第190回国会参議院予算委員会会議録(抜粋)平成二十八年三月四日2016-03-30

http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0114/190/19003040014009a.html

DAISY教科書についての質疑

○山本香苗君 馳大臣、お待たせをいたしました。
 DAISY教科書についてお伺いします。
 教科書は子供の学習にとって必要不可欠なものであります、言うまでもなく。
しかし、学習障害とか発達障害など、読みに困難を抱えている子供たちというの
は通常の紙の教科書を読むことができないんです。教科書が読めないと授業に付
いていけません。そこから学習の遅れにつながって、自信を失って自尊感情が下
がっていくと、そのために不登校の状態に至ったという事例もございます。
 こうした子供たちが今自力で教科書を読むためのツールといたしましてDAI
SY教科書というものがございます。このDAISY教科書というものは、教科
書の内容をパソコン等を活用して音声、文字を同時再生できるようにしたもので
ありまして、現在約三千人の子供たちが全国で利用しているわけであります。
 そこで、馳大臣にお伺いします。まず、基本的なことを伺いますけれども、D
AISY教科書の有効性を文部科学省はどう評価されておられますか。

○国務大臣(馳浩君) DAISY教科書の特徴を申し上げます。
 音声を聞きながら、同時に絵、写真を見ることができる、読んでいる箇所がハ
イライトされるのでどこを読んでいるか分かるようになっている、読みたいペー
ジへ移動することができる、文字の大きさや音声のスピードを変更することがで
きる、行間、文字間隔を変更できる、背景の色やテキストの色を変えることがで
きると、こうなっておりまして、子供たちにとりまして学習内容の理解が深まり、
学習意欲の向上につながる、また、自尊感情の向上が図られ、友達関係を構築す
る上でも効果があるという観点で非常に高く評価をしております。

○山本香苗君 DAISY教科書を高く評価をしていただいているわけですが、
それを推進していく上でどういう課題があると考えておられますか。

○国務大臣(馳浩君) DAISY教材等の音声教材については、障害のある児
童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律に基づき教科
用特定図書等として年々活用が進んでおりますが、一、まだ教育委員会や学校に
おける理解が十分とは言えず、その普及促進が必要であること、二、現在、音声
教材は民間団体等においてボランティアの方々の協力を得るなどして製作されて
おりますが、ニーズの高まりとともに製作する教科書の種類が増える中で民間団
体等の負担が増加していること、こういう課題があると考えております。

○山本香苗君 今、馳大臣に課題を挙げていただきましたけれども、私は、何と
いっても一番大きい課題は、このDAISY教科書作成には支援体制として国の
制度が整っていない、これが一番私は大きい課題だと思っています。国の制度が
整っていないから、先ほどおっしゃっていただいたように作成がボランティア頼
みになっているわけです。ボランティアの皆さんは今、DAISY教科書を必要
とする子供たちにもう寝る間も惜しんでもう必死に製作に取り組んでいただいて
おります。それでも、今お話があったように、子供たちの要望に十分応え切れて
いないんです。要望のある教科書の半分程度しか対応できていないと伺いました。
 今おっしゃっていただいた教科書バリアフリー法、この教科書バリアフリー法
では、教科書発行者、すなわち教科書会社がボランティア団体等製作団体に対し
て教科書データを提供することが義務付けられておりますけれども、ここはデー
タ提供にとどまらずに、教科書会社がDAISY教科書を作成をして提供してい
くという仕組みもつくるべきだと思うんです。ボランティアだけでやっていくの
はもう限界なんです。
 DAISY教科書を必要とする全ての子供たちに着実にこのDAISY教科書
を届ける国の仕組みを是非とも馳大臣におつくりいただきたいんですが、いかが
でしょうか。

○国務大臣(馳浩君) 今後のことであります。
 音声教材を必要とする児童生徒の利用が更に進むように、一、民間団体のみな
らず教科書発行者においても教材の開発が行われるような環境づくり、二、音声
教材を製作する民間団体等の経済的な負担軽減を図るための支援の充実、三、教
育委員会や学校にDAISY教材等の音声教材の有効性や活用方法等の周知徹底、
こういった観点で積極的に検討してまいりたいと思います。

○山本香苗君 今、一と言われた教科書会社がDAISY教科書を提供しやすい
環境づくりをする、これは極めて重要なことですが、これ調査研究じゃなくて、
しっかり文部科学省が音頭を取って進めていただけますね。

○国務大臣(馳浩君) 進めるようにいたします。

   〔山本香苗君「ようやくここまで来ました。あともう一つ大きな課題がご
ざいます」と述ぶ〕

○委員長(岸宏一君) 山本さん、委員長の許可を得て。

○山本香苗君 済みません、失礼いたしました。
 あともう一つ、実は大きい課題がございまして、それはDAISY教科書を必
要とする子供の把握です。
 学習障害の疑いのある子供は文科省の推計によりますと全体の四・五%、つま
り一クラスには一人いるという計算になりますけれども、しかし学習障害者等の
発達障害は一見すると障害と分からないことが多くて、単に勉強ができない、そ
うみなされてしまうケースが多いんです。それに、いまだにDAISY教科書を
知らない行政や教育関係者の方も少なくありません。そのため、必要としていて
もDAISY教科書を使うことができない子供がたくさんいるんです。
 DAISY教科書を必要とする子供を把握する仕組み、ちゃんとニーズを把握
する仕組みを同時に整えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(馳浩君) 文部科学省としては、来年度以降、教育委員会を通じて
DAISY教材等の音声教材を必要とする児童生徒数を把握する仕組みを前向き
に検討してまいります。

○山本香苗君 ありがとうございます。
 目の悪い人が、私も目が悪いんですけど、コンタクトや眼鏡を使ったらよく見
えるようになるように、こういう子供たちはDAISY教科書があれば読めるよ
うになるんです。能力が発揮できるようになるんです。これは一億総活躍になる
と思います。是非、春にプランを作りますが、その中に文科省としても盛り込む
よう働きかけていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わり
ます。
 ありがとうございました。

○委員長(岸宏一君) 以上で山本香苗さんの質疑は終了いたしました。
(拍手)

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