教育の情報化ビジョン(案)~21世紀にふさわしい学びと学校の創造を2011-03-16

http://jukugi.mext.go.jp/archive/504.pdf

教育の情報化ビジョン(案)
~21 世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して~

第四章 特別支援教育における情報通信技術の活用

(障害の状態、特性等に応じた留意点)
○特別な支援を必要とする子どもたちについては、それぞれの障害の状態や程度、
必要とされる特別な支援の内容などが一人一人異なっている。

○第一章で述べたように、情報通信技術は、特別な支援を必要とする子どもたち
にとって、障害の状態や特性等に応じて活用することにより、各教科や自立活動
等の指導において、その効果を高めることができる点で極めて有用である。特別
支援教育における情報通信技術の活用にあたっては、障害の状態や特性等に応じ
て、例えば以下の点に留意することが重要である。

○発達障害のある子どもたちについては、情報機器に強く興味・関心を示す者も
いる。
このような子どもたちには、学習意欲を引き出したり注意集中を高めたりするた
めに情報通信技術を活用することが考えられる。例えば、学習障害のある子ども
たちの中には認知処理の偏りのため文字を読むことが困難な者がいる。そのよう
な場合、情報通信技術によりその偏りや苦手さを補ったり、得意な処理を伸ばし
たりするなどの活用も考えられる。

○子どもたちの障害としては、発達障害のほか、視覚障害、聴覚障害、知的障害、
肢体不自由、病弱・身体虚弱、言語障害、情緒障害などがある。これらの子ども
たちに対して、障害の状態や特性等に応じて情報通信技術を活用するとともに、
個別の教育的ニーズに応じた学習用コンテンツを用意することが重要である。

○具体的には、視覚障害のある子どもたちについては、読みにくい画面の情報を
文字の拡大やレイアウトの変更、色調の調節などで補うとともに、視覚から得ら
れない情報を聴覚や触覚などの代替手段を使って補うなどの工夫を行うことが重
要である。聴覚障害のある子どもたちについては、適切に聴覚活用を図りつつ、
視覚等の他の感覚器官の情報に置き換えて情報を伝達したりするなどの工夫を行
うことが重要である。
知的障害のある子どもたちについては、使いやすい補助入力装置や理解の程度に
応じたコンテンツの選択を行うことが重要である。肢体不自由のある子どもたち
については、適切な支援機器の適用ときめ細かなフィッティングの努力が重要で
ある50。

○また、病弱者である子どもたちについては、生活体験が不足しがちであったり、
学校に通えなかったり、学校に通えても学習活動に制約を受けたりする場合もあ
る。このため、実際に行うことが難しい観察や実験の補助としてパソコン等を使
った擬似的体験を行ったり、インターネットや電子メール、ウェブ会議システム
等の活用を通じたコミュニケーションの維持・拡大等を行えるようにすることも
重要である51。

---------

50 複数の障害を併せ有する子どもたちや重度の障害のある子どもたちについて
は、意思の表出や外界の情報の収集が特に困難な場合がある。このため、障害の
特性に応じた支援技術を組み合わせたり個々に工夫したりするなど、他者とのコ
ミュニケーションを豊かにするための支援が重要である。

51 このような情報通信技術の活用は、不登校の子どもたちの指導にも有効であ
ると考えられる。

○以上のような情報通信技術の活用については、これまでの特別支援学校におけ
る取組の実績・成果を踏まえつつ、デジタル教科書・教材等を活用した実証研究
を通じて、これを更に充実・発展させることにより、今後の小・中学校等におけ
るこれらの障害のある子どもたちの学習にとっても、有効かつ重要なツールを提
供しうるものと期待される。また、実証研究等の成果を生かして、関係者への指
導事例の提供とともに、条件整備の拡大を図っていくことも重要である。

○文部科学省では、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及
の促進等に関する法律」を踏まえ、発達障害を含む障害のある子どもたちのため
に、教科用特定図書等を作成するボランティア団体等に対して、教科書デジタル
データを提供するなどの支援を行っている。また、発達障害等の子どもたちの障
害の特性に応じた教材等の在り方やこれらを活用した効果的な指導方法や教育効
果等について実証研究に取り組んでいる52。これらの取組を通して、障害のある
子どもたちの学びを一層支援することが必要である。さらに、今後、紙媒体の教
科書のテキストデータ等を提供することについても検討する必要がある。

