「障がい者制度改革推進会議」 第7回 資料2(抜粋) 2010/04/122010-04-14

4月12日開催の「障がい者制度改革推進会議」第7回 (H22.4.12) 資料2

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_7/pdf/s2.pdf

○著作権について

情報アクセスと著作権についてどのように考えるか、ご意見を賜りたい。

【大久保委員】
 本年施行の改正著作権法により、著作物を障害のある人が利用しやすい形態
で作成する行為は範囲が大幅に拡大され、対象も発達障害が含まれることにな
った。この動きは、大いに歓迎したい。知的障害のある人にとっても、著作物
の音声化や拡大文字、デジタルデータ化は、情報伝達の幅を広げる観点から、
非常に有用だと考える。
 一方、知的障害のある人には、言い回しや文体の改編を伴う書き換えが必要
な場合も多く、そこには著作権の壁が大きく立ちはだかっている。たとえば著
作権で保護されている文学作品については、知的障害がある人にも「読んでみ
たい」と考える人は少なくないが、わかりやすく言い換えることは認められな
いものがほとんどのため、そうした文化に接する機会を得られていない。
 一方、新聞など時事情報については、読みやすい文章での提供を一刻も早く
実現する必要がある。著作権法の改正によるか新聞社や通信社など個々の取り
組みによるかは別として、日常的な情報の提供は、知的障害のある人の権利と
生活の自由を保障する上で欠かせないと考える。

【大谷委員】
 障がいがあることから,著作物をそのままの形式では利用できない多くの
人々が存在している。しかも,障がいは多種多様であることから,著作物を
利用することができない理由も多様にわたる。すなわち,視覚障害者,聴覚
障害者だけでなく, ALS(筋萎縮性側索硬化症)やCP(脳性麻痺)を有
する人々には,形式変換(電子化)が必要であり,また,高齢や疾病等でい
わゆる「寝たきり」の状態になった人々に対する情報アクセスも検討しなけ
ればならない。
 著作権法は,原則として複製権等各種の権利を定める一方で,例外的に障
害の種別に応じて著作権を制限するという形式で障害者の権利との調和を図
っている。しかしながら,このような限定列挙的な権利制限規定では多種多
様な障がいに対応できない。それゆえ,著作権法において,権利制限の一般
規定(フェアユース規定)を置くことを検討すべきである。

【大濱委員】
 著作権に特例を設けて、情報アクセスに支障がないように法で解決すべき。
障害者向け情報には著作権者への了解や利用料を免除する法に。

【尾上委員】
 基本原則として、点字や音声情報、テキストデータ等、その人に応じた形
態・方法での情報提供がもっと容易になされるようにする必要がある。著作
権保護はもちろん重要ではあるが、そのために障害がある者が情報にアクセ
スが制限されてしまうのは大きな問題である。障害者の情報アクセス保障の
観点から、著作権との関係や、著者等からの提供許諾の方法などを検討すべ
きである。
 例えば、この間の法律改正によって、活字出版物の点字化は著者の了解を
得なくてもできるようになったが、テープなど音声情報にするのは、公共図
書館では認められているが、民間団体の場合は著者の許諾が必要になる。民
間団体での音訳もできるような見直し等が課題となっている。
 また、一部の出版社・出版物では視覚障害者や上肢障害(紙のページをめ
くるのが難しい)等に対して、購入した読者に対してテキストデータでの提
供を行っているが、きわめて例外的である。視覚障害者の中にも点字を主に
使う人と音声読み上げなどを使う人と多様である。テキストデータは音声読
み上げに適しており、その提供をしやすいものにしたい。

【勝又委員】
 著作権のうち「著作人格権」は侵されるべきではないと考える。しかし、
情報アクセスの保障は著作権によって制限されるべきものではないと思う。

【門川委員・福島オブザーバー】
 情報アクセスはそもそも著作権を侵害するものではないということを明確
にすべきであると考える。なぜなら、著作権が有効になるためには、著作物
へのアクセスが現に可能であることが必要であるからである。すなわち、通
常の方法では著作物へのアクセスが不可能あるいは困難な場合において、元
の著作物をアクセス可能な形態へと変更することは、著作権の侵害にはあた
らず、むしろ著作物へのアクセスを保障することを通じて著作権の保護の範
囲を広げることとしてとらえるべきであるといえる。
 このようにとらえた場合、障害者がアクセス可能ないかなる形態に著作物
を変更することも、原則的に自由とすべきである。また、なんらかの理由で
一定の制約をもうける必要がある場合でも、どのような形態に変更したのか
ということを含めて著作権管理機関に届け出ることと引き換えに、当該変更
行為そのものについては著作権侵害にはあたらないと明示するような法制度
の整備が必要である。なお、その際、アクセス可能な形態へと変更するため
に要する費用をどのように分担すべきかということについては、明確な結論
を出す段階にはなく、当事者による議論が必要であると考える。

