特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第2回) 議事録 2010/08/112010-08-11

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/siryo/1298180.htm

1.日 時 平成22年8月11日(水曜日)15時00分~18時00分

2.場 所 旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議 題
  1.就学相談・就学先決定の在り方について自治体からのヒアリング
  2.自由討議
  3.その他

4.議事録(抜粋)

【品川委員】 教育ジャーナリストの品川です。どうぞよろしくお願いします。
御報告ありがとうございました。長野県教育委員会に質問があります。インクル
ーシブ教育を実質的に行い、すべての子どもの教育権を保障するためには、とに
かく受け入れるというのではうまくいくとは思えません。インクルーシブ教育と
いう以上、単なる場の共有ではないわけですから、受け入れる側の教育と、受け
入れられる側の教育内容の担保といいますか、専門性の担保が必要だと考えてい
ます。措置変更が最終的には9割という御報告でしたけれども、この数字だけを
拝見しても、私にはよくわかりませんのでお伺いしたいのですが、措置変更の主
な理由は何なのでしょうか。受け入れられたとしてもその子のニーズに応じた教
育がなければ変更するのは当然と考えます。そういった変更理由に対して、例え
ば、教育委員会側はどのような指導を学校側になさったのかなさっていないのか。
あるいは、先ほど「連携」とおっしゃっておられました。私自身、長野県はよく
取材しておりますのである程度の実態は把握しているつもりですが、受け入れる
段階での「連携」、つまり担任や学年主任、学年団、学校長らとの「連携」、あ
るいはそれぞれの専門性の担保についてはどのようなことをなさっておられるの
か、教えていただけませんしょうか。宜しくお願いいたします。

【長野県教育委員会岸田指導係長】 長野県教育委員会の岸田です。措置変更を
されていく主な理由ですが、子どもの現在置かれている学習環境での育ちが一番
大きいと思います。それを一番身近で見ている学校の校内就学相談委員会で判断
をして、その時々に最も適切であると考える教育を考えていくことが一番の元だ
と思います。そして、それを保護者、また本人にお伝えして、今後の進路を考え
ていくということだと思います。
 それから、2番目の専門性の担保についてですが、校内、あるいは管理職に対
する就学相談に係る専門性というのは、長野県教育委員会で義務付けられている
校長・教頭の新任研修では特別支援教育、就学相談に係る内容については悉皆研
修となっています。県でさまざまな研修会、協議会等を設けて、管理職にも参加
を促しています。以上です。

【品川委員】 おっしゃることは大変よくわかるのですが、インクルーシブと申
します以上、受け入れられた先の担任の先生の専門性などはどのように担保され
ているのでしょうか。と申しますのも、担任の先生の専門性がないままに、ただ
生徒を受け入れるということであれば、当然ながら、学習環境として望ましくな
いことが年齢に応じて顕著になってくると思われます。

【長野県教育委員会岸田指導係長】 長野県教育委員会の岸田です。委員の御指
摘のとおりです。そのために、例えば障害の重い子どもを通常の学級で受け入れ
る場合、校内では担任だけでは対応が難しいこともあると思います。そのような
ときには、市町村教育委員会からの支援加配、また、校内に特別支援学級等があ
れば、指導内容、指導方法についての助言を受けながら指導を検討していきます。
個別の指導計画等の作成に当たっては、担任が主体となるのはもちろんですが、
校内の委員会等で十分議論を重ねて教育対応を考えていく方法をとっています。
以上です。

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【山岡委員】 すみません、中澤委員に宿題になってしまうかもしれませんが、
今回、品川委員がおっしゃったこととも通じるのですけれども、就学指導という
ことで、就学時に決めてしまってよいのかと私ずっと思ってきました。おそらく
その前の段階や、入学してからも必要なのではないかと思います。確かに小学校
に入るとき、あるいは中学に入るときなんかは、どこに行くかを決めなくてはい
けないと思いますが。
 アメリカでいくと、IEPというのは何年かに一度つくるのではなくて、毎年見
直すことになっていたと思いますので、その時にどこで教育するのが良いかを決
めればいいのではないかなと私は思っています。そういうことがないかというこ
と。
 それから、例えば大阪府の場合は特別支援学級がすごく柔軟に運用されている
ので、保護者はそこを希望するケースが多い。大阪府の場合は逆に言うと、通級
指導教室が少し少なかったりしますし、あるいはそういうふうに特別支援学級の
希望が多いと、特別支援学校に行くケースが少なかったりすると思うのです。あ
るいは東京都や名古屋、大阪などの場合は、どこに住んでいても、特別支援学校
が通学可能な範囲にありますけれども、地方に行ったら、通えるところになかっ
たりとか、あるいはさっき品川委員がおっしゃったように、教師の質の問題が全
然違うなど。それから通常の学級において、アメリカの場合は、通常の学級に在
籍していても、IEPがつくられるので、個に応じた指導が行われているわけです
よね。ということがあったりとか、その中でリソースルームが使えたりとか、い
ろいろな制度や仕組みが違うので、必ずしも就学指導だけをどうしたらいいかと
いう問題ではなくて、全体の体制や仕組み等の関係で考える必要があります。私
は、日本においてはおそらく、さっき言われた専門性のある教育的支援が今の通
常の学級の中ではなかなか難しいと思われるので、現状の中においては何らかの
特別な場における指導が必要だと思っています。けれども、そういう段階の中に
おいて、6歳の秋に1回就学指導で決めてしまったら、ずっと変えられないのかと、
疑問に思っています。先ほどの長野県教育委員会の例ですと、判断と異なる措置
があるということを言われていましたけれども、実は中学校1年生になったとき
に変わるケースが多いとおっしゃっていました。うちの子どもはそうですけれど
も、6歳のときと12歳のときと明らかに状況が違いました。ですから、6歳のとき
に決められた状況判断が正しかったのではなくて、それは中学校1年生のときに
は正しいかもしれませんけれども、小学校の1年生から6年生の間は通常の学校に
いたほうがよかったのかもしれない。そのところが全くわからないわけです。中
学校1年生のときに特別支援学校の中学部に通われたかもしれませんけれども、
振り返ってみたら、小学校の1年生から例えば3年生ぐらいまでは通常の学級のほ
うがよかったのではという判断はなかったのか、などですね。そういうふうに考
えると、もう少し毎年柔軟に、就学指導とか言わないで、教育相談の中で、この
学年においてはどうしたらいいのかとかいうような考え方というのはないのかと
かいう問題提起と、アメリカの例でいくと、就学時とか、IEPとかの関係はどう
なのか、という点について中澤委員にお聞きしたいと思います。

