国立国会図書館 公共図書館における障害者サービスに関する調査研究2011-10-20

http://current.ndl.go.jp/print/book/export/html/17976
http://current.ndl.go.jp/files/research/2010/2010research_report.pdf

  要 約

 [調査研究内容の構成]

本調査研究は、A.文献に基づく調査、B.全国の公共図書館における障害者サービ
スに関する質問紙調査、C.先進的な活動を行っている公共図書館事例のヒアリン
グ調査、の3つの方法で行われた。
文献に基づく調査については、それぞれの研究会委員の専門性から、国内動向と
海外動向で分担し、第1 章で日本の公共図書館における障害者サービスの動向を、
第2章でIFLA(国際図書館連盟)から見る世界の図書館における障害者サービス
の動向の報告を行った。続いて第3章で公共図書館における障害者サービスに関
する質問紙調査の結果分析を行い、数字の上から見る障害者サービスの現況をま
とめた。そして、ヒアリング調査の結果について、第4章の公共図書館における
障害者サービスの事例的検討、で考察を行った。
資料編では、「1 質問紙調査の集計結果概要」で第3章よりも詳細な数値を掲載
し、「2 ヒアリング調査の要約」で、第4章のもととなったヒアリング要約を収
めている。

 [各章の内容]

第1章では、1995年前後に現在の日本の公共図書館における障害者サービスの枠
組みがつくられたという認識から、1995年から2010年までを「普及期」として位
置づけ、全国調査の傾向、施設・設備の整備、マニュアルの継続的発行と蓄積、
情報通信技術(ICT)の進展とメディアの観点から検討し、さらにサービスの多様
化について、病院患者、発達障害(ディスレクシア等)、高齢者等の対象者につ
いて、動向を紹介している。対象者の多様化は進んでいるが、今後ニーズが高ま
ると思われる高齢者へのサービスは不十分である点などに言及し、最後に著作権
法の改正について述べている。

第2章では、海外動向のうち、IFLAの障害者サービス関連専門分科会の動きと、
デジタル録音図書の国際標準規格DAISYの発展・普及に焦点をあて、IFLAによる
障害者サービスの拡大とそのための具体的な取り組み、グローバル・アクセシブ
ル・ライブラリー構築について述べたのち、DAISYを活用した障害者サービスに
ついて、日本の普及状況をまとめ、電子書籍フォーマットEPUBとDAISY 可能性に
ついて言及している。章末では図書館が利用者の側に立って、アクセシブルな電
子書籍の推進に積極的な役割を果たすべきと主張している。

第3章では、質問紙調査の結果から、障害者サービスの施設・設備、実施状況、
利用者等の項目を抜き出したのち、対面朗読、個人貸出の実施状況、図書館間の
相互貸借の実施状況について分析し、また、郵送や宅配での経費負担、障害者向
け資料の所蔵・製作の状況、病院・施設・学校へのサービスについて概略をまと
めている。加えて、自由記述による回答で予算・人員・利用者対応で苦慮してい
る館が多く見られたことや、ニーズ把握の必要性と研修の充実について考察して
いる。

第4章では、9館のヒアリング調査から共通して浮かび上がる障害者サービスの現
状と課題について、対象者とサービス内容、サービスの提供体制、今後の計画・
展望について分析を行った。これらの対象館はいずれも障害者サービスでは先進
的な取り組みを行っている館であり、日本の公共図書館における障害者サービス
の到達状況を示すものとなっている。それと同時に、各館のヒアリングから明ら
かになった課題として、対象者のニーズ調査の必要性、図書館協力者の高齢化、
予算の減額などがあげられた。最後に、ようやく実現した著作権法改正を生かす
ためにも、国レベルでの障害者サービス振興策を検討すべきではないかと提言を
行っている。

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