働的に学習したりすることが求められるようになってきていまして、学びのスタイルが変容しつつあるという、そういう時代に確実に来ています。
今度の指導要領でも、先ほど出ましたアクティブ・ラーニングや、学習者に主体的な学びを実現しようということが問われているわけで、そこにICTというものの役割が大きく関わってくるかと思います。
 一方、ICTによる情報収集力や発進力の飛躍的拡大というのは、子供の世界だけを見ても非常に大きく、子供たちの知や情報の流れが大きく変わりつつあります。そういう教育現場にいらっしゃる先生方は大変だと私は思っておりまして、今までの紙の教科書だけで、これが全て対応できるかというと、それは大変難しい。我々も努力して対応し、開発していきたいと思います。
 したがって、教科書や学びの在り方が変わってくる中で、教科書のスタイルというのも、「2020年」という一つの流れの中で見ていかなければならない。どういうふうに学び、その学びをどのようにサポートし、ナビゲートしていくのかということについて、扉を開くような議論をさせていただき、この検討会議で深められたらと思っております。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 神山委員、お願いします。
【神山委員】 岐阜特別支援学校の神山です。
 普段、特別支援学校のセンター的機能ということで、いろいろなお子さんが相談に来てくださいます。学習障害、読み障害の子、学習遅滞の子等が多かったのですが、ここ最近、家庭学習を見届けてくれる親御さん、御家庭ではないお子さんとか、塾に行けない御家庭のお子さん等の相談も増えてきています。
ということで、子供たちが置かれている状況というのは、障害の有無にかかわらず、家庭の経済格差も子供たちの学びづらさに影響が出てきているのだということを強く感じます。
 そして、最近また多くなってきたのが、逆転授業というような授業の進め方を進められる学校。予習が不可欠な授業が行われる学校とか、先ほど指導者用デジタル教科書を授業でということで使われる学校も多くなって、1時間で進める内容は、もうこれだけということでかちっと決まっていることで、子供に合わせた指導がなかなかしづらくなって、そこから合わない子は困っているという状況も生まれつつあるということを感じます。
 そういった相談を受けたときに、先ほど御説明もありましたが、ボランティア団体等が提供する、発達障害等の子たちが手にすることができる教科用特定図書を紹介すると、かなり学習に向かえるようになり、担任の先生のお話を聞くと、以前は子供たちの実態は幅が広過ぎて、なかなか教科の本質のところで授業時間を割けなかったのだけれども、そういった教科用特定図書をうまく使うことで、本来の学習内容のところで迫っていけるということを言ってもらえるようになったので、学びの保障をすることで、より質の高い教育ができるのかなと思うので、
その点がこの「デジタル教科書」の位置付けで担保していけるといいかと、個人的には思っております。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 福田委員、お願いします。
【福田孝義委員】 佐賀県教育委員会の福田でございます。
 佐賀県で5年ほどやってきましたので、実際に取り組んできた結果といたしまして、今日の議論にひも付けますと指導者用デジタル教科書、いわゆる電子黒板用の教材の使用については、これは予算さえあればすぐにでも欲しいという声がほとんどです。これは先生方に聞いても、県議会で説明をしても、保護者会で説明をしても、みんな普通に納得してくれる。結局これは、これまでCDプレーヤーを英語の先生が持っていって聞かせていたとか、又はテレビ講座を使って道徳の授業をしたとか、それからOHPを使って拡大したとか、
それから佐賀県で電子黒板を使う研究授業のときに困った50代の先生が、もう悩まれて悩まれて、悩まれた結果、白い用紙に国語の文章を書いてきて、電子黒板にぺたっと張って授業をされたのですけれども、まさに全部同じことなのです。書く時間を短縮して説明をしたり、時間を増やしたりという意味で。
 そういった流れで、先生方からも保護者からも、指導者用デジタル教科書については電子黒板とセットで欲しいということがたくさんあります。
一方で、今日議論になっております学習用デジタル教科書、つまり端末に入れて使う教科書については、なかなか難しいものがあります。というのは、面白い、興味を持って生徒が授業に加わってくれる、それから説明の効率化にもなるというふうに、聞けばみんな、マイクを向ければみんな言ってくれます。ただ、その後に少しじっくり話していると、それが本当に子供たちの学力向上につながったのかとか、また、本当に子供たちが分かってくれたかと言われると、まだちょっと自信がないと。
 つまり、経験値から来る不安です。私も教員ですが、教員というのは、自分が学生時代に習った経験、小学生時代に習った授業のイメージとか、又は自分が教壇に立って1年目、2年目、5年目、10年目とやってきた流れの中で、自分なりに、この教材をこう使って、こういう指導をすれば、子供たちがここまでついて来てくれるだろうという経験値を持っているのですが、いわゆる「デジタル教科書」についてはそこまでないものですから、すごくいいと言う先生もいれば、ちょっと不安だと言う先生がいるのも現状です。
ですから、この議論をするときには、当然ながら教師の指導力をどうつけていくか。私は指導力というのは、先生の自信の裏付けだと思っておりますから、自信を持ってそれを使えるようにしてあげるかというのがないと、ちょっと厳しいという気はしております。
 それともう一つは、先ほどありましたようにデジタルが一番得意とするところ、例えば反復練習とか反転学習、フリップ・ラーニングもそうですけれども、これまでは、例えば予習や復習、つまり家庭学習を充実させれば、子供たちの学力に必ず結びつくというのはよく分かっていたのですが、それを教師側から確認をしようとすると、例えばノートを集めて、プリントを集めて、と管理する時間が非常にかかった。これがICTではすごく簡単にできますので、そういったものに活用するとか、それからビデオ学習についても、例えば不登校の子供とか、
又はある項目だけ、ある単元だけすごく分かりにくい子供に対して、ビデオ教材があれば、自分の気持ちに応じて、自分の空き時間等を使って勉強できますので、すごく有り難い。特別支援学校でも、病弱の学校で、今、遠隔授業を取り入れていますけれども、これはどうしてもそのお子さんが毎日は学校に来られない、どうしても自宅学習に余儀なくされたときに、先生がテレビ会議システムを使って授業をするのですが、すごく効果があります。
 ですから、ものすごく目に見えた効果がある部分と、逆に先生方からすると、やる中で、本当にこれでやっていて、100%自信を持って大丈夫とはまだ言えないという声があるのも現実でございます。
【堀田座長】 貴重な御意見でした。ありがとうございました。
 新井委員、お願いいたします。
【新井委員】 質問半分、意見半分ですが、資料の3の最初の教科書の定義のところです。これは生徒用図書であってという前提があるのですが、この「図書であって」の積極的な理由は何なのでしょうか。例えばこれを制定した昭和23年の段階で、ほかに媒体がなかったからということなのですか。今後のことを考えたときに、ここを図書に限定すると、議論がほとんど狭まってしまうのではないか。
現在流通しているいわゆる「デジタル教科書」の議論と、教科書のデジタル化というか、デジタル化された教科書の議論とは別なのだろうと思いますので、デジタル化された教科書と、教材と、デジタル化された教材の今後の可能性を考えたときに、この定義のところの「図書であって」という前提の、積極的な理由は何なのかということが分かれば、お聞かせ願いたいのですが。
【堀田座長】 昭和23年の法律の理由まで分かるかどうか。
【宇高課長補佐】 昭和23年の法律ということでございますので、基本的には紙以外は想定されなかったということだとは思っております。
ただ、その点、それが確かかと言われると、我々も自信はないのですが、恐らくはそうかと思います。
【堀田座長】 これを今日の状況に合わせて見直していくようなことも視野に入れたいということと、それがこの検討会議の所掌範囲としてどこまでそれを拡大して、1年半で終わらないかもしれませんね。これは15年ぐらいかけてやるような話かもしれないので、この辺をどうするかという辺りが悩ましいところかと思います。
 今の質問の意図も含めて、何か御意見はどうでしょうか。
【新井委員】 教科書が図書に限られるのであれば、今後の議論の中で検定の在り方とか、「デジタル教科書」の検定の在り方とか、そのような議論の対象にならないのではないかというふうに思うのですが、そうではないのですか。
【宇高課長補佐】 その意味で申し上げますと、現在の法律のもとにおいては、教科書というのは紙媒体を前提としております。
ただ、いわゆる「デジタル教科書」と言う際に、いわゆる「デジタル教科書」というものを法律でいう教科書に位置付ける場合には、何らかの法制的な措置というのは必ず必要になると思っております。
したがって、この検討会議の、例えば、結果、即デジタルではなく、何らか法制上の措置を加えた上で使えるようになるということですので、今、法律上こうなっているから、デジタルは議論する意味がないということではなく、この議論の結果、教科書としてデジタルを認めるようになるか否か、こういうことを議論していただくものだと思っております。
【新井委員】 ということは、その延長上に変える可能性はあるということでよろしいのですか。
【堀田座長】 あるということです。
【新井委員】 分かりました。
【堀田座長】 多分、著作権も含めてですけれども、一定の法改正等を伴う可能性は十分あるわけで、でも、どういうことが課題で、どういうところに法律的な今、難しさがあるのかということをここでいろいろ洗い出して、本当に改正されるのかどうかというのはまた別の議論ですけれども、そういうことを見越して、検討していきたいと考えています。
【新井委員】 先々望ましいというか、こうしたいという議論と、現在いろいろ課題があるという議論、この議論も、ものすごく難しいと思います。つまり、現在の課題はほとんど運用上の課題ですので、それは数年たつとテクノロジーで解決できることがあって、それが問題だからできないという前提で走ってしまうと、本当に何もできなくなってしまうので、この議論は分ける必要があるということと、それから現在流通している「デジタル教科書」と、教科書のデジタル化という話も、これも分けて考えた方がいいのではないか。
つまり、幾つかの変数があるので、これを整理しながら議論しなければ混乱してしまうのではないかという印象がありまして、先ほどのところが前提として引っかかってしまったら議論にならないという意味で、質問させていただきました。
【堀田座長】 ありがとうございます。貴重な御指摘だと思います。
 ほかに、御意見いかがでしょうか。
 近藤委員、お願いします。
【近藤委員】 東大の近藤です。
 私は、いわゆる教科用特定図書として、障害のある子供たちのための教科書デジタルデータをオンラインで配信するアクセス・リーディングという図書館をやっています。それと同時に、東大の先端研でDO-IT Japanという、やはり全国から様々な障害のある子供たちを東大に集めて、最終的には高等教育や、それから就労、特にキャリアを志向した就労に移行を支援するという長期的な取り組みというのを、平成19年からホストしてきています。
 そういう中で、教科書という問題は常に私たちのそばにあったので、それが一体どういう形だったかということを少しお話しさせていただきたいと思います。
まず、先ほど神山委員からも少しお話がありましたが、最近、私たちは、アクセス・リーディングというオンラインの図書館に申請が非常に増えている子供たちのケースというのは、やはり通常学級に在籍している発達障害のある子供たちからのデジタルデータの申請が増えています。
どうしてそういったものが増えているかというと、やはり紙の印刷物では、そこに書かれている文字が流ちょうに読めない。読むことの困難さは知能検査で得られる知能指数とは必ずしも関係がなく、例えば非常に高い知能指数を示す生徒であったとしても、読みの障害があるケース、紙の印刷物だと読むことが困難という生徒もおります。
そういった生徒というのは、本来の理解力が高くても、印刷物を読もうと思うと、いわゆる文字を目で見て、それを脳内でうまく処理するということが難しいので、理解が難しくなる。でも、それを例えば行間を広く空けてあげたりとか、あとは文字のサイズを大きくしたり、若しくは、最近のコンピューターというのは標準で音声読み上げ機能というのを持っておりますので、人間が録音していなくてもコンピューターが代わりに読んでくれます。そういった機能を使うことで、内容を把握できる子供たちがいるわけです。
 そういう子供たちが、そういったICTの機能を活用するために何が必要かというと、やはりそうしたICTの機能と組み合わせて使うことができるコンテンツのデータが必要となる。よって、我々がそのコンテンツデータを作って全国に配信するということを行ってきています。
 その中で、教科書、今、先ほど新井委員から少しお話がありましたが、この「教科書」という言葉そのものが本当にたくさんの意味あい、多面的な意味を含んでいます。私たちがいつも感じる「教科書」というものの実態は何かというと、やはり「学習方法を大きく規定するもの」なんですね。
教室での学習方法というのは、基本的に現在では、やはり一斉授業形式が非常に多いですし、かつ紙の教科書を使って読み書きをする。ノート自体も紙のノートです。そういった形で、読み書きするものが非常に多いわけです。
