朝日新聞社説 障害児教育-「共に学ぶ」に近づくには 2010/07/232010-07-23

http://www.asahi.com/paper/editorial20100723.html

 日本の障害児教育が、大きな転換を迫られている。

 政府の「障がい者制度改革推進会議」が先月まとめた意見書に、「障害の有無
にかかわらず、すべての子が地域の小中学校に在籍するのを原則とする」との提
言が盛り込まれた。これまでの原則と例外をひっくり返す形だ。本人や親が望ん
だ場合に、特別支援学校・学級で学ぶようにするという。

 障害児と健常児を分けない「インクルーシブ教育」などをうたう障害者権利条
約が4年前、国連で採択された。意見書は、批准のための法整備を促すものだ。
今週から、中央教育審議会で専門家による議論も始まった。

 多様性を尊重しあう共生社会をつくるためにも、すべての子が共に学べる教育
が重要だ--。世界ではそんな考えが広まりつつある。しかし、日本では障害児
を盲・ろう・養護学校に振り分ける形が、長く続いてきた。

 2007年には、機械的に分けるのでなく、一人ひとりのニーズにより細やか
に対応しようと「特別支援教育」が始まった。発達障害の子が初めて対象となり、
障害の程度によっては普通の学級の中でも適切な支援をしてゆく考えに、改めら
れた。

 だが、3年たって起きているのは、特別支援学校・学級の子どもの数の急増だ。
「学習障害」といった診断で、普通のクラスから安易に押し出されてくる子が目
立つ。学校はパンク状態で施設不足や質の低下が心配だ。

 障害のある子が普通の学校に居づらい状態は、変わらない。重度の子を特別に
受け入れても、親の付き添いを求めたり、授業で「お客さん」扱いのままだった
り。そんな例もよく聞く。

 インクルーシブ教育の理念と日本の現実の隔たりは、まだまだ大きい。

 学校現場や文部科学省からは「急な転換は混乱するだけだ」「財政負担が大変
だ」と懸念の声が上がる。でも、ここは一歩ずつでも現状を変えるしかない。同
省は教員養成や少人数学級のあり方を検討中だが、普通の学校が障害児をより多
く受け止められるような条件整備を、しっかり考えてほしい。

 障害のある子の学ぶ場の決め方も、より丁寧な形に変えた方がいい。

 入学する前年の秋の健診時ではなく、もっと早くから親の相談に乗るようにで
きないか。情報を提供し、子どもの能力を最大限発達させられるような就学先や
学習環境を、安心して選べるようにする。そのうえで親・本人の決定権を保障す
べきだろう。

 埼玉県東松山市のように、すでに教育委員会による就学先押しつけをやめた自
治体もある。東京都や埼玉県は、特別支援学校で学ぶ子が地域の学校にも「副籍」
「支援籍」を置き、仲間として受け入れられる形をとっている。参考にしたい試
みだ。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック