障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)(素案)2010-05-24

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_12/pdf/s1.pdf

4.個別分野における基本的方向と今後の進め方

1)労働及び雇用

(推進会議の問題認識)
障害者が地域において自立した生活を営み、より一層社会参加ができる
ようにするためには、他と等しく障害者が職業等を選択でき、働く機会が
確保されるとともに、多様で利用可能な労働条件・環境が整備されること
が不可欠である。

【障害者の雇用の促進】
現状において障害者の雇用状況は、障害者雇用促進法に基づく法定雇用
率を達成している企業が全体の半数に満たないなど、厳しい状況にあり、
また、障害の種別によって賃金や雇用義務の有無等に格差がある等、障害
者の雇用の促進に向けた抜本的な改善策が求められている。
このような観点から、以下の事項を実施すべきである。
・ 現行制度における障害者の範囲については、就労の困難さに視点をお
く社会モデルの観点から見直す方向で検討する。
・ 法定雇用率の水準、ダブルカウント制、障害者雇用納付金制度、特例
子会社制度等については、雇用の促進と平等な取扱いという視点からそ
の在り方を検証した上で、積極的差別是正措置としてより実効性のある
具体的方策を検討する。
・ 精神障害者は雇用義務の対象となっていない等の障害種別による雇用
義務の格差を是正し、すべての障害者がその種別にかかわらず同程度に
雇用機会や労働条件が確保されるよう、必要な措置を講ずる。
【福祉的就労に従事する障害者に対する支援】
福祉的就労に就いている障害者の月額工賃は平均して約一万二千円程
度であり、地域で自立した生活を送るには困難な低水準にあるほか、労働
法規で定められているような措置の対象とならない場合がある等の問題
がある。このような状況を改善するため、以下の事項を実施すべきである。
・ 福祉的就労の在り方を考えるにあたって、労働法規の適用について、
今後総合福祉部会において引き続き検討する。
・ 障害者も障害のない人も対等な立場で一緒に働くことができる形態の
職場を設置している者に対し、その運営に要する経費の一部を助成する
いわゆる「社会的事業所」について、地方公共団体における先進的な取
組を参考にしつつ、その一層の普及がされるよう必要な措置を講ずる。
・ 国等の物品、役務等の調達に関し、障害者就労施設等の受注の機会の
増大を図るため、国等が障害者就労施設等から物品等を優先的に調達す
ることも含め、具体的方策を講ずる。

【職場における合理的配慮や必要な支援の整備】
障害者が自らの能力を最大限に発揮し、障害のない者と同様に安全かつ
健康的な労働環境を確保するためには、障害を理由とする差別が禁止され
、職場において必要な合理的配慮や支援がなされる必要がある。
このような観点から、以下の事項を実施すべきである。
・ 厚生労働省において、現在検討中である障害者雇用促進法の見直しの
議論の中で、障害を理由とする差別の禁止、事業主への合理的配慮の義
務付け、合理的配慮に関する労使間の紛争解決手続の整備等の職場にお
ける合理的配慮を確保するための具体的方策について引き続き検討を
行う。
・ 障害者に対する通勤支援、身体介助、職場介助、ジョブコーチ等
の職場における支援の在り方については、平成23年末を目途に得ら
れる総合福祉部会等の検討結果を踏まえ、法制化を含めた必要な措
置を講ずる。
【厚生労働省関係】

(政府に求める今後の取組に関する意見)
( P)

2)教育

(推進会議の問題認識)
障害者権利条約においては、あらゆる教育段階において、障害者に
とってインクルーシブな教育制度を確保することが必要とされてい
る。
障害の有無にかかわらず、国民が相互に人格と個性を尊重し支え合
う共生社会の構築に向け、学校教育の果たす役割は大きい。人間の多
様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な最大限度まで発達
させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者と障害の
ない者が差別を受けることなく、共に生活し、共に学ぶ教育(インク
ルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重す
る土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない者にとっても生きる
力を育むことにつながる。

【教育の機会均等】
現行の教育基本法の第4条第1項においては、教育上差別されない
ものの例示として、「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又
は門地」が明記されているが、「障害」が明記されていない。
したがって、教育基本法の第4条第1項について、「人種、信条、
性別、社会的身分、経済的地位又は門地」と同様に、「障害」によっ
て教育上差別されないことを明文化するため、平成23年常会に提出
することを予定している障害者基本法の改正に関する法案の附則にお
いて改正することを検討すべきである。