【中澤委員】 中澤です。私の知っている範囲でお答えします。アメリカの場合
ですけれども、実はアメリカの場合、特別支援教育についての法律は幾つかのパ
ーツに分かれていまして、ゼロ歳から2歳までと3歳から21歳と大きく2つに分か
れています。ゼロ歳、できるだけ早く発見して対応するということになっており
まして、特別な支援が必要な子どもについては、ゼロ歳から21歳までカバーされ
ております。ゼロ歳から2歳までは個別の家族支援プログラムというもので、子
どもというよりも家族を視野に入れた支援計画がつくられます。
 それから、御指摘のように、小学校入学の時点で急に決めるというのではなく、
実はアメリカの場合、可能な限り3歳から個別化された教育プログラムがつくら
れることになっています。そして3歳の段階で障害がわかってプログラムをつく
りましたら、その子に対しては優先的に何らかのプログラムが、幼稚園だとか、
キンダーといいまして小学校の1年前、小学校の中にあるんですけれども、かな
り多くの学校が、そういったところで支援が受けられるようになっていまして、
3歳からそういうプログラムがある子どもは、当然その延長上で就学先というの
が継続的な検討の中で決められていきます。
 あともう一つは、在学してから、やはりちょっと違うぞと思われて診断をされ
る場合には、入ってからですが、山岡委員の御指摘のように、IEPというのは毎
年必ず見直しをするという規定がありまして、これはイギリスの判定書も同じで
す。ですので、一度決めてしまったらずっと続くというものではありません。そ
の計画に沿ってやった効果がどうであったか。もうこの場で教育しないで普通学
級に行っても大丈夫か、そういったことも含めて毎年の見直しで行われるという
ことになっています。

【山岡委員】 もう1点だけ、IEPは誰がつくるかというところをもう一度、お願
いします。アメリカの例で結構ですので。

【中澤委員】 アメリカのIEPは法的な拘束力を持つ強いものです。単純な教育
の計画ではありません。このアメリカのIEPの場合は、まずこれを管轄するのは
学区です。そして、メンバーの構成は、先ほど申し上げましたように、保護者は
不可欠です。必要ならば子ども本人、それから特殊教育の教師、それから普通学
級の教師、それから先ほど言いましたように、アメリカではアセスメントは単一
のものでやってはいけないことになっていまして、多角的に該当する領域のアセ
スメントを全部やらなければいけませんが、そのアセスメント結果がどういう支
援の必要性を意味するかということを翻訳できる専門家が中に入る必要が指摘さ
れています。それから、そういった資源というのがどこにあって、どういうふう
に調達可能かというようなことを把握している学校の、多くの場合、校長さんで
あるとか、あるいは学区の担当者が入って話し合いをして、その中で、話し合い
で決定されていくというのが原則になっています。

【山岡委員】 要は日本でいうと、個別の指導計画は担任の先生や、実際に生徒
を教えていらっしゃる先生がつくられるんですけれども、アメリカの場合はつく
るのは、そういう指導される先生ではないというふうに理解していますが、そう
いう理解でよろしいでしょうか。

【中澤委員】 学校の中でやるいろいろなプランは別として、今言った法定文書
としてのIEPはそういった方々の中でつくられて、結果は法的な拘束力を持つも
のです。一言付け加えますと、大変お金がかかります。毎年の見直しにも膨大な
お金と、それから膨大な書類仕事が増えて、実は功罪相半ばしているところで、
先生方への負担も大変多いと聞いています。
 イギリスのほうの判定書についても、1回やるたびに何十万円かかってしまう
というようなことで、そこにお金を入れるよりは、スクール・アクション・プラ
スでもっと柔軟に使ったほうがいいのではないかという意見も実践者の中にはあ
るようです。ただ、親としては、判定書があったほうが確実に法的に守られるの
で欲しいというところもあって、ただ、イギリスは去年よりも少し判定書を持っ
ている率が低くなっているというデータは出ています。以上です。

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