 そうすると、紙の印刷物だとアクセスすることが難しい子供たちというのは、そこでの学習の機会からどんどん漏れていきますので、学習がなかなか成立しない。しかも、今度は、その学習方法というところは教科書から発展して、最終的に彼らは評価されなくてはならないのです。試験の中で評価されなくてはならない。そうすると、それが紙ベースのものになっていますので、たとえ我々が教科用の特定図書を出していて、音声で読めるものを出していたとしても、試験ではそういったものが使えないわけです。
そうするとどうなるかというと、中学や高校、大学など、次の学習段階に進めないわけです。
 最近、先ほど提示された音声教科書の資料の中でも出てきていましたけれども、私たちのアクセス・リーディングの中に、高校段階の教科書の電子化の要望が大分増えてきてはいます。しかし、やはりまだなかなか、高校入試を紙以外の形で受験して進学をして、そこで入学後の高校段階でも、いわゆるこういったデジタルデータを活用して、ほかの子供たちと違う学習方法が認められた形で、最終的に高等教育機関まで進学するという子供たちの数は非常に少ないです。
 私たちDO-IT Japanの中では、代表的な例を出すと、今年センター入試で発達障害、特に読み困難なら発達障害のある子供が、私の知る限り日本で初めてのケースだと思うのですが、センター試験を音声で受けました。しかし、これはまだ日本で恐らく初めてのケースです。ディスレクシアという読み障害があって、ただ、コンピューターでの読み上げを彼は希望したのですが、最終的に配慮として認められたものは前例がないということで、人間が代わりに読んでくれる代読という形のものでした。
 このように、ほとんど読みの難しい子供たちというのは、今、高校、それから大学という課程まで、ほぼ進めていないわけです。そして、彼らは社会のどこかに消えていかざるを得ないという状態があります。やはり教育でエンパワーメントされないということは、結果として、その後の十分な収入であるとか、あとは一定の社会的地位に到達するであるとか、そういったことからの排除ということが起こります。
本来であればかなり早期の段階から、こうした別の形、例えばコンピューターを使った音声読み上げをするものを自分の能力として活用する。そういった形の指導というのが必要なのですが、こういった指導法というのは日本ではまだ確立しておりません。したがって、今、読みの困難な子供たちというのは、やはりなかなか中学、高校、大学という段階にまで進学できていないという現状があります。
 本当は、書字障害というまた別の問題もあるのですけれども、今日は読みの、いわゆる教科書のところなので、また別の機会にお話しさせていただこうと思うのですが、是非こういった、いわゆる代替的な学習方法や、彼らがどのような方法で評価されるかということを考えた上で、教科書の在り方を考えるということが議題に上れば、大変在り難いと思っております。
【堀田座長】 ありがとうございました。貴重な御意見、ありがとうございます。
 東原委員、お願いします。
【東原委員】 私は学びのイノベーション事業等々で、いわゆる「デジタル教科書」、学習者用デジタル教科書に対する仕事に少し携わった経験とか、若いころ、毛利委員がいらっしゃるつくば市で、最初にいわゆるデジタル教科書・教材に関わる仕事をやって以来、ずっとこういう仕事をやってきた人間からの意見ということで、発言したいと思います。
 先ほど、新井委員がお話しされました資料3の、まず1の教科書の定義というところが、私はこの会議の一番重要なポイント、この会議で決めるわけではないにしても、そこに対する意見をきちんとまとめられるかどうかというところが、一番大事だと思っています。
 明治の国定教科書以来、教科書制度というのは大きな節目があったかと思うのですけれども、昭和23年の私が生まれるよりも前に決まったもので、今、動いているわけですが、これから先の子供たち、22世紀に生きる子が今生まれているわけで、そういう子供たちの教育環境、学習環境ということを考えるときに、またとないいいチャンスであるので、しっかりこの教科書の在り方というものを、もう一度考えてみるべきであろうという前提で、まず考えたいということを申し上げたいと思います。
 今、我々がいろいろ問題解決をするに当たり、デジタル機器等を使って情報を得たり、それから表現をしたり、遠く離れた人とディスカッションをしたりするということは当たり前になってきているわけで、これから先の子供たちが大人になっていくときに、そういう力を発揮していくことが求められているし、今度の学習指導要領の改訂も、そういう方向のことを志向していると見えているわけです。
 簡単に言えば、デジタルでチェーンができているわけです。いろいろ情報を得て、それで表現して、そして発信して、友達とのやりとりをして、また行動を起こしていくという。そのチェーンの中に、紙の教科書のままでは、そこだけぶつっと切れてしまうわけです。ですから、教科書をわざわざスキャニングするとか、デジタルカメラで写真に撮って張り込んで議論するなんていう、そういう余分な手間がかかる、思考の流れを中断させる原因が実は教科書だなどという話になり、
教育の質を保障するための教科書が足かせになるかもしれない将来が待っていると言えるでしょう。
 今、我々が生きているこの時代に、しかもこういう会議が設けられたということは文部科学省の歴史に残るわけですから、この会議のときにどうして変えられなかったのだと将来言われないように、私は一番大事にしたいところだと考えて、その足かせになることはやめておこうと提案したいと思います。
確かに、様々な課題があります。タブレットやペンの性能、安定的に稼働する無線LAN、検定はどうするの、予算はどうなる、など様々なことがありますが、図書でなければならないという規定が外れるだけでも、非常に大きな意義があるのではないかということを感じて、ここだけは是非最後まで主張をし続けたいと思っています。
 今までの教科書というのは図書ですから、黒川委員がおっしゃっていたように、紙の教科書を制作する、流通させるすばらしいシステムができ上がっているわけですけれども、もしここで図書という言葉に限定しないということになれば、また産業界はその方向に向けて、新しいシステムをきっと構築していくと思うのです。
今のまま学習者用デジタル教科書を作るとすると、製作コストが非常に高くなると思うんのですが、この規定が外れてデジタルもよいという話になると、それを試行したプロダクションシステム、生産過程、あるいは流通過程というのが構築されていって、結果的に何年かすれば、デジタル化をすることは決して余分なコストのかかるものではないという話になるのではないかというわけで、この教科書の定義のところを見直す方向で、意見をまとめられると在り難いというのが一つです。
 二つ目に、教科書の意義のところに書いてある、これも昭和58年の中央教育審議会話の話ですが、基礎的・基本的な保障のところが強調されていますけれども、これは重要なところで、先ほど山内委員がおっしゃっていました、検定と大きく関わってきます。これについて、私はこうしましょうという強い意見をまだ持ち合わせてはおりませんけれども、基礎的・基本的なものという、ここの意味を重視したものにするのであるならば、紙の教科書と同じ範囲を「デジタル教科書」にしましょうというふうにすれば、大きな検定の難しさはないと思われます。
しかし、「デジタル教科書」の意義というものを、リッチテキストというふうに言われるような豊富な動画やシミュレーションなどデジタルらしい良さととらえれば、基礎的・基本的なレベルに抑えるということではなく、発展的だとか、より分かりやすいものとか、教科書の意義も少し変わってくると思うのです。
ですから、この教科書の意義に関しても、当時はこういうふうに重要な役割というふうな認識だったと思うのですけれども、「デジタル教科書」にどういうものを求めるかによって、その意義が変わってくると思われます。しかし、そこを考えるときには検定との関係があるので、なかなか難しいとは思いますけれども、何といっても日本の教科書制度は、この定義と意義の辺りから真剣に考えていくのがいいのではないかと思われます。最初の回ですので、こういう発言をさせていただきたいと思います。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 ほか、いかがでしょうか。
 中川委員からいきましょう。
【中川委員】 日本マイクロソフトの中川でございます。IT、ICTの観点から、一つ環境の部分についてコメントをさせていただきたいと思います。
 実際、私どもも多くの導入現場に立ち会いまして、学校、学級単位で入っていくICTと、それから地域で入っていく学びのICT環境で、導入が随分と違うなというのを感じております。
 例えば、「デジタル教科書」におきましては、先ほど冒頭にも説明がありましたように、教科書はいろいろなものが、いろいろな製作会社がいらっしゃって、それぞれ個別に地域で採用をかけているとなったときに、各教科書会社はよかれと思って非常に情報量をたくさん積んだコンテンツを提供されるのですが、10冊分導入するとなったときに、一体何ギガの記憶容量が必要なのでしょうかということに関しては、実は議論はなされないまま、皆さんがベストを尽くされる。
我々、ハードウェアも提供しておりますけれども、これは導入現場では当然コストを下げたいというお気持ちがあって、記憶容量、メモリーやハードディスクに関しては必要最低限、少し余裕を持ったものということになってきたときに、入らない。1教材、2ギガのコンテンツ掛ける10というふうにきたときに、16ギガのタブレットなんていうのが安価でよくありますけれども、入らないというような事情が起きるのです。
神の見えざる手は働かないのだというのを市場では感じたわけです。
 これは、ネットワークでも似たようなことがありまして、一人一人のダウンロード容量というのは、例えば1コンテンツ2ギガとか、学期分に分けてダウンロードということを考えると、いけるのではないかと試算をするのですが、地域で一斉に4月の段階でダウンロードをかけるというようなことがあったときに、やはり通常の企業の導入の運用であれば、こういったことはまず避けて、ブロックごとの配布をするというようなことをやるのですけれども、学校はそういうわけにいきませんので、4月になって1組だけ教材を渡したけど、
2組には教材を渡さないというのはあり得ないので、一斉にやりましょうとなったときに、当然、配慮が必要になってきます。
こういったことに関しても、実は学校のネットワークというのは、大体、教育委員会に集約されまして、そこから出ていくという仕組みがありますので、インターネットの最適な形というものが、どういうトポロジーなのかというのも考える必要があると思っております。
 何も全部インターネットからダウンロードする必要はなくて、例えば教育用のハードウェアであれば、ある程度、教材をプリインストールのような形にして出すという、これは教科書の流通の仕組みを我々は学んで、端末を提供する際にそういったやり方もあるかもしれないですし、若しくは外形メモリー、USBやSDカードのようなものを効果的に使っていくということも、検討としてはしっかりとやっていただきたい。
これが今までの書籍の流通というところに、デジタルになったときに協議しなければいけないポイントではないかと思っております。
 そして、アップデートに関しては、先ほど山内委員から教材のアップデートの話がありましたけれども、教材のアップデートの側面としては、実はソフトウェア、そのプラットホームが、例えば私どもですとOSを提供しておりますけれども、そのアップデートの問題があります。
皆様、携帯電話、スマートフォンをお使いになって、携帯電話OSのアップデートをしたらソフトが動かなくなったということはありませんか。これは、教育の現場では絶対に起こしてはいけないことで、これも一定のルールが必要になってくると思います。ただし、このルールを決めて2年とか4年とかというのは、我々、IT屋にとっては気の遠くなるような長いサイクルで、大体二、三か月でOSのアップデートを行うということを考えると、
ちょっと待ってくださいといって止めることはできるのですが、これを2年に一回とか4年に一回というような形で行っていると、全く最新のものは提供できない。非常に短いサイクルで提供していく必要があるのではないかと思っております。
 今、困難な側面をお話ししたのですが、これは冷静に聞いていただくと、全て解決可能だと思っております。
冒頭にも申し上げたように、デジタル教材の利用に関しては神の見えざる手が働きづらいような仕組みがあるのではないかと思っております。ただし、しっかりと手続というか、仕組みを作っていけば、いずれにしても全て解決可能な問題ではないと思っておりまして、問題をきっちり洗い出して、少しずつ解決をしていくコメントをしっかりできればと思っております。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 金子委員、どうぞ。
【金子委員】 私立の中・高なので、特殊な事例というふうに思われてしまうかもしれないのですが、本校は4年前から情報機器の一人一台体制というのを目指してやってきて、それで今現在、1,600名の生徒の中の80%の生徒が情報機器を持って学園生活を送っているという状況まで来ました。
恐らくいろいろな学校がそういうふうに変わっていくとは思うのですが、それは何のためにそういうことをしてきたかというと、教育活動をいかに高度化するかということ、教育活動をどれだけ拡大できるか、それには絶対ICTが必要だという考えで、ここまでやってきているのです。
 確かに教科書問題って、いろいろ調べてみるとすごく難しい問題があって、僕は頭の中で行き詰まっちゃうなという気がするのですが、でも、何のために「デジタル教科書」という話題というのは、要はICT活用をどれだけ最大活用できるか、ICTを教育の現場で。その中の一つとして「デジタル教科書」の問題があるのだ、そういう視点でこれから考えていきたいと、私自身は思っています。