【川崎委員】
 特別の指針を設けるべきである。

【清原委員】
 たとえば、文学作品等の点訳に関して、著作者の同意が得られないため、
点訳ができないといった現実の問題がある。このことは一方で表現の自由の
視点から著作権者を尊重するべきであるという課題もあることから、障がい
者の情報アクセス権の尊重を図りつつも、一つの立場からの問題提起になら
ないように、社会の合意を図るべく慎重な配慮がなされるべき課題であると
考える。

【佐藤委員】
 権利条約第30条第3項は、著作権法が文化的作品へのアクセスを妨げる
ことがないよう、すべての適切な措置を執ることを求めており、一定の権利
(著作権)制限が必要であると考えるが、関係者の十分な協議と世論の喚起
が必要である。
 2006年12月の著作権法改正で第三十七条視覚障害者等のための複製等)
の3項は次のようになった。
 「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第
百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者
で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識
される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提
供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物にお
いて複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提
示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」と
いう。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利
用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該
視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するため
に必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行う
ことができる。<後略>」
 政令では公共図書館や学校図書館、障害者施設や高齢者施設などが規定さ
れている。この改正は、これらの施設が、本などの印刷物を著作権者の許可
なく音声や電子情報に複製し、視覚障害者やディスレクシア(難読・不読症),
知的障害者等文字の読み取りに困難がある人にネット送信できることとした
もので、画期的なものである。
 ただし課題も多い。
 視覚障害者等がインターネットを使って必要な本などをダウンロードして
困難なく活用できるかどうか。全国に約3100ある公共図書館で障害者サ
ービスを展開しているのは600程度に過ぎないといわれており、公共図書
館の端末が使いやすいかどうか。こうした図書館や施設が複製した本などを
共有して活用するネットワークが形成されるかどうか。複製を作る費用が十
分かどうか、等々である。
 3月24日、参議院議員会館に於いて読書バリアフリー法を求める集会が、
活字文化議員連盟、文字・活字文化推進機構、2010 年国民読書年に障害者・
高齢者の読書バリアフリーを実現する会の主催により開催された。「情報バリ
アフリー法」と「読書バリアフリー法」の関係の議論も必要であろうが、で
きるところから出発し、やがて必要に応じて統合すればよいと思われる。

【新谷委員】
 情報アクセスで著作権が問題になるのは、著作物の著作権者あるいは放送
事業者のように一時利用者がアクセシブルな形で提供していない時に、それ
を利用しようとする時著作権の許諾が必要となる点です。
 著作権者、一時利用者にアクセシブルな提供を義務つけることがまず必要
で、そうすれば著作権が問題になる利用の必要性は下がります。
 また、現行著作権の一定の制限がされているが、範囲を拡大して、フェア
ユースの考え方を認めるべきです。
 なお、障害者放送協議会著作権委員会から以下の意見をいただいています。
 障害者の権利条約第30条では、「締約国は、国際法に従い、知的財産権を
保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は
差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。」
としている。
 今回の著作権法改正により、障害者等の著作物利用や情報保障の確保が一
歩前進したことは確かではあるが、はたして条約に書かれているような「す
べての適当な措置」が取られたのかというとはなはだ疑問である。
 このことは、障害者放送協議会著作権委員会でも指摘をしてきたが、今回
の著作権法改正では一部不徹底な部分が残されており、いわば「積み残し」
とも言うべき課題がある。さらなる抜本的な著作権法改正が必要と考えるが、
障害者の権利条約の批准が喫緊の課題であることを考え合わせると、現在検
討中の「権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)」の導入により解決
していくことが現実的と考える。

【関口委員】
 著作権については配慮されるべきであるが、情報アクセスのバリアフリー
化を徹底する必要がある。
著作権者は、著作を出した時点で、情報保障を法律によって承諾している
と考えるべきである。

【堂本委員】
 情報通信機器の飛躍的進歩により、情報アクセスが極めて容易になった一
方で、知的所有権の侵害の問題が生じ、著作権保護が叫ばれていることは事
実である。
 しかし、著作権保護が、障害のある人の情報アクセス権を妨げることのな
いよう、必要な措置をとることが大切である。
このような中、本年1月からは、著作権法の改正が行われ、1著作物の複
製等を行える主体の範囲の拡大、2複製等、行うことができる範囲の拡大な
ど、障害のある人の情報利用の機会の確保のための措置がとられたことは、
大きな前進であったと考える。
 しかしながら、障害のある人が健常者と同様に情報アクセスできるように
するためには、さらに解決すべき課題があるものと考えられ、今後、条約の
趣旨に沿った一層の検討が必要と考える。

【中西委員】
 これまでの心ある著作者、編集者はワードによる著作の情報バリアフリー
化をおこなってきたが、一般の著作物においてもこれを障害者の利用に限っ
ては著作物に義務づける制度を新情報バリアフリー法の中に設ける。
 現在は著作物を購入した障害者にデータ化された著作物が送られるにシス
テムになっている。しかし韓星民の研究によると、このようなテキストデー
タは、著作権者・出版社の両方が拒否しているがために提供が困難であるこ
とが多い。しかし実際は著作権者は同意しているが出版社が拒否している場
合もあり、データ提供を認めると、それは出版社の労働を増やすことになり、
出版業界にとってはその労働を自分たちが担わなければならないのは不当で
あるとの理由からであるという。

【長瀬委員】
 「締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法令が文化的作品への
障害のある人のアクセスを妨げる不合理な又は差別的な障壁とならないこと
を確保するためのすべての適切な措置をとる」と規定している障害者の権利
条約第30 条第1 項(3)という観点から、引き続き、情報アクセスの確保に
向けた著作権法の見直しが必要である。
 障害分野の本でさえ、出版社が著作権を理由に視覚障害者等へのテキスト
データ提供に消極的なことがある。どのような質と内容で著作権保護をする
かは検討しなければならないことだが、著作権が理由で読者が著作物にアク
セスできないのでは本末転倒である。個別には、原稿等依頼の時点で、著作
権および情報アクセシビリティの見解を示して提供承諾を得るなどの方法が
あるが、基本的に法律が情報アクセシビリティを進めるうえでボトルネック
になっていることについては、法律のほうを見直さなければならない。

【久松委員】
 基本的なところは日本版フェアユース制度(新たな技術やサービスの出現
に柔軟に対応できる法制度とするため、権利者の利益を不当に害しない公正
な利用であれば許諾なしに著作物を利用できるようにする規定)の導入の中
で解決していく必要がある。改正著作権法における課題は、字幕・手話・手
話通訳の挿入のために必要とする映像作品のマスターを容易に入手でき、補
償金を必要としないこと、CS障害者放送統一機構による「目で聴くテレビ」
でいつでも手話や字幕が付加されたものを放送できること、及びインターネ
ットによる提供である。
 いま流通している情報に、字幕、手話を付与する場合、著作権および関連
する周辺の権利(知的財産権等)の所在がしばしば問題になる。また、今後
は、流通しているコンテンツにDRM(デジタル著作権管理)によるアクセ
スコントロールが実施されるケースが増加することが予想される。聴覚障害
者情報提供施設(視覚障害者情報提供施設含む)、障害者向け放送事業体、障
害者支援NPO等の公益法人などにおいて、字幕・手話を付与するためにこ
れらの情報を複製する場合にDRMによるアクセスコントロールが支障とな
る。
 これらの障害者用情報提供施設、放送事業体、公益法人で字幕・手話を付
与する場合、コンテンツ提供側はアクセスコントロールのない媒体を無償で
これらの団体に提供する仕組みが保障される必要がある。

【松井委員】
 情報アクセスの保障するため、著作権にかかわらず該当する障害者が利用
できるようにすることは、適切である。

【森委員】
 障害者権利条約第2 条及び21 条の規定からも、差別なく、一般の人と同様
に情報保障がされるべきである。また、著作権法の改善は不十分であり、障
害に基づいて情報アクセスに関する不便性が生じないように、可能な限りの
支援を行うことは当然のことであると考えられる。

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