国による基本合意の反故を許さない! 集団訴訟弁護団 協同抗議声明2012-02-09

http://www.jngmdp.org/wp-content/uploads/20120209-ikensoyoudan1.pdf
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-2363.html

       2012年2月9日 障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団

 昨日2月8日、「障がい者制度改革推進本部(本部長野田総理大臣)」の下の
「推進会議」の下の「総合福祉部会」第19回会議にて委員に法案が説明された。
そして、さきほど私たち訴訟団に厚生労働大臣政務官らから説明された同じ法案
は、障害者自立支援法を廃止することなく、障害者自立支援法の一部を改正する
法案、すなわち、障害者自立支援法を延命し、恒久化法するものであった。
 説明された内容は、法案の体裁さえ成しておらず、一昨年の一部改正法(つな
ぎ法)を少し手直しする程度のもので、およそ「障がい者制度改革」「骨格提言」
の結実、全国の障害者の声を反映したものとは言えない。
今回の内容で私たちは到底納得できない。
 国連障害者権利条約批准への国内法改正であるはずが、「権利」の片りんもな
く、55名の委員が一つにまとまった総合福祉部会骨格提言と似ても似つかない
ものであった。
看板だけ付け替えて「廃止」とは詭弁である。
辞書で「詭弁」は「みかけ上は正しそうな虚偽の推論で誤魔化す議論」とされて
います。厚生労働省の方便は「みかけの上でも無理」な出鱈目に過ぎず「詭弁以
下」である。
 公約も基本合意も閣議決定も制度改革も裁判所に対する約束も全て反故にする、
誠に驚くべきことであり、最低限の国家としてのモラルさえ感じられない、これ
が国家の行うことかと呆れ果てるしかない。

【障害者自立支援法の法令廃止条項は新法の絶対条件である】
今からでも遅くない。基本合意に基づき、法案には必ず、次の条項を盛り込むべ
きである。
 1 障害者自立支援法の廃止条項
  附 則
(障害者自立支援法の廃止)
第一条 次の法律は、平成25年8月31日、廃止する。
 障害者自立支援法(平成十七年十一月七日法律第百二十三号・平成二十二年十
二月十日法律第七十一号・*)。 *他記載略

「市町村の混乱」などもっともらしいことが報じられているが、施行の際の円滑
実施は、身体障害者福祉法等支援費制度から障害者自立支援法に移行したときに
用いた、新法移行経過期間を設定したり、看做し規定の活用などで工夫可能であ
る。

[障害者自立支援法違憲訴訟の提起]
 2008年~2009年全国の障害者ら71名が原告となり、障害を障害者個人の責任と
する障害者自立支援法(以下「自立支援法」)は基本的人権を侵害し、憲法に違
反するとして、法律を制定した国を被告とした違憲訴訟を全国で起こした。
 私たちは違憲訴訟にて次の通り主張した(東京訴状の総論の冒頭と最終章の一
節。)
第1章 障害者自立支援法及び応益負担の本質的問題性

一 障害者自立支援法の存在自体があってはならないこと。
第15章 サービスメニュー羅列法から権利保障法へ
 以上により、障害者自立支援法には根源的な問題があり、直ちに廃絶されるべ
きことが明らかにされた。
 では障害者自立支援法に代わりうる法律はどのようなものなのであろうか。

この違憲訴訟の訴えに対して国は次のように応えた。
1  2009年9月19日[厚生労働大臣による障害者自立支援法廃止方針の表明]
2  9月24日[国は法廷で、障害者自立支援法廃止を前提とした話し合い解決
   の方針を表明] 期日はストップ
3  10月6日 厚生労働大臣政務官
  政務官室にて、山井和則政務官「障害者自立支援法が障害者の尊厳を傷つけ
  たことを認め、原告らに共感している旨訴訟団に話し合いの趣旨を説明」
4  10月~翌年1月初旬 [協議が重ねられた]
 民主党障害者PTの国会議員(現WT座長中根議員含む)の司会で協議が重ね
 られた。
5 [2010年1月7日 基本合意調印]
 長妻昭厚生労働大臣が障害者自立支援法廃止を基本合意文書に署名・公印し確
約。

 国が訴訟団に確約した基本合意文書には何と書かれているか。
国は障害者の尊厳を深く傷つけたことに対し心から反省の意を表明し、この反省
を踏まえ「2013年8月までに自立支援法を廃止」
障害者自立支援法違憲訴訟の原告ら71名は、国(厚生労働省)による話し合い
解決の呼びかけに応じ、これまで協議を重ねてきたが、今般、本訴訟を提起した
目的・意義に照らし、国(厚生労働省)がその趣旨を理解し、
二 障害者自立支援法制定の総括と反省
 1 国(厚生労働省)は、憲法第13条、第14条、第25条、ノーマライゼーショ
ンの理念等に基づき、違憲訴訟を提訴した原告らの思いに共感し、これを真摯に
受け止める。

すなわち、 原告団らの
「障害者自立支援法の存在自体があってはならないこと。」
「障害者自立支援法には根源的な問題があり、直ちに廃絶されるべきことが明ら
かにされた。」
という憲法違反と法令廃絶の訴えに対して
国は「違憲訴訟を提起した原告らの思いに共感し」「2013年8月までに障害
者自立支援法を廃止」するので訴訟を終結して下さいと呼びかけ、原告らはその
公文書(国務大臣の調印する公文書・訴訟上の和解調書における法令廃止の確約)
での国の約束を信じたから、訴訟を取り下げ、請求を放棄したのである。
そして、改めて訴訟上の和解が全て成立した2010年4月21日、首相官邸にて鳩山
由紀夫総理大臣が、改めて障害者自立支援法がたいへんな迷惑をお掛けしたと原
告団に謝罪し、障害者自立支援法の廃止を約束した。