 よろしくお願いいたします。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 井上委員、お願いします。
【井上委員】 全国高等学校PTAの委員をさせていただいておりまして、その中で健全育成委員の委員長もさせていただいております。
 「デジタル教科書」ということだと、私もまだアナログの方なので、漠然とどういう授業内容になる、体制になるのかということがよく分からないのですが、いろいろな情報をダウンロードするときに、私もパソコンは使いますけれども、授業の時間内で情報がダウンロードされる、そういう部分だとか、その授業の中で賄えるのかとかという部分の心配はありまして、あと、いろいろな悪影響などにつきましては、子供たちが安心して使えるのかという懸念があります。あと流用とか流出だとか、
そういうことがないのかとか、疑問点がたくさんあり、子供たちが使うに当たっては、先生たちの指導をまずしっかりしていただかないと、子供たちが更に使うには、子供たちの方が使い方は慣れていってしまうと思いますので、その辺を、導入されたときに、小学校1年生から使うお子さんに関してはスムーズにいくと思いますが、途中から使われているお子さん、そういう意味でスマートフォンをほとんどの子が持っていますけれども、持っていない子もおりますので、その辺も含めて議論して、安心に使えるようにしていっていただきたいと思っております。
【堀田座長】 ありがとうございました。保護者の意見というのは非常に重要でございますので、これからもよろしくお願いいたします。
 高梨委員、お願いします。
【高梨委員】 今まで皆さんの御意見をお聞きして、私ども、2年前からタブレットは導入しているのですが、今日の会議は大変参考になったと思います。
 先ほど、望月課長から御説明いただいたデジタル教科書の今後の主な検討課題の中で、教育効果についてですとか、教科書使用の在り方についてということで例を挙げていただきましたけれども、この「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議」の趣旨に合うのかどうか分かりませんけれども、是非、「デジタル教科書」の活用の在り方ということも併せて御検討いただき、示唆を頂ければと思っております。
 実際、現場で使用しておりまして、議会に対しても、保護者に対しても、どれだけ教育効果が上がったのか。で、先ほど御懸念をお話しされましたけれども、果たして子供たちにとって有害な、逆の教育効果が出はしまいかというような御心配をされるところもあるので、「デジタル教科書」だけではないのかもしれませんけれども、デジタルコンテンツの活用の在り方についても、是非この場で御意見を頂ければと思ってございます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 荒川区さんも佐賀県さんも、非常に自治体として、全国では最初にこういうことを取り組まれていらっしゃいますので、そういうお立場から、今、御意見を頂いたと思います。
 毛利委員、お願いします。
【毛利委員】 つくば市の毛利でございます。
 先ほど、カラーや挿絵が教科書に入ってきたという望月課長からのお話がありましたが、それはきっと現場の学校で、先生たちが白黒の写真しかない教科書を使っていたときに、これでは子供たちが飛びつかない、もっといいもの、何か効果があるものはないかと、スライドを作ってみたり、カラーのものを黒板に提示したりということで、どんどんそれが教科書に入っていったということだと思います。
 現在、私の勤めていた学校でも、夜遅くまで先生たちは授業のために何かいいビデオクリップがないかと探しています。探すのに結構時間がかかりますが、それを授業に使っています。きっと今も、全国の学校でそれは行われて、授業の前に使ってみたり、中で使ってみたりしていると思うのですが、それがもし教科書の中に入っていたら、こんなに効率がいいものはないと思うのです。
したがって、これは時代の流れというか、今、教材研究をしている学校の現場の教員が行っていることが、それが教科書に盛り込まれていったら、しかもそれがお墨付きのある、とても効果のある動画だったら、非常に教育効果も高いし、効率も良くなると考えています。ですので、音声や動画の検定されたいいものがすぐ使えるという状態になっていることは、教育現場としては非常に効果があるものではないかと思います。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 これから、多分ヒアリングがいろいろ入ってくると思いますので、この道でずっとされてきた方々がどういうふうに工夫してきたかということと、どのような課題にぶつかっていらっしゃるかということを聞いていくことになると思いますので、そこで次第に論点を深掘りされていくとは思うのですが、今日はできるだけ幅広に、いろいろな懸念も含めて出していっていただいた方が、今後、検討していくのに非常に有利ですけれども、いかがでしょうか。
 福田委員、お願いします。
【福田孝義委員】 先ほど、中川委員から説明していただきまして、多分あれは佐賀県のことだと思うのですが、実は現在、教科書会社・教材会社と30社ぐらい、佐賀県に教材を提供していただいております。大手もあれば、先ほど言いましたように、反転学習のための教材を御提供いただいているようなところもございます。
 佐賀県の場合は、学校の先生が使う教材は全て公費で負担をしまして、教育委員会からそれを提供しておりますので、売買契約を結ぶ関係上、どうそれを提供していただくかとかいう課題がありまして、最初はネット上からダウンロードしていく方法、これが一番いいですね。
なぜいいかというと、教科書を検定した時期に影響されて、例えば、図表等についてはどうしても、3年前、4年前の教材しか使えない。それに対して、ネット上の教材を使うときには、一番新しいものが使えるという非常に利点があるのですけれども、一方で、それを家で見るためには、家庭にネット環境がなければいけないのですが、佐賀県の家庭を調べると、どうしても2割程度ぐらいの家庭の子供はネットが使えないものですから、家での予習・復習を考えると、
端末に入れさせていただきたいということで、教材会社と協議を行い入れさせていただいた。そうすると、自宅でも自由に使える。
 ただ、そうするためには、4月当初にどうやって配信をするかということで、1年前は教材会社のネットワークから落とさせていただいたのですけれども、やはりいろいろなトラブルがあった。
今年は、この方法ではやっぱり厳しいということで、それをUSBで提供してもらったおかげで、ほぼ全く問題なくすっと終わってしまったということで、課題は確かに解消できる部分がたくさんありますので、私が言いたいのは、解消できないというのではなく、解消すべき課題がありますという建て付けでお願いしているところでございます。
 その中で、この教科書というのは、私は教員ですから、非常に重たく感じてしまうものですから、在り方については、やはり軽々にではなく、きちっと手順を踏みながら検討していただければ在り難いと思います。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 ほかに何かありましたら。
 神山委員。
【神山委員】 すごいコンテンツを作れば教育効果は上がると思うのですが、教員が要らなくなってしまうようではいけないかと。子供の息づかいを感じて、子供に教えられる、そういうシステムは残していかなければならないと思っています。
予備校の動画を見れば勉強ができてしまう、それの延長線上にこの「デジタル教科書」が乗っかってしまうようでは悲しいので、人と人、学校教育の根幹というか、そこは譲れないという気持ちでいます。
【堀田座長】 ありがとうございます。
 教員は要らなくなるのでしょうか。実際、使用している先生方もいらっしゃると思うのですけれども。
 山内委員、お願いいたします。
【山内委員】 今、各委員のお話を聞いておりまして、「デジタル教科書」といった場合に、現行の教科書をデジタル化するという方向性と、それから副教材のデジタル化、いわゆるデジタル副教材です。その副教材なのですが、現在普及している「デジタル教科書」というのは、このデジタル副教材の方などではないかと思います。
 私自身も英語の担当ですけれども、デジタル副教材の作成に携わったことはあります。このデジタル副教材では、教員が提示し、あるいは児童や生徒たちを活性化させるためのいろいろな手立て、教員の提示用だとか指導用のデジタル副教材がありますし、また学習者用の、いわゆる電子ワークブック的な教材もあるわけです。
このように考えてみますと、最初に新井委員がおっしゃったと思いますが、この分類、教科書のデジタル化、それからデジタル副教材を更に「デジタル教科書」としてより位置付けを高める。その場合に教員をどうするのか、児童生徒用の電子ワークブックをどうするのか、そしてその利活用であるとか、研修であるとか、コンテンツをどうするのか。こちらの方の議論というのは、かなり副教材の方をかなり突き詰めていくというのが、結構現実的に可能性があるのかと思います。
 一方で、現行の教科書のデジタル化というのは、法律的な問題もあるというお話でしたが、こちらは本当に、東原委員がおっしゃっていましたけれども、歴史的な意味を伴う、非常に教育の根幹に関わるところなのではないか。
ですから、今後、議論をするときには、こういう「デジタル教科書」といった場合、何を各委員がイメージして言っているのかとか、その辺を明確にする方が、より議論がかみ合うと思いますし、深まっていくのではないかということをつくづく感じました。
【堀田座長】 貴重な御示唆です、ありがとうございました。
 ほかに、いかがでしょうか。
 近藤委員。
【近藤委員】 先ほど障害の話をさせていただいたのですが、実は私は、別に障害者のためだけを考えてやっているとは全然思っていません。なぜICTの活用というのが非常に効果的だと考えているかというと、今、山内委員がおっしゃったような、何のためにというか、そういうところに非常に関わると思うのですが、私はICTを活用することによって、多くの格差を超えることができると思っています。
 例えば、今最近、インターネットとスマートフォンというものは、例えば発展途上国の中では、今非常に貧しい階層にある人たちが、そのスマートフォンを何とか、自分が働いて得られる給料を、そのスマホを使うことにつぎ込んでいるわけです。なぜそんなことをしているかというと、それがあることによって、英語で活用できる世界中のあらゆる教育コンテンツに、どんな貧困層であってもアクセスできるからです。
そのためにお金をつぎ込んで、そうやって学習をしている途上国の人たちというのが、どんどん出てきている。そして、彼らが、例えばコンピューターサイエンスの知識などを、いわゆる最新の知識がインターネットで得られますから、そういった人たちがやがて、今フラット化しようとしている社会の中にどんどん乗り込んでこようとしてきているわけです。
 それは、国ごとの格差をICTにより超えるという視点から見た例です。日本の中でも、格差は存在します。例えば障害というのはその一つです。例えば、文字を読むということはできるけれども、文字を書くということがものすごく難しい生徒がいる。ところが、デジタル教材が入ることによって、若しくはキーボードが入ることによって、書くという、つづるということはできないけれども、彼らが表出するということはできるようになるわけです。
先ほどのディスレクシアという読みの問題にしてみても、印刷物だと読めない、印刷物障害だけれども、音声を活用することによって中身にアクセスして理解するということができるようになる。あとは遠隔地であるとか、病弱であったり、知的な障害があったりして処理速度に遅さがあるとか、そういった人たちが一斉授業のみんなと同じ速度でついていくのではなくて、多少、処理の時間というのは違うけれども、同じ教育内容にアクセスできるようにしていく。
 そういうふうに、ICTは、教育上の格差というのをどんどん超えていって、教育機会をどんどん広げていくための非常に有効なツールだと思っています。何のためにデジタル教材が存在しているかというと、やはり教育格差の保障という、格差をなくしていくということだと思っています。そういった基本的な部分は、やはり何らかの形で共有しながら進めていっていただけると、大変在り難いと思います。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 天笠委員、お願いいたします。
【天笠委員】 委員の皆様からのそれぞれの発言、大変勉強させていただきました。
私からは二つ申し上げさせていただきたいと思うのですが、一つは、私も時々、学校の授業を拝見する機会、授業研究等々で御意見させてもらう機会があります。特段デジタルということを掲げているわけではない授業研究が多いのですが、その中で感じることは、やはり授業力のアップをどう考えるのかが重要だということです。そうすると、昨今の授業研究では、どちらかというと授業方法の研究に関心が集中するとか、力点が置かれるということが多くあります。
一方、単元や、教材の中身に向かっての議論の応酬に出会うとことは比較的少ない。いうならば、教材を研究するということもさることながら、むしろ授業方法をより洗練していくことが、大きな授業研究の流れになっているように思います。
 そのような点からすると、授業の単元構成や、授業の中身としての教材の在り方や、もっとそういうところに論点を移してやりとりするといいのではないかとしばしば思うのですが、時間が足りず十分に議論できていません。いろいろな事情があってのことだと思いますが、その一つはもしかすると、教科書が丁寧に作り上げられ過ぎているということなのではないでしょうか。
