京都府議会 デイジー教科書に関する質疑 平成19年9月定例会一般質問2007-09-27

http://www.kengo-web.com/parliament-2007.09-ippan02.pdf

http://www2.pref.kyoto.lg.jp/cgi-bin/gikai/kaigiroku/dsweb.cgi/document!1!guest01!!21330!0!1!1,-1,1!3175!60174!1,-1,1!3175!60174!4,3,2!60!72!31858!70!39?template=DocPage#hit0


◯中小路健吾君 
 次に、特別支援教育など、学校現場における「デイジー(Daisy)」の活用に
ついてお伺いいたします。
 本年4月から改正学校教育法が施行され、本格的に特別支援教育がスタートい
たしました。この法改正により、盲・聾・養護学校は特別支援学校に一本化され、
地域の特別支援教育のセンター的機能を担うことになります。また、小・中学校、
高等学校、幼稚園においては、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(AD
HD)、高機能自閉症などの児童生徒に対して、よりきめ細かな教育を行ってい
くことになります。
 特に後者については、文部科学省の調査によると、LD、ADHD、高機能自
閉症により学習や生活の面で特別な教育的支援を必要としている児童生徒が約6
%程度の割合で存在する可能性が指摘されており、その対応が喫緊の課題となっ
ています。
 本府においては、小・中学校における校内委員会の設置や特別支援教育コーデ
ィネーターの配置、小・中学校に加え幼稚園、保育所、高等学校等を対象にした
特別支援学校のチームによる地域単位での巡回相談などを通じて、通常学級に学
ぶLD等を含め障害のある児童生徒に対する適切な指導と必要な支援を行うため
のシステムづくりを推進してきました。また、「特別支援教育充実事業」により、
小・中学校に100名の非常勤講師を新たに配置し、さらに中学校にも通級指導教
室を設置するなど、体制整備も順次進めていただいているところであります。
 このように、本府においては、本年4月を待たずに積極的にさまざまな面にお
いてシステムづくりや体制整備・環境整備を進めてきたわけでありますが、今後
は、より具体的にそれぞれ個の特性に合った学習・教育への支援の充実を図って
いく段階に差しかかっていると言えます。
 そこで、今回は、主な発達障害の中でもLD、とりわけ、中でも読んだり、書
いたりすることが苦手とされる「ディスレクシア」への支援について取り上げた
いと思います。
 LD(学習障害)とは、「全般的な知的発達のおくれはないが、聞く、話す、
読む、書く、計算する、または推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に
著しい困難を示すさまざまな状態」を指すとされ、中枢神経系の何らかの機能障
害が原因であると推定されています。中でも、ディスレクシアと呼ばれる症状は、
知的には問題がなく、聴覚・視覚的機能は正常なのに、読み書きに関しては特徴
のあるつまずきや学習の困難を示すもので、LDの中心的な症状だとも言われて
います。その特徴は、かなりの個人差はあるものの、「長い文章を正確に速く読
むことが困難」「文中に出てきた語句や行を抜かしたり、繰り返して読む」「一
字一字は読めても文意をとるのが難しい」などが挙げられ、学校生活の場面で言
えば、教科書や黒板に書かれた字を認識すること自体に困難があったり、その結
果、授業に集中できなかったりするわけです。
 このようなディスレクシアの症状は、見た目に障害があらわれにくく、親や学
校など周囲からの認知は非常に難しいものがあります。場合によっては、本人ま
でもがそういった症状にあることを自覚できないケースもあります。そして、本
人は、学校の授業に一生懸命取り組んでも、どれだけ努力をしても、なかなか成
果を出すことができません。その結果、勉強に取り組む意欲をなくし、自分に対
する自信を失い、さらに学校の授業についていけなくなるという悪循環が起こり
ます。
 こうしたディスレクシアの症状の発現率は、英語圏では10%から20%と言われ
ており、中でもアメリカでは全学童の10%から15%がこの症状を有していると言
われています。我が国においては、先ほどの文部科学省の調査で、およそ4.5%、
すなわち25人に1人程度存在するとされており、決して少ない数字ではありませ
ん。
 そこで、今注目されているのが「デイジー」と呼ばれる技術です。デイジー
(DAISY)とは「Digital Accessible Information System(デジタル・ア
クセシブル・インフォメーション・システム)」の略称で、スイスに本部を持つ
国際共同開発機構である「デイジーコンソーシアム」が、視覚障害者や普通の印
刷物を読むのが困難な人々のために開発・維持している国際標準規格のことで、
専用のソフトウエアを使い、パソコンの画面上で本を再生あるいは作成する技術
です。具体的には、書かれている文字を音声が読み上げ、同時に読み上げている
部分の文字がハイライトされるもので、イメージとしてはカラオケの画面を想像
していただくのが最もわかりやすいのではないでしょうか。これらの技術は、世
界共通のユニバーサルデザインとして供用されており、製作・再生のためのソフ
トも無償で提供されています。
 これらのデイジーを活用した図書の効果としては、「視覚と聴覚の両方から情
報を得ることができるので、読みの困難を軽減することができる」「文字がハイ
ライトするので、文字を目で追うことが困難な人でも使いやすい」「文字を読む
労力が減るため、内容の意味を理解するのに集中できる」「人の手をかりずに自
由に読めるため、自主的に本を読み、読書に対する意欲も高まる」ことなどが挙
げられ、こうした効果を考えたとき、一般の図書だけではなく、教科書のデイジ
ー化とその活用に対する期待は大きいものがあると言えます。
 そこで、まず、こうしたデイジーの学校現場での活用の可能性について本府教
育委員会としてどのようにお考えでしょうか。御所見をお伺いします。
 あわせて、こうした電磁気媒体としての「デイジー教科書」は、学校教育法が
規定する教科書等の中においてどのような位置づけになるのか。教育委員会の御
見解をお伺いいたします。
 現在、デイジー教科書については、普及運動をされているNPO団体が個人に
対して学校や家庭で使用することを前提とした提供をされているものの、学校現
場で広く活用されている状態にはありませんし、まだまだその存在すら知られて
いないのが現状ではないでしょうか。
 そこで、まずは本府教育委員会として、各学校に対して情報発信を行う、ある
いはさまざまな教職員等への研修の場面などで活用するなど、デイジー教科書の
存在や可能性について広く周知していく必要があると考えますが、いかがでしょ
うか。
 デイジー図書やデイジー教科書の普及に当たっては、著作権法上も多くの課題
を抱えています。先ほど申し上げたNPO団体も、教科書をデイジー化するに際
しては、ある特定の個人に対してのみ使用する旨を一つ一つ教科書会社に届け出
て使用をされています。その意味で、デイジー教科書がより広く頒布・使用され
るためには、まだまだクリアしなければならない課題がたくさんあります。しか
しながら、すべての子どもたちに学習の機会を保障していくという観点からは、
デイジー教科書の活用は間違いなく必要です。その意味で、本府における先駆的
な取り組みを期待し、積極的な御答弁をよろしくお願いいたします。