 「廃止とは、障害者自立支援法の一部改正によるやり方があります」
などということは一言も説明されていない。
そのようなことを言われていれば訴訟団は和解をするわけがない。
障害者自立支援法の一部改正をもって「これで廃止」などと押し通す野蛮なやり
方は「国家的な詐欺行為」というほかない。
断じてあってはならない。

趣 意 書  障害者自立支援法訴訟団  2010年1月7日

 これまで,われわれ障害者自立支援法訴訟団は,政府からの本訴訟の解決に向
けた協議の申し入れを受け,協議を重ねてきました。
本日、基本合意文書締結の合意に達しましたので、本日以降、本訴訟を終結させ
るものとして合意する趣旨を表明いたします。

これは厚生労働省のHPにも掲載されている、基本合意文書と一体となった訴訟
終結の趣意書です。

障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書
  平成22年1月7日

 障害者自立支援法違憲訴訟の原告ら71名は、国(厚生労働省)による話し合
い解決の呼びかけに応じ、これまで協議を重ねてきたが、今般、本訴訟を提起し
た目的・意義に照らし、国(厚生労働省)がその趣旨を理解し、今後の障害福祉
施策を、障害のある当事者が社会の対等な一員として安心して暮らすことのでき
るものとするために最善を尽くすことを約束したため、次のとおり、国(厚生労
働省)と本基本合意に至ったものである。

一 障害者自立支援法廃止の確約と新法の制定
 国(厚生労働省)は、速やかに応益負担(定率負担)制度を廃止し、遅くとも
 平成25年8月までに、障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を
 実施する。そこにおいては、障害福祉施策の充実は、憲法等に基づく障害者の
 基本的人権の行使を支援するものであることを基本とする。

二 障害者自立支援法制定の総括と反省
 1 国(厚生労働省)は、憲法第13条、第14条、第25条、ノーマライゼーショ
   ンの理念等に基づき、違憲訴訟を提訴した原告らの思いに共感し、これを
   真摯に受け止める。
 2 国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態
   調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施
   行するとともに、応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障
   害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者
   の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障
   害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏ま
   え、今後の施策の立案・実施に当たる。
 3 今後の新たな障害者制度全般の改革のため、障害者を中心とした「障がい
   者制度改革推進本部」を速やかに設置し、そこにおいて新たな総合的福祉
   制度を策定することとしたことを、原告らは評価するとともに、新たな総
   合的福祉制度を制定するに当たって、国(厚生労働省)は、今後推進本部
   において、上記の反省に立ち、原告団・弁護団提出の本日付要望書を考慮
   の上、障害者の参画の下に十分な議論を行う。

三 新法制定に当たっての論点
 原告団・弁護団からは、利用者負担のあり方等に関して、以下の指摘がされた。
○1 支援費制度の時点及び現在の障害者自立支援法の軽減措置が講じられた時
   点の負担額を上回らないこと。
○2 少なくとも市町村民税非課税世帯には利用者負担をさせないこと。
○3 収入認定は、配偶者を含む家族の収入を除外し、障害児者本人だけで認定
   すること。
○4 介護保険優先原則(障害者自立支援法第7条)を廃止し、障害の特性を配
   慮した選択制等の導入をはかること。
○5 実費負担については、厚生労働省実施の「障害者自立支援法の施行前後に
   おける利用者の負担等に係る実態調査結果について」(平成21年11月26日
   公表)の結果を踏まえ、早急に見直すこと。
○6 どんなに重い障害を持っていても障害者が安心して暮らせる支給量を保障
   し、個々の支援の必要性に即した決定がなされるように、支給決定の過程
   に障害者が参画する協議の場を設置するなど、その意向が十分に反映され
   る制度とすること。そのために国庫負担基準制度、障害程度区分制度の廃
   止を含めた抜本的な検討を行うこと。

 国(厚生労働省)は、「障がい者制度改革推進本部」の下に設置された「障が
い者制度改革推進会議」や「部会」における新たな福祉制度の構築に当たっては、
現行の介護保険制度との統合を前提とはせず、上記に示した本訴訟における原告
らから指摘された障害者自立支援法の問題点を踏まえ、次の事項について、障害
者の現在の生活実態やニーズなどに十分配慮した上で、権利条約の批准に向けた
障害者の権利に関する議論や、「障害者自立支援法の施行前後における利用者の
負担等に係る実態調査結果について」(平成21年11月26日公表)の結果も考慮し、
しっかり検討を行い、対応していく。
○1 利用者負担のあり方
○2 支給決定のあり方
○3 報酬支払い方式
○4  制度の谷間のない「障害」の範囲
○5  権利条約批准の実現のための国内法整備と同権利条約批准
○6  障害関係予算の国際水準に見合う額への増額

四 利用者負担における当面の措置
 国(厚生労働省)は、障害者自立支援法廃止までの間、応益負担(定率負担)
制度の速やかな廃止のため、平成22年4月から、低所得(市町村民税非課税)の
障害者及び障害児の保護者につき、障害者自立支援法及び児童福祉法による障害
福祉サービス及び補装具に係る利用者負担を無料とする措置を講じる。
 なお、自立支援医療に係る利用者負担の措置については、当面の重要な課題と
する。

五 履行確保のための検証
 以上の基本合意につき、今後の適正な履行状況等の確認のため、原告団・弁護
団と国(厚生労働省)との定期協議を実施する。
                                 以 上