社会保障審議会 障害者部会 報告 障害者自立支援法施行後3年の見直しについて 2008/12/162008-12-16

http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2008/12/s1216-5.html
http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2008/12/dl/s1216-5a.pdf

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社会保障審議会 障害者部会 報告 障害者自立支援法施行後3年の見直しについて
平成20年12月16日

(本報告について)
○障害者自立支援法は、三障害の一元化、利用者本位のサービス体系への再編、
就労支援の強化、支給決定への客観的基準の導入、国の費用負担の義務的経費化
などを行うことにより、障害者の地域における自立した生活を支援することを目
的として、平成18年4月に一部、同年10月に全部が施行されたものである。

○同法は、それまでの制度を大幅に見直したものであり、法の着実な定着を図る
とともに、現場から指摘された利用者負担などの課題に対応する必要があること
から、平成18年12月の法の円滑な運営のための「特別対策」、平成19年12月の法
の抜本的見直しに向けた「緊急措置」において、利用者負担の軽減や事業者の経
営の安定に向けた激変緩和措置等が講じられている。

○障害者自立支援法の附則では、施行後3年を目途として法律の規定について検
討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じることとされている。
このため、本部会では、様々な関係者の意見を踏まえて、施策全般にわたり見直
しのための検討を行い、施行後3年の見直しにおいて対応すべき事項、及び今後
更に検討していくべき事項について、取りまとめたものである。

○本報告に基づき、施行後3年の見直しに係る関係法律・制度の改正や、平成21
年4月の障害福祉サービスの費用の額(報酬)の改定等に向けて、厚生労働省に
おいて具体的な制度改正について検討し、実現を図るべきである。
また、本報告の中には、今回の部会での議論の中では、一定の結論を得るまで
に至らず、今後、引き続き検討していかなければならない事項もある。こうした
残された課題については、厚生労働省等において、鋭意検討を継続していくべき
である。

○また、現在、政府において「障害者の権利に関する条約」の批准に向けた検討
が行われており、今回の見直しに当たっても配慮するとともに、今後批准に向け
て同条約との整合性が図られるよう更に検討することが必要である。

○さらに、今後も絶えず現場の実態の把握に努めるとともに、今回の見直しの一
定期間後(例えば今回と同様に施行後3年を目途)に、今回同様、実施状況や取
り巻く環境の変化を踏まえ、改めて制度全般について見直しを加え、必要な措置
を講じることにより、障害者の自立支援に向けたより良い制度へと改善していく
取組を続けていくべきである。

(見直しに当たっての視点)
○本部会では、具体的な論点ごとに議論を重ねてきたが、その議論を通じ、総じ
て次のような視点が必要との指摘があった。

○第一に、当事者中心に考えるべきという視点である。
障害者自立支援法は、障害者が自立した生活ができるよう必要な支援を行い、障
害者の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と
個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現を目的としているもの
である。
見直しの検討に当たっては、障害者にとってより良い制度となるかどうかという
視点が何よりも重要である。

○第二に、障害者の自立を更に支援していくという視点である。
障害者自立支援法については様々な課題があり、必要な見直しを行っていくべき
であるが、障害者ができるだけ地域で自立して暮らせるようにするという基本理
念については合意が得られているものであり、そのためのより良い制度を目指し
ていくという視点が重要である。例えば、相談支援や、地域移行の支援、障害児
支援など、今後更に充実を図っていくべきである。

○第三に、現場の実態を踏まえて見直していくという視点である。
障害者自立支援法は、それまでの制度を大幅に見直した新たな制度であり、施行
後の状況をみると、その制度設計で意図したものが必ずしも現場の実態に合って
いないという事項もいくつかみられる。当初の制度設計の意図も十分に踏まえつ
つ、事業者における人材の確保や安定的なサービス提供体制の確保という観点も
考慮しながら、不都合が生じているものについては改善を図っていくという視点
が重要である。

○第四に、広く国民の理解を得ながら進めていくという視点である。
障害者の自立を国民皆でどのように支えていくか、あるいは障害の有無にかかわ
らず共に育ち、共に暮らし、共に働く共生社会をいかに実現していくかについて
は、障害の当事者や直接的な関係者のみならず、広く国民皆で考え、取り組んで
いくべき課題である。本部会での議論を国民に分かりやすく説明するなど、広
く国民の理解を得ながら進めていくという視点が重要である。

----------- 以下、発達障害関係。

(総合的な相談支援を行う体制)
○さらに、地域における相談支援体制の充実を図っていくためには、都道府県の
役割も重要である。障害者自立支援法の実施主体は市町村であり、相談支援につ
いても第一義的には市町村における体制整備が必要となるが、都道府県は、特に
町村部における体制整備について必要な支援を行ったり、広域的な調整を行った
り、引き続き、発達障害者支援センターや精神保健福祉センター等において専門
的な相談支援を実施したりすることにより、その役割を果たしていくべきである。

(就労支援に携わる人材の育成)
○就労移行支援及び就労継続支援が、それぞれ有効に機能を発揮できるよう、
 ○1就労支援事業に必要なノウハウや技術を習得するための研修の機会の拡充
 ○2機能強化のため技術を習得した者等の配置の促進
などの人材の育成・確保策を進めるべきである。その際、発達障害に関する専門
性や知識の向上に配慮することも重要である。

(通所施設の地域への支援の役割の強化)
○障害児の通所施設について、地域への支援の役割を強化していく観点から、地
域に出て行って親子や保育士等を支援する機能や、発達障害など発達上支援が必
要な子どもの相談支援を行う機能を十分に果たせるようにしていくべきである。

(発達障害及び高次脳機能障害の障害者自立支援法における位置付け)
○発達障害及び高次脳機能障害については、概念的には精神障害又は知的障害に
含まれており、障害者自立支援法の対象となりうるが、障害者自立支援法上のサ
ービスをより受けやすくするために、障害者自立支援法上の障害者に含まれるこ
とを何らかの形で明確化する必要がある。

○その際、特に発達障害については、発達障害者支援法が整備され、発達障害者
の定義規定も置かれていることを踏まえ検討すべきである。