要するに、ページを一つ一つ追っていけば、単元構成を深く考えなくても、少なくとも最低のレベルの維持ができるような形にまで整えられています。ある意味では大変いいのですが、一方で、単元構成や教材といった観点が後ろに引いてしまっているように思います。象徴的なのは、単元で授業をするということについての問題意識や課題の深め方が、授業研究において一つの大きなテーマになっていることではないでしょうか。
 このようなことを踏まえ、今回ここで取り上げている「デジタル教科書」が、今申し上げたようなこととどのように絡んでいくのか。あるいは、教師の授業力アップという観点から、どのような方向性を開いていくのか。この辺りのところを皆さんと一緒に議論をさせていただければと思っております。 
もう一つ申し上げたいのは、私はずっと紙媒体の世界でここまできましたが、20年前からデジタルの世界の流れを受けて今に至るということで、少なくとも現状の私の認識は、紙の世界でつくり上げている文化と、それからデジタルが生み出している文化、これらがミックスされた、バランスのとれた、そういう社会の在り方、文化の在り方というものを、大切にしたいと思っています。
もちろん、これは考え方があるかと思うので、デジタルが紙にとって代わるというような、勢いはあるかもしれません。ただ、私の立場としては、紙の媒体とデジタルの媒体のバランスのとれたミックスの状態というのが、文化を豊かにしていくことにつながっていくといった考え方を持っています。そういう観点から、教科書という存在がどのような意味を持つのか。この国の国民文化の形成、あるいは世界の潮流を見たときに、どのような形になるのか。
この辺、それぞれのお立場で、いろいろな御専門を極めている方が本検討会議にはたくさんいらっしゃいますので、勉強させていただければと思っております。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 せっかくの機会ですので、是非局長から一言。
【小松局長】 今日はありがとうございます。
 私、今日を皮切りに、いろいろな角度から御意見を頂きまして、ありがとうございました。
お聞きしたいこともたくさんあるのですが、まずは皆様方のいろいろなお話、事例その他もお伺いしていきたいと思います。
 私ども、制度などを扱っている者からいたしますと、制度は不自由な面もあります。教科書制度もそうですが、一方で、それは例の国定や検定の流れの中でもそうでありますように、情報環境が増えていくのと、それから、国民文化的に、その時々に要請されているものとのバランスをとりながら、できるだけ情報等が流れ込める、そういう調和点を探していくという作業の必要性いつも感じております。それが昨今の情勢の中で、様々な角度から新しく取りざたされているということになると思います。
 そういう目で見ますと、先ほどの教科書制度そのものもございますし、それから、いわゆる副教材という世界には非常に広大な鉱脈があって、これをうまく組み合わせると、ものすごく情報環境はよくなる。したがって、あまりイデオロギー的に考えない方がよく、学校の中で使いやすいように、それからその制度との調和を図るにしても、いろいろな工夫とか、その手があったかというものがたくさんあると思います。今日のお話を伺っていてもそんな感じがします。
 教科書と副教材といいますけれども、その中にもほとんど教科書の一部のようなもの、教科書付属のようなものもあれば、かなり応用的、発展的に広がっていくというものもある。その先には、学校にはふさわしくないとかって心配されるようなものもあるでしょう。あるいは、先ほど中川委員からお話のありましたような、技術的な環境の整備をどう図っていくかについては、いろいろな手があるのかなと、新しく今日一日でも、私ども事務方としても考える材料を頂いたような気がいたします。
私どもとしては、そのようなスタンスで臨みたいと思っておりますので、率直にいろいろとお聞かせくだされば有り難く存じます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 皆さん、たくさんの貴重な御意見を頂きました。
私も一言だけ申し上げると、私はもともと小学校の教員で、それからずっと教育の情報化研究をしていますけれども、海外等を見に行くと、一見、端末などのICTの設備は海外の方がはるかに進んでいるように見えて、一方でコンテンツ、教育に非常に有効な教材としての日本の教科書の質の高さというのは、外に出れば出るほど感じるものがあります。
これを安易になくしてはいけないと思いますし、そのコンテンツとしての教科書をどういうふうにデジタルとミックスさせ、より豊かな学習環境にしていけばいいのかという議論、そのために幾つかの課題が横たわっていて、それを今、局長におっしゃっていただいたように、工夫でどういうふうに乗り越えられるのか、あるいは制度変更までやらなければならないのか、といった議論ができればと思いますし、教科書のデジタル化と「デジタル教科書」と言われるものがどう違うのかといったことも、
あまり明確にされずに議論されてきていると思いますし、これが制度の改正等を伴うとなると、明確にせざるを得ない部分もあります。明確にすることによって、どちらか片方の議論に陥ってしまうと、場合によっては小さい議論になったり、あるいは大き過ぎて議論のしようがないものになってしまったりするかもしれませんので、この辺りを、山内委員におっしゃっていただいたように上手に区分けしながら、論点を整理しながら、一つ一つはっきりさせていきたいと思います。
 今日、そろそろ予定の時間となっておりますので、本日の議論はこの辺りまでかと思うのですが、最後に、次回以降のスケジュールにつきまして、事務局より説明をお願いしたいと思います。
【宇高課長補佐】 資料を御覧ください。
 今後のスケジュールでございますけれども、まず次回、第2回でございますが、6月30日、火曜日16時から18時の2時間を予定しております。
 場所につきましては、書いてありませんが、この文部科学省の3階に特別会議室がございますので、そちらを予定しております。
 議題といたしましては、「学びのイノベーション事業」実証研究報告、あとは関係団体等からのヒアリングとしております。
 また座長と、関係団体等については御相談をさせていただいた上で、皆様にも御連絡させていただきます。
 第3回以降につきましては、また先生の方に日程等調整させていただいて、別途御連絡させていただきます。
【堀田座長】 ありがとうございました。
 それでは時間となりますので、今日はここまででお開きとしたいと思います。
 お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。これからたくさんの議論がありますけれども、よろしくお願いいたします。
 傍聴の方々も、たくさん興味を持っていただきまして、ありがとうございました。
 次回以降も引き続きよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

