第10回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会議事録2009-03-02

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/s0302-7.html
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/txt/s0302-1.txt

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第10回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会
   権利条約研究会議事録

1 日時 平成21年3月2日(月)16:00~18:00
2 場所 厚生労働省共用第6会議室(2階)
3 議題 主な論点ごとの検討
     第3 職場における合理的配慮の提供
     第4 権利保護・紛争解決手続
4 資料 資料1 これまでの整理
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0302-7a.pdf
     資料2 論点ごとの検討
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0302-7b.pdf

○座長
 それでは、第10回の労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関
する研究会を開催いたします。本日は、花井委員がご欠席です。あと、田中委員の代理
として平田さんにお越しいただいています。今回は、前回に続いて、残された論点につ
いて、職場における合理的配慮の提供と、権利保護の在り方について、詳しく議論をし
ていただきたいと思っております。まず、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局
 事務局でございます。それでは、資料1に沿ってご説明をさせていただきたいと思い
ます。資料1は、これまでの整理というところで、残された論点、第3の職場における
合理的配慮、それから、第4の権利保護、紛争解決手続きの在り方についての整理を試
みたものでございます。
 まず、第3職場における合理的配慮、1合理的配慮の内容についてであります。まず、
合理的配慮の基本的考え方についてのこれまでのご意見についてです。
 合理的配慮を使用者の義務と捉えるのか、労働者の権利と捉えるのかについては、民
間企業には経営権や株主への責務もあることから、まずは使用者の義務と捉えるべきで
はないかとの意見がありました。また、実際には大がかりな改正となるが、個人の権利
として認めるような仕組みへの転換が必要ではないかとの意見がありました。
 次に、これは前回の議論を踏まえたものですが、合理的配慮は差別禁止の構成要素の
1つとしての位置づけだけではなくて、雇用側と障害者側が歩み寄って、障害者の社会
参加を促進するためのアプローチとしても位置づけるべきとの意見がありました。
 次に、合理的配慮について、労働者本人の要望を受けて、直ちに提供できるようにす
べきではないかとの意見がありました。
 また、合理的配慮の立案の仕方についてのご意見ですが、合理的配慮の概念は法律で
定め、その具体的な内容については、実際に配慮するに当たって、どのくらい費用がか
かるか、負担がかかるか等を検討し、ある程度時間をかけて、指針で定めるのがよいの
ではないかとの意見がありました。
 次に、合理的配慮の基本的な内容についてのご意見でございます。合理的配慮の内容
としては、障害の種類や性質ごとに、重点といいますか、特に重要な点というのは異な
りますが、大まかに言えば、(1)通訳あるいは介助者等の人的な支援、(2)定期的通院、あ
るいは休暇、休憩を認めるといったような医療面での配慮、(3)施設、あるいは設備面で
の配慮が必要であるという意見が大勢でした。
 障害の種類、性質ごとに特に必要な配慮として、様々なご意見がありましたが、簡単
にまとめますと、1つ目は、視覚障害者、聴覚障害者及び盲ろう者の方にとっては、点
字、拡大文字、補聴システム等の機器、あるいは通訳者、援助者等による情報保障、コ
ミュニケーション支援が挙げられるのではないか。それから、内部障害者、あるいは難
病のある人にとっては、定期的な通院を認めていただくなどの配慮、あるいは休憩・休
暇、疾患管理への配慮、それからフレックスタイム等の柔軟な勤務態勢、こういうもの
が必要ではないか。それから、知的障害者、あるいは発達障害者にとっては、身近に気
軽に相談できて、または苦情を訴えられるような窓口がある、あるいはそういう支援者、
サポーターがいるということが重要ではないか。精神障害者にとっては、対人関係、コ
ミュニケーションが苦手である、あるいは疲れやすい等々の特性がありますので、それ
を踏まえて、グループ就労でありますとか、短時間労働等による仕事の確保、あるいは、
そのための職場環境の整備、こういったものが特に必要ではないかとの意見がありまし
た。
 次に、合理的配慮の中でも、採用試験の際の配慮としての意見がありました。採用試