○デジタル教科書・教材については、障害の状態や特性等に応じた様々な機能の
アプリケーションの開発が必要である。また、情報端末等については、特別な支
援を必要とする子どもたちにとっての基本的なアクセシビリティ53を保証できる
ことが必要である。今後、デジタル教科書・教材や情報端末等の整備を図る際に
は、障害の状態や特性等に応じて、例えば、表3に示すような配慮や工夫を行う
ことが期待される。

(関係機関との連携)
○特別支援教育においては、一人一人の学習の目標・状況等を教員間で共有する
ことや、学校と家庭、地域や、医療、福祉、保健、労働等の関係機関との連携を
密にすることが求められ、その際には情報通信技術を活用することが有効である。
こうした取組を充実することは、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かい指
導・支援を行うための個別の指導計画及び教育支援計画のより効果的・効率的な
作成・活用にも寄与するものと期待される。また、国において特別支援教育にお
ける情報通信技術の活用を検討するに当たっては、独立行政法人国立特別支援教
育総合研究所と密接に連携し、その研究成果を生かすことが重要である54。

---------

52 発達障害に対応した調査研究として、デジタル教科書の備えるべき機能、電
子ファイルのフォーマット、製作・流通・保管方法等について、国際規格である
デジタル録音図書のDAISY(デイジー)を用いた研究、学校現場において読みに
困難のある児童生徒がパソコンなどの支援技術(AT : Assistive Technology)
を活用するための具体的な方策についての研究、読み書き障害のある児童生徒が
聴覚から学習ができる音声合成ソフトウェアの開発・活用についての研究を実施
している。

53 情報機器、ソフトウエアなどを支障なく操作又は利用できること。

54 同研究所は、特別支援教育のナショナルセンターとして、主として実際的な
研究を総合的に実施するとともに、特別支援教育関係職員に対する専門的、技術
的な研修等を行っている。例えば、教育の情報化に関しては、情報化及び教育支
援機器に関する中長期的展望に立った研究を推進するとともに、障害のある子ど
もたちの教育を担当する教職員に対して情報手段の活用等について研修を行って
いる。

表3 特別な支援を必要とする子どもたち向けのデジタル教科書・教材等におい
て付加することが期待される機能の例

・速度調整が可能な読み上げ機能に加え、画面上で読み上げの位置をハイライト
することにより示したり、必要な情報のみに制限したりする機能(読み上げ機能
については、ソフトの高品質・高精度化を図り、誰もが利用できる形であること
が期待される)。
・背景色や文字色を調節する機能
・文字の拡大、フォントの変更及びそれに伴い行間を拡大する機能
・文字に振り仮名を付ける機能
・文節や単語などで区切る機能
・文字に動画や静止画、音声を関連付けられる機能

(留意点)
・デジタル教科書・教材の機能は、複合的に使用できることが望ましい。
・教員が子どもの読み方の特性を踏まえてレイアウトなどを簡単に調整できるよ
うな工夫を施すなど、障害のある子どもの読みやすさにも配慮したコンテンツの
作成に努めることも重要である。障害種によってはその内容にイラストや写真、
キャラクターを取り入れることなどにより、学習意欲を喚起する効果も期待され
る。
・通常のキーボード入力が難しい場合に、特殊なキーボードやジョイスティック、
各種センサーを利用したスィッチ、手書き入力装置などの入力支援装置(ソフト
ウェアにおいても機能するようにする必要がある)を活用できるようにすること
が期待される。
・文字の拡大やフォントの変更、文字色の調節など文字表示に関する機能につい
ては、教員が障害の状態等を的確に把握した上で、子どもたち個々にカスタマイ
ズを行い、そのカスタマイズ情報をもとに、必要に応じてあらゆるページの表示
を同様に変更できるようにすることも効率的である。
・文字に動画や静止画、音声を関連付けられる機能については、障害により生活
体験等が不足している場合、関連する動画等を適宜参照できるようにすることで、
子どもたちの学習の理解促進に効果が期待される。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック