電子書籍フォーマットEPUBと日本語組版 日本電子出版協会 村田 真2012-04-07

http://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/55/1/13/_pdf/-char/ja/

電子書籍フォーマットEPUBと日本語組版
日本でメインストリームにいる人間は国際標準化の舞台ではまず勝てない
Electronic book format EPUB and Japanese typography
Mainstream people in Japan are unlikely to win international
standardization battles
村田 真 1,2
MURATA Makoto 1,2
1 日本電子出版協会
2 IDPF EPUB WG国際化サブグループ
1 Japan Electronic Publishing Association
2 The internationalization sub-group of the IDPF EPUB WG

EPUBの概要

EPUBは,HTML5を筆頭とするWeb技術に基づく電子書籍フォーマットである。EPUB
を制定しているのは,International Digital Publishing Forum(IDPF)という
国際的なフォーラムである。E P UBの仕様書は誰でも無料で入手できるし,EPUB
書籍を作成しても誰にもライセンス料を払う必要はない。
EPUBは,リフロー型のフォーマットである。すなわち,閲覧に用いる機器・ソフ
トウェアおよびユーザーの指定によってページ数が変わる。逆に言えば,閲覧環
境とユーザーにふさわしいページレイアウトが自動的に行われる。
リフローの反対の固定レイアウト,すなわちどんな閲覧環境であってもページ数
が変わらない書籍も,EPUBでは扱うことができる。固定レイアウトの取り扱いを
さらに容易にするため,固定レイアウト用メタデータ語彙(メタデータとして指
定できる値の集まり)が2012年3月に公開予定である。
EPUBにはいくつもの重要な特徴があるが,それらを単に列挙しても本質はかえっ
て見えにくくなる。EPUBで最も大事なのは,以下の3つの理念だと筆者は考える。
理念1:Webと電子書籍のシナジーを追求する
理念2:世界中の言語・文化を扱う
理念3:アクセシビリティのための特殊なものを作るのではなく,普通のものを
アクセシブルにする
これらがIDPFの公式文書に理念として記されているわけではないし,これらとは
関係ない機能(たとえば数式)も多い。しかし,EPUBはこれらの理念をもとに設
計されたと筆者は思うし,EPUB3が他のフォーマットとは一線を画す理由もここ
にあると信じる。
理念1と3についてまず簡単に説明する。理念1は,HTML5をはじめとするW3C技術
を採用することによって体現される。端的に言えば,EPUBはHTML文書などの複数
のファイルをZIPで固めたものにすぎない。理念3は,アクセシビリティを目的と
するDAISYコンソーシアムと連携し,DAISYの機構を採用することによって体現さ
れる。