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◯教育長(田原博明君) 中小路議員の御質問にお答えいたします。
 学習障害(LD)の子どもに対する教育的支援でありますが、LDの子どもた
ちには、読み書きについて申しますと、議員御紹介のような学習上の困難が一人
一人に固有に存在しております。
〔副議長退席、議長着席〕
 このため、各学校では、例えば本を読む場合にラインマーカーで色を塗ったり、
作文を書くのにパソコンを使ったりと、一人一人の状況に合わせて指導上の工夫
を行っており、「デイジー図書」につきましても、その工夫の一つとして効果的
な教材になり得るものと考えております。
 現行の制度では、デイジー図書のような電磁記録媒体は、学校教育法に規定す
る教科用図書としては認められておりませんので、「教科用図書以外の図書その
他の教材」いわゆる補助教材として扱われるものと考えておりますが、デイジー
図書を学校教育の場で活用していくためには、御紹介のように著作権法や学校教
育法による法制度上の縛りや作成に要する時間の問題等の課題があります。
 しかしながら、今日の情報化社会において障害のある子どもたちの学習環境を
整えるためにも、議員御指摘のデイジー図書も含めて、LDの子どものための有
効な教材、指導方法の研究を行うことは重要であると考えており、まず特別支援
教育に関する教員研修等の機会をとらえて、デイジー図書を紹介するなどの普及
・啓発に取り組んでまいりたいと考えております。
 今後とも、特別支援教育の指導方法については、多様な研究を進めてまいりた
いと考えております。

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◯中小路健吾君 積極的な御答弁、まことにありがとうございました。先ほども
申し上げましたように、先般の文部科学省の発達障害児等への取り組み状況の調
査を見てましても、今、実態把握をまずされていて、それぞれのシステムづくり、
あるいは体制整備を進めていただいておりまして、ここから先に、いわゆる個別
の、それぞれ個人に対してどういう教育を行っていくのかというところが実は一
番難しい状況なのかなというふうに思っております。実態把握は、公立の小・中
学校でおよそ80%、70%近くできているようでありますが、個別の教育支援計画
の作成については、まだまだ全国的にも20%前後の数字だというような報道もな
されておりますので、そうした個別の、それぞれの子どもに対してどういう支援
ができるのかという部分の一つのツールとして、ぜひこういうデイジー図書のよ
うなものが、また教科書としても活用できるような仕組みづくりについて、これ
は国とも調整が要ると思いますので、ぜひとも積極的にお取り組みをいただきま
すようにお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

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