験の際には、コミュニケーション支援が必要との意見がありました。また、採用基準そ
のものを緩和する必要はないが、長時間の試験を避ける、あるいは休憩を間に入れると
いった形で、能力を正しく判定できるような環境を整えることこそが合理的配慮ではな
いかとの意見がありました。
 次に、通勤時の移動支援、あるいは身体介助についてのご意見として、通勤時の移動
支援や身体介助は、企業の合理的配慮というより、むしろ福祉的サービスとして行うべ
きではないかとの意見がありました。また、労働災害では、通勤も対象となっていると
いうことから、通勤も職務と連動するというふうに捉えて、今後は労働政策として行う
べきではないかとの意見がありました。
 それから、相談窓口に関してのご意見としましては、障害者が気軽に相談できて、あ
るいは苦情を訴えられる、そういう窓口が必要ではないか。現行の障害者職業生活相談
員の機能を見直したり、この相談員の選任義務のない中小企業でも同じように相談ある
いは苦情処理の窓口を整備するということも必要ではないかとの意見がありました。
 また、この相談に関しては、専門家というよりも、合理的配慮としての適切な変更、
調整を行える、身近にいる支援者、いわゆるナチュラルサポーター、こういう方を育て
ていくというか、支援していくことが必要ではないかという意見がありました。
 次に、第3の2、過度の負担に関してでございます。過度の負担の基準としては、企
業規模でありますとか、業種、従業員数、環境の特性、あるいはその企業の地域的な文
化・慣習等を参考にして判断すべきではないかとの意見がありました。
 また、現行の裁判例、特に長期に療養している、休んでいる方に対する解雇に関する
事例を見ても、企業規模を考慮して判断しており、今後、過度の負担の判断に当たって
も、事業規模というものはある程度考慮せざるを得ないのではないかとのご意見があり
ました。
 この過度の負担については、過度の負担の基準が低い基準で設定されると、合理的配
慮が役に立たなくなるので、配慮をすることが極めて困難な場合に限定した上で、具体
的な指針を定めるべきとの意見がありました。
 この過度な負担と公的助成との関係についてのご意見がいくつかありました。現行の
納付金制度に基づく助成金、作業設備の助成金とか職場介助者の助成金がございますが、
こういった助成金は、まさに合理的配慮を具体化したものとなっており、適宜この助成
措置を見直すことによって、合理的配慮を実効あるものにしていくべきとの意見があり
ました。
 また、フランスのように、納付金制度に基づく助成金を活用して、企業による合理的
配慮に必要な経費をカバーするためには、現行の法定雇用率1.8%では賄えないのではな
いかとの意見がありました。
 これは、前回の議論を踏まえたものですが、雇用率制度の対象でない事業主も含めて、
全事業主を対象とする場合、その合理的配慮というものを、全事業主を対象とする場合
には、合理的配慮に対する財政支援をどのような形で行えるのかが問題になるとの意見
がありました。
 それから、現行の雇用関係の助成金あるいはその他の支援には、一定の期限がありま
すけれども、合理的配慮の前提となる仕組みとして、期限のない支援制度を確立すべき
との意見がありました。
 続きまして、第4の権利保護、紛争解決手続きの在り方についてでございます。
 まず、1、外部機関等による紛争解決手続きについてでございます。具体的に差別が
あった場合に、個別に訴訟を起こさないと解決しないような仕組みというのは適切では
なく、外部の機関に救済や是正、是正勧告のようなものも含めて、是正を求められる仕
組みが必要との意見が大勢でありました。
 あるいは、その紛争を処理する委員会というものを国や行政から独立した機関、第三
者機関として新たに設ける必要があるのではないかとの意見がありました。その際、新
たな機関というより、既にある労働審判、あるいは紛争調整委員会、あるいは実現可能
性が比較的ある人権委員会、これはかつての人権擁護法案で規定されていたものであり
まずが、この人権委員会等を活用した方がいいのではないかとの意見がありました。
 次に、人権擁護法案のように、判定機能だけではなくて、労働法の専門家であります
とか、障害者のことが分かる方も入って、調整的な機能を果たすような形が、この紛争
解決手続きとしてはいいのではないかとの意見がありました。
 次に、企業内での紛争解決手続きについての意見としましては、紛争といっても、必
ずしも事業主、社長さんが直接差別をするというような場合ではなくて、労働者間の問
題もあるということで、紛争に持ち込まなくても、つまり外部に持ち込まなくても済む
ような企業内で、当事者による問題解決を促進するような枠組みも必要ではないかとい
う意見が大勢でありました。この論点については、先ほどの合理的配慮の相談窓口との
点と重複する部分もあろうかと思われます。
 最後に、第4の2としまして、ガイドラインということで、一体何が差別であるのか、
あるいは何が合理的配慮であるのか、その法律的な基準を示すことが必要との意見が大
勢でありました。また、このような国のガイドラインを作ることによって、個別企業の
中で障害者がサポートを求めていく上でも必要ではないかという意見がございました。
 資料の説明は、以上でございます。

