合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ報告 学校における観点2012-02-13

4.学校における「合理的配慮」の観点
○1 「合理的配慮」は、個々の障害のある幼児児童生徒の状態等に応じて提供
されるものであり、多様かつ個別性が高いものであることから、本ワーキンググ
ループにおいては、その観点について以下のとおり整理した。

○2 障害のある幼児児童生徒については、障害の状態が多様なだけでなく、障
害を併せ有する場合や、障害の状態や病状が変化する場合もあることから、時間
的な経緯により必要な支援が異なることに留意する必要がある。また、障害の状
態等に応じた「合理的配慮」を決定する上で、ICF(国際生活機能分類)を活用
することが考えられる。(参考資料6:ICFについて)

○3 各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」
又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。その際は、「合理的
配慮」を決定する際において、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、何
を優先して提供するかなどについて関係者間で共通理解を図る必要がある。

○4 障害種別に応じた「合理的配慮」は、全ての場合を網羅することはできな
いため、その代表的なものと考えられる例を以下に示している。ここに示されて
いるもの以外は「合理的配慮」として提供する必要がないということではなく、
一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されることが望ましい。ま
た、障害種別に応じた「合理的配慮」を例示しているが、複数の種類の障害を併
せ有する場合には、各障害種別に例示している「合理的配慮」を柔軟に組み合わ
せることが適当である。

○5 「合理的配慮」は、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定
されるものであり、全てが同じように決定されるものではない。設置者及び学校
が決定するに当たっては、本人及び保護者と、個別の教育支援計画を作成する中
で、「合理的配慮」の観点を踏まえ、「合理的配慮」について可能な限り合意形
成を図った上で決定し、提供されることが望ましい。例えば、設置者及び学校が、
学校における保護者の待機を安易に求めるような対応をすることは適切ではない。

<「合理的配慮」の観点(1)教育内容・方法>
<(1)-1 教育内容>
(1)-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮(別表1)
 障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するため、また、個
性や障害の特性に応じて、その持てる力を高めるため、必要な知識、技能、態度、
習慣を身に付けられるよう支援する。

(1)-1-2 学習内容の変更・調整(別表2)
 認知の特性、身体の動き等に応じて、具体の学習活動の内容や量、評価の方法
等を工夫する。障害の状態、発達の段階、年齢等を考慮しつつ、卒業後の生活や
進路を見据えた学習内容を考慮するとともに、学習過程において人間関係を広げ
ることや自己選択・自己判断の機会を増やすこと等に留意する。

<(1)-2 教育方法>
(1)-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮(別表3)
 障害の状態等に応じた情報保障やコミュニケーションの方法について配慮する
とともに、教材(ICT及び補助用具を含む)の活用について配慮する。

(1)-2-2 学習機会や体験の確保(別表4)
 治療のため学習空白が生じることや障害の状態により経験が不足することに対
し、学習機会や体験を確保する方法を工夫する。また、感覚と体験を総合的に活
用できる学習活動を通じて概念形成を促進する。さらに、入学試験やその他の試
験において配慮する。

(1)-2-3 心理面・健康面の配慮(別表5)
 適切な人間関係を構築するため、集団におけるコミュニケーションについて配
慮するとともに、他の幼児児童生徒が障害について理解を深めることができるよ
うにする。学習に見通しが持てるようにしたり、周囲の状況を判断できるように
したりして心理的不安を取り除く。また、健康状態により、学習内容・方法を柔
軟に調整し、障害に起因した不安感や孤独感を解消し自己肯定感を高める。
 学習の予定や進め方を分かりやすい方法で知らせておくことや、それを確認で
きるようにすることで、心理的不安を取り除くとともに、周囲の状況を判断でき
るようにする。

<「合理的配慮」の観点(2) 支援体制>
(2)-1 専門性のある指導体制の整備(別表6)
 校長がリーダーシップを発揮し、学校全体として専門性のある指導体制を確保
することに努める。そのため、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成する
などにより、学校内外の関係者の共通理解を図るとともに、役割分担を行う。ま
た、学習の場面等を考慮した校内の役割分担を行う。
 必要に応じ、適切な人的配置(支援員等)を行うほか、学校内外の教育資源
(通級による指導や特別支援学級、特別支援学校のセンター的機能、専門家チー
ム等による助言等)の活用や医療、福祉、労働等関係機関との連携を行う。

(2)-2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮
(別表7)
 障害のある幼児児童生徒に関して、障害によって日常生活や学習場面において
様々な困難が生じることについて周囲の幼児児童生徒の理解啓発を図る。共生の
理念を涵養するため、障害のある幼児児童生徒の集団参加の方法について、障害
のない幼児児童生徒が考え実践する機会や障害のある幼児児童生徒自身が障害に
ついて周囲の人に理解を広げる方法等を考え実践する機会を設定する。また、保
護者、地域に対しても理解啓発を図るための活動を行う。

(2)-3 災害時等の支援体制の整備(別表8)
 災害時等の対応について、障害のある幼児児童生徒の状態を考慮し、危機の予
測、避難方法、災害時の人的体制等、災害時体制マニュアルを整備する。また、
災害時等における対応が十分にできるよう、避難訓練等の取組に当たっては、一
人一人の障害の状態等を考慮する。

<「合理的配慮」の観点(3) 施設・設備>
(3)-1 校内環境のバリアフリー化(別表9)
 障害のある幼児児童生徒が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるよう、
障害の状態等に応じた環境にするために、スロープや手すり、便所、出入口、エ
レベーター等について施設の整備を計画する際に配慮する。また、既存の学校施
設のバリアフリー化についても、障害のある幼児児童生徒の在籍状況等を踏まえ、
学校施設に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進で
きるよう配慮する。

(3)-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮
(別表10)
 幼児児童生徒一人一人が障害の状態等に応じ、十分に学習に取り組めるよう、
必要に応じて様々な教育機器等の導入や施設の整備を行う。また、一人一人の障
害の状態、障害の特性、認知特性、体の動き、感覚等に応じて、その持てる能力
を最大限活用して自主的、自発的に学習や生活ができるよう、各教室等の施設・
設備について、分かりやすさ等に配慮を行うとともに、日照、室温、音の影響等
に配慮する。さらに、心のケアを必要とする幼児児童生徒への配慮を行う。

(3)-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮(別表11)
 災害時等への対応のため、障害の状態等に応じた施設・設備を整備する。

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