お問合せ先 初等中等教育局教科書課

「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 (第1回) 配付資料2015-07-04

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/1357853.htm

「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第1回) 配付資料

1.日時 平成27年5月12日(火曜日)14時から16時まで

2.場所 文部科学省13F1~3会議室 東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題
 1.教科書制度の概要について
 2.「デジタル教科書」に関する課題について
 3.自由討議
 4.その他

4.配付資料
(資料1)「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議設置要綱
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/attach/1357855.htm
(資料2)「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議の運営について(案)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/attach/1357857.htm
(資料3)教科書制度の概要等 (PDF:1420KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/14/1357853_1_1.pdf
(資料4)「デジタル教科書」の位置付けに関する検討について (PDF:267KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/18/1357853_2.pdf
(資料5)今後のスケジュール
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/attach/1357861.htm

お問合せ先 初等中等教育局教科書課

「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 (第2回) 配付資料2015-07-04

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/1359569.htm

「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第2回) 配付資料

1.日時 平成27年6月30日(火曜日)16時から18時まで

2.場所 文部科学省3F1特別会議室
     東京都千代田区霞が関3-2-2 中央合同庁舎7号館3階

3.議題
 1.「学びのイノベーション事業」実証研究報告
 2.ヒアリング(一般社団法人教科書協会)
 3.自由討議
 4.その他

4.配付資料
(資料1)「学びのイノベーション事業」実証研究報告 (PDF:2650KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/07/02/1359569_1.pdf
(資料2)広島市立藤の木小学校「学びのイノベーション事業」報告
(PDF:896KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/07/02/1359569_2.pdf
(資料3)「デジタル教科書」の現状と課題(一般社団法人教科書協会)
(PDF:2910KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/07/02/1359569_3.pdf
(資料4)「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第1回)
における主な意見
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/attach/1359566.htm
(資料5)今後のスケジュール
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/attach/1359568.htm

お問合せ先 初等中等教育局教科書課