○座長
 ありがとうございました。この資料2の説明はいいですか。
○事務局
 資料2につきましては、前回あるいは前々回もお配りした主な論点毎にどんな意見が
あったかということを列挙したものに、前回の第9回の意見をいくつか、下線部を付し
ているところを追加したというものでございますので、これは適宜ご参照していただけ
れば有り難いと思います。
--中略
○今井委員
 配慮が個別具体的なものであるとなると、前もって配慮すべき内容を決めることがで
きない。しかし、合理的配慮の義務付けはやりましょう。であると、あり得ると私が思
ったのは、合理的配慮をするための仕組みを何らかの形で義務づけるということは可能
なのではないか。つまり、場を設定する。今だとそういう場がなかなかない。訴えるか、
訴えないというレベルになってしまうと、それは今お話しがあったように、本当の意味
での解決にはならない。紛争解決というよりも、歩み寄るということを実現たらしめる
ことを何か法律上の仕組みでできないのかなというふうに思いました。アイディアをい
ただけたらありがたいのですが。
○岩村委員
 そこは、要するに、結局のところ、紛争解決という言葉をどう見るかということでも
あるんですが、仕組みをどう構築するかということもあります。いわゆる我々法律家的
にいうと、権利紛争というのですけれども、要するに、法律を適用して、白黒で決着を
つけるというのではなくて、今おっしゃったように、一種の調整の中で、例えば、こう
いう場合については、こういう助成金が使えて、それをやれば、それにプラスアルファ
ーでこれぐらい出していただければ、こういうことまでは可能ですよという形で、いわ
ば合理的配慮の具体的中身について、話し合いと調整と、それから助言をするというよ
うな場を、仕組みとして考えるということは多分十分にあり得るだろうという気がしま
す。ただ、おそらく、今までは行政が職安を通じて個々の事業主なりに働きかけて、そ
して、こういう助成がありますよとか、という形でやっている。そこに障害者団体の方
が何か絡むことによって、精神障害者の方なら精神障害者の方、知的障害者の方なら知
的障害者の方が入っていくことによって、いわばインフォーマルな形で場が設定されて、
多分、そこで助成をこういうふうに使って、組み合わせてという話になっていく。ただ、
おそらくイメージとしては、ややそれとは結局違ってきて、個々の障害者の方について、
ではどうしますかということになるのでしょう。ここで問題となるのは、採用と、採用
の雇い入れ前の話と、雇い入れ後で、レベルが違ってきてしまうことで、そこがちょっ
と難しい。その個々の労働者である障害者の方について、そういう一種の話し合いの場
と、要するに仕組みをどう構築するかというのを支援・アドバイスする場というのを、
何らかの形で、いわば制度的に構築する。だから、ガチガチの紛争解決というのとはち
ょっと違った仕組みというのを構築するということは、考えることはできます。ただ、
そうなると、金はどうするかとか、いろいろな話が出てきますが、それはとりあえず考
えなければ、そういうことは十分考えられ得るだろうと思います。
○今井委員
 そう考えた時に、A君ならA君が、私に対してこういうことをしてもらいたい、ある
いは、そこまで具体的にはっきり分からないけれども、今のままでは勤務継続が困難だ
というような時に、特に発達障害系の人について言えば多くの人は自分のことを第三者
に分かるように説明することそのものに困難性を抱えています。自分と他人との関係と
いうことの調整そのものに困難性を抱えるために、自分のことを分かってくれる第三者
に説明をしてもらいたい。つまり、外部機関であるかどうかは別として、自分を説明し
てくれる人を必要とすることを制度にビルトインしないといけないと思います。本人が
主張してくださだけでは、配慮を欠くと考えています。
--略