【地域における就学と合理的配慮の確保】
我が国における障害者に対する公教育は、特別支援教育によること
になっており、就学先の決定に当たっては、制度上、本人・保護者の
同意を必ずしも前提とせず、教育委員会が行う仕組みであり、本人・
保護者にとって就学先の選択権が確保されていない。また、特別支援
学校は、本人が生活する地域にないことも多く、そのことが幼少の頃
から地域社会における生活から隔離される要因ともなっている。
障害者が地域の学校に就学し、多大な負担(保護者の付き添いが求
められる等)を強いられることなく、その学校において適切な教育を
受けることを保障するためには、教育内容・方法の工夫、子どもに対
する評価の見直し、教員の加配、介助者等の配置、施設・設備の整備
等の必要な合理的配慮と支援が不可欠である。
このような観点から、以下の事項を実施すべきである。
・ 障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校の
通常の学級に就学し、かつ学籍を置くことを原則とし、本人・保護
者が望む場合には、特別支援学級や特別支援学校等への就学ができ
る制度へと改める。
・ 就学先の決定や就学先における必要な合理的配慮及び支援の内容
の決定に当たっては、本人・保護者、学校、学校設置者の三者の合
意を義務付ける仕組みとする。また、合意が得られない場合には、
第三者機関による調整を求めることができる仕組みを設ける。
【学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障】
障害者の人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力を可
能な限り発達させるためには、教育が本人にとって最も適当な言語並
びに意思疎通の形態及び手段によって行うことが確保されなければな
らない。
このような観点から、以下の事項を実施すべきである。
・ 手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性
に応じた教育を実現するため、手話・点字等に通じた教員の確保や
教員の専門性向上に必要な措置を講ずる。
・ 教育現場において、あらゆる障害の特性に応じたコミュニケーシ
ョン手段を確保するため、教育方法の工夫・改善等必要な措置を講
ずる。

【今後の推進会議での検討の進め方】
・ 障害のある子どもの教育における改革の方向性については、引き
続き推進会議において、関係者のヒアリングを行いつつ検討を進め、
平成22年内を目途に結論を得る。
【文部科学省関係】
(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)

5)障害児支援

(推進会議の問題認識)
障害児は、一人の子どもとして尊重され、すべての人権、基本的自
由を享受しているという観点から、障害児の最善の利益を考慮した施
策が講じられる必要がある。

【障害児やその保護者に対する相談支援】
相談支援については、障害児の出生直後又は「気になる」・「育て
にくい」段階から、医療及び福祉関係者からの適切な情報提供、心理
的サポートが不足しており、障害児を含め、その家族に対する十分な
支援が提供されていない。
このような現状を改善するため、以下の事項を実施すべきである。
・ 子どもの障害について、地域の身近なところで第一次的に相談対
応を行い、必要に応じて適切な専門機関へとつなぐ仕組みを構築する。
・ 障害児及びその保護者に対する相談支援が、障害の種別・特性に
応じた言語環境により、かつ当事者にとって利用しやすい形で提供
されるよう必要な措置を講ずる。
・ 障害の専門機関の者が地域に出向き、保健センターや地域子育て
拠点における保健師、保育士等と連携した効果的な相談支援を提供
できるよう、必要な措置を講ずる。

【児童福祉における障害児支援の位置付け】
障害児支援は、早期に必要な専門的支援が求められる反面、その支
援が障害児に特化した形でのサービス提供になりがちであるため、障
害児を家族や地域社会から分離することにつながっている。また、障
害の軽減のみが目標とされがちであり、そのことが本人の障害に対す
る否定的な認識を助長してしまうという問題もある。
このような現状を改善するため、障害児支援が家族や一般児童等と
分離することなく地域において提供され、かつ複雑な法体系の下では
なく一本化された児童福祉施策の中で講じられるようにすべきである。
【厚生労働省関係】
(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)

8)情報アクセス・コミュニケーション保障

(推進会議の問題認識)
障害者も、障害のない人と同様に、表現の自由や知る権利の保障の
下で、情報サービスを受ける権利を有しており、障害者が円滑に情報
を利用し、その意思を表示できるようにすることが不可欠である。
【情報バリアフリーの取組】
我が国においては、情報や考えを伝えるためのサービス(手話通訳
者等)や情報や考えを得るためのサービス(要約筆記者等)を利用で
きない、障害に配慮した情報提供(点字化、字幕を付ける、ルビを振
る等)を受けられない等、障害者は、生活の様々な場面で情報へのア
クセスやコミュニケーションにおける困難に直面している。
このような状況を改善するため、以下の事項を実施すべきである。
・ 手話・字幕付放送、電話リレーサービス等、あらゆる障害の種別・
特性に配慮した方法による情報提供が、関係事業者等により日常生
活のあらゆる場面において行われるよう必要な支援を行うととも
に、時限付きの数値目標を伴った情報バリアフリー化のための指針
の策定を始め、必要な環境整備を図る。
・ 手話・指点字通訳者や要約筆記者等、障害者の情報アクセスやコ
ミュニケーションを支援する人材の養成の一層の拡充を図る。
【総務省・厚生労働省関係】

【災害時における緊急情報等の提供】
災害時における緊急情報等は、生命に関わる極めて重要性の高いも
のであるが、現状では、被害情報や避難情報等の提供が障害者に配慮
された形で行われているとは言い難く、市町村によってもその対応に
はばらつきがみられる。
このような状況を改善するため、以下の事項を実施すべきである。
・ 放送事業者等が災害に関する緊急情報等を提供するに当たっては、
手話や字幕等の障害者が必要な情報を迅速かつ的確に入手できる方
法が講じられるよう、必要な措置を講ずる。
・ 災害等の緊急事態における国・地方公共団体による避難勧告等に
当たっては、あらゆる障害の種別・特性に対応した伝達手段が確保
されるよう、具体的方策を講ずる。
【総務省・内閣府関係】
(政府に求める今後の取組に関する意見